日本共産党

2004年6月11日(金)「しんぶん赤旗」

NATO軍派兵にノー

米に仏・独・スペインが異議

“イラク関与に適さない”


 【ロンドン=西尾正哉】米国などが北大西洋条約機構(NATO)軍を主権移譲後のイラクに派遣するよう求めていることに対し、フランス、スペインなど欧州の主要国から反対の声が上がっています。

 ブッシュ米大統領は九日、主要国首脳会議(サミット)でブレア英首相と会談し、NATOが主権移譲後のイラクで大きな役割を担うよう求めました。

 これに対し、スペインのモラティノス外相は同日、「イラクの安定化プロセスを速める最良の方法は、できるだけ早く多国籍軍が撤退することだ」「私はNATOがイラクに行くことを望まないし、誤りだと思う」と述べ、NATO軍のイラク派遣を「誤りだ」と指摘。サミット出席中のシラク仏大統領も「NATOの目的はイラクに介入することではないと確信する」と即座に異議を表明しました。

動揺に歯止め

 米国によるNATO軍派兵の主張は昨年からです。パウエル米国務長官は十二月のNATO外相会議で、「イラクの平和と安定のためにこれまで以上の支援がいかにできるかの検証を呼びかける」と述べました。

 しかし、米国の要求はドイツなどNATO加盟国の反対に遭いました。ドイツのシュレーダー首相は五月中旬、「NATOが(イラク関与に)適した組織かどうか疑わしい」と批判しています。

 現在NATO加盟二十六カ国のうち米英を含め十六カ国がイラクに派兵していますが、NATOとしての派兵ではありません。各国国内では派兵への反対世論が圧倒的。政府内でも動揺が表面化している国が増えています。ブッシュ政権が今回新たにNATO派兵を求めたのは、こうした動揺に歯止めをかけ、米国主導の軍事同盟としての体制を固め直し、イラク戦略に関与させる狙いがあるとみられます。

 ブッシュ政権はまた、欧州諸国の加わった国際部隊という装いで米軍主導の駐留色を薄めようと狙っています。さらに、欧州連合(EU)が独自の安保戦略を作成する中で、存在意義が薄れたNATOに域外派兵の実績を積ませることも意図しています。

域外では困難

 NATO軍がイラクに派兵された場合の役割は、二〇〇二年のプラハ首脳会議で創設が合意された即応部隊の派遣、イラク駐留のポーランド軍の役割の引き継ぎ、新設されるイラク軍の教育・訓練などがあげられます。

 しかし、NATO最初の域外派兵となったアフガニスタンでの国際治安支援部隊(ISAF)活動は、必要な輸送ヘリコプターや航空機などの装備、医療部隊がいまだに整わないなどの困難を抱えています。

 一方、NATOのデホープスヘッフェル事務総長は八日の講演で、「国連とイラク国民がNATOに援助を求めれば、目をつぶることはできない」と述べ、政権移譲後にイラク暫定政権から要請があれば応じる考えを示唆しました。同事務総長はイラク派兵はイスタンブール首脳会議での主要議題だと強調しました。


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