2004年5月29日(土)「しんぶん赤旗」
インド国民会議派が主導する与党連合「統一進歩連盟」が二十七日に発表した「共同最小限綱領」は、インド新政権の政策の基礎です。新政権に閣外協力するインド共産党(マルクス主義)中心の左翼諸党も協議に参加。左翼は二十七日の声明で、相違点を残しながらも綱領を「歓迎」「広く支持」し、「綱領の実行は総選挙の審判に沿うもの」と評価しました。
インド人民党の前政権下で、経済指標ではかなりの成長を実現したものの、やりたい放題の自由化、その結果としての貧困の拡大、そして何よりも排他的な宗派主義政治のゆがみをどう是正するのか、という課題に対する回答。それが左翼の意見も取り入れる形で作成されるというインド政治史上、画期的なものとなっています。
総選挙での政権党インド人民党の敗北は、多宗教・多文化国家のインドで宗派間の調和を壊すヒンズー至上主義と、借金苦の自殺が続く農村など貧困層をないがしろにする政治に対する厳しい審判でした。
共同綱領は六原則の第一に「社会的調和の維持、擁護、促進」をあげ、宗派暴力に対処する法の制定をうたいました。続いて「年7、8%の経済成長を確実」にして雇用を図り、農民や労働者の福祉向上を強調。農業対策では、かんがいへの投資を優先し、農村向け金融の早急な見直しにも言及。失業対策では、年間で最低百日間の雇用を公共事業で確保する法制定を明らかにしました。
焦点の一つだった民営化政策の是正では、左翼の主張が反映し、「黒字企業は民営化しない」と明記。改革の努力をしても赤字の企業は閉鎖ないし売却されますが、その際、労働者への補償を手当てするとしました。
マンモハン・シン首相は、人民党が設立し国有財産を安価で切り売りしたと批判された民営化省を廃止し、財務省の一部局に格下げすると発表しています。産業界からは民営化の「減速」との反応も出ました。
メディアの注目を集めたのは、人民党の抵抗が強い三分の一の国会議席を女性に割り当てる法の制定と、人民党政権が制定したテロ防止法の廃止です。後者は乱用による人権抑圧が問題になっていました。
パキスタンとの対話は、「体系的かつ持続的に追求される」とし、今年一月の印パ首脳会談で再開された対話の継続を表明しました。
しかし、その一方で、「確かな核兵器計画を維持する」として引き続き核抑止力に依存しながら、同じ核保有国のパキスタンと「検証可能な信頼醸成措置を発展させる」としました。そして「核軍縮と核兵器のない世界」へ「指導的役割」を果たすとも述べています。
外交分野ではまた、世界での「多極化を促進し」「単独行動主義のすべての企てに反対する」と明記し、名指しをさけつつ米国の覇権主義に批判的見地を示しました。
これに関し、左翼各党は当初案にあった「米国との戦略的関係」に反対し「パレスチナ人の大義」への関与を求めたほか、「非同盟の伝統に基づく独立した外交の追求」を提起しました。
この結果、「米国とのより緊密な戦略的、経済的関係を追求する」から「戦略的」の文言が外されました。「祖国を求めるパレスチナ人の大義」も明記され、イスラエルとの軍事的政治的関係を緊密にしてきた人民党政権との違いを明確にしています。外交政策の冒頭には、「過去の伝統に留意し独立した外交を追求する」と明記されており、今後の政策転換が注目されます。
(ニューデリー=小玉純一)