日本共産党

2004年6月2日(水)「しんぶん赤旗」

“多国籍軍参加は可能”

小泉議員批判 従来の憲法解釈覆す

法制局長官


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質問する小泉親司議員=1日、参院イラク有事特別委

 秋山收内閣法制局長官は一日の参院外交防衛委員会、同イラク有事特別委員会で、今月末に予定されるイラクへの統治権限移譲後に創設される「多国籍軍」への自衛隊の参加問題に関連し、「参加は憲法上問題ない」とする見解を初めて示しました。武力行使を目的・任務とする多国籍軍であっても、自衛隊が武力行使を伴わない業務にあたる限り、問題ないとするもので、日本共産党の小泉親司議員の質問に答えました。

 政府はこれまで、武力行使を目的・任務にした多国籍軍に自衛隊が参加することは憲法上許されないとしてきました。

 秋山長官は、「多国籍軍の目的・任務に武力行使を伴うものと伴わないものの両方があるものについて、わが国として武力の行使を伴わない業務にかぎって、他国の武力の行使と一体化しないことが確保される形で行うことが認められ、わが国の活動の期間を通じてそのことが確保されるという仕組みがある場合に、わが国としてこのような態様のもとに多国籍軍の活動に加わることは否定されるものではない」と答弁しました。

 また、川口順子外相は、多国籍軍創設の根拠となる新たな国連安保理決議案について「国連の関係者、関係国政府との間で随時協議を行っている」と述べた上で、「権限移譲後もイラク特措法の範囲内で『人道復興支援』を中心とした活動を維持するために最善の努力をしている」とし、多国籍軍への自衛隊参加に向けた協議を行っていることを明らかにしました。

 小泉議員は「新(安保理)決議に基づく多国籍軍は武力行使を目的・任務にするもので参加はできない」と批判しました。


解説

自衛隊の多国籍軍参加

派兵の枠組み広げ“占領軍の一員”に

 一日の秋山收内閣法制局長官答弁は、武力行使を目的・任務とする多国籍軍に自衛隊を参加させる道を開くものとして、極めて重大です。

 政府はこれまで、「『国連軍』に参加することは、当該『国連軍』の目的・任務が武力行使を伴うものであれば…自衛のための必要最小限度の範囲を超えるものであって、憲法上許されないと考えている」(一九九〇年十月、政府統一見解)としてきました。多国籍軍についても同様に、目的・任務が武力行使を伴うものへの自衛隊の参加は憲法に違反するとしてきました。

 一方で「参加」とは「司令官の指揮下に入り、その一員として行動すること」(同)と定義。「『参加』に至らない『協力』については…武力行使と一体とならないようなものは憲法上許される」(同)と言い抜け、国連平和維持活動(PKO)への自衛隊派兵を正当化してきました。

 答弁が重大なのは、武力行使を伴わない業務で他国の武力行使と一体化しないという口実で、多国籍軍への「協力」にとどまらず「参加」も可能だと初めて踏み込んだことです。これまでの政府見解も踏み越え、自衛隊海外派兵の枠組みをさらに広げるものです。

 多国籍軍への参加が可能になれば、自衛隊が多国籍軍の司令官の指揮下でその一員として行動することを認めることになります。

 イラク国民の多数はいまの連合軍を占領軍とみなしています。自衛隊がそれを引き継ぐ多国籍軍の一員として、その司令官の指揮下で活動すれば、たとえ武力行使に直接従事しなくても、イラク国民からは占領軍の一員と受け取られることは必至です。山崎伸治記者


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