日本共産党

2004年5月31日(月)「しんぶん赤旗」

イラク自衛隊で政府

多国籍軍「参加」を検討

名実ともに米の一翼 “違憲”の立場を大転換


 六月末に予定されるイラクの統治権限移譲後も自衛隊の派兵を継続するため、日本政府は新しい国連安保理決議にもとづく多国籍軍への参加を検討しています。これは、実態としてイラク占領軍の一翼を担ってきた自衛隊を名実ともにその一員にしようというものです。武力行使を目的・任務にした多国籍軍への自衛隊参加は憲法上許されないとしてきた政府自身の立場を転換する大問題です。

すでに「占領軍」

 政府はこれまで自衛隊の多国籍軍への参加について「司令官の指揮下に入りその一員となるという意味における参加については、当該部隊等が武力行使自体を目的、任務とするものであれば、憲法上許されない」(川口順子外相、三月三日衆院イラク特別委)としてきました。

 しかし、イラクに派兵された自衛隊は、同国を占領する「連合軍(=占領軍)の指揮下に入ることになる」(連合軍司令部の本紙への回答)とされ、その一員と位置付けられてきました。

 しかも、連合軍は安保理決議を待たず、暫定憲法である「イラク基本法」を根拠に五月十五日付で「多国籍軍」へと“衣替え”。同軍のホームページによると、自衛隊は引き続き、イラク南東部を管轄する「多国籍師団」の一員として「英軍の指揮下」に入っています。

 この多国籍軍の任務は、「連合国やイラクに敵対する勢力との戦争をたたかう」(連合軍機関紙「シミタール」二十一日号)ことで、武力行使そのものです。

 政府はこれまで「占領軍の一員として指揮命令系統に従ってやっているわけではない」(石破茂防衛庁長官、四月十二日、衆院イラク特別委員会)などと繰り返し、自衛隊が連合軍・多国籍軍の一員であることを否定してきました。

新たな治外法権

 その政府が新たな安保理決議にもとづく多国籍軍への参加を検討し始めたのは、統治権限移譲後もイラクにおける自衛隊の法的地位を保証する必要があるためです。

 イラクに派兵されている自衛隊はこれまで、占領当局である連合国暫定当局(CPA)によって、治外法権的な特権を保証されてきました。しかし、統治権限移譲後はCPAが解散するため、新たな手続きが必要になります。

 統治権限が移譲されるイラク暫定政府と地位協定を結ぶ選択肢はあるものの、見通しは立っていません。このため、より「安定した法的地位」が確保される安保理決議に基づく多国籍軍への参加を検討し始めたのです。

掃討作戦が任務

 政府は、武力行使を目的・任務とした多国籍軍への参加は憲法上許されないとする一方、実際の参加の可否については「任務、目的、編成など具体的な事実にもとづいて判断する」(津野修内閣法制局長官、二〇〇一年十二月四日参院外交防衛委)ともしてきました。

 しかし、イラク支配の継続を狙う米国の新たな安保理決議案は「統合された司令部の下」での多国籍軍に「テロを予防し、抑止することなど…あらゆる必要な措置をとる権限」を認めようとしています。

 つまり、米占領軍によるイラク中部ファルージャでの住民大量虐殺など抵抗勢力に対する掃討作戦を引き続き継続しようというもので、目的・任務の中心は武力行使です。

 「武力行使を目的とした多国籍軍には参加しない」(小泉純一郎首相、五月二十七日参院イラク有事特別委)という政府の言明からも、自衛隊の参加はできないはずです。

 政府は自衛隊が多国籍軍に参加しても、活動は「復興支援」に限る方針とされます。

 しかし、イラク国民は、世論調査で88%が米軍主導の連合軍を占領軍と見なす(英紙フィナンシャル・タイムズ二十日付)状況です。名実ともに多国籍軍の一員となれば、自衛隊へのイラク国民の反発・敵意がますます高まり、「殺し、殺される」という取り返しのつかない道にいっそう足を踏み入れることになります。(山崎伸治記者)


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