2004年5月27日(木)「しんぶん赤旗」
三菱ふそうトラック・バス(東京・港区)の大型車クラッチ系統部品の欠陥で、山口県の死亡事故が起きる前から、国土交通省に同種事故の情報が寄せられていたにもかかわらず、有効な対策がとられていなかったことが二十六日までに分かりました。
|
同省リコール対策室は、三菱のクレーム隠し発覚後、ユーザーからのクレーム情報収集を目的に「不具合情報一覧」を設置。「同種の事故があった場合メーカーを指導する」としていますが、行政指導は行われませんでした。
情報は、同省ホームページに、ユーザーからの訴えを掲載する「不具合情報一覧」として開示されています。
二〇〇二年十月十九日に山口県熊毛町(現周南市)で起きた死亡事故はクラッチ系統部品の欠陥で、エンジン動力を後輪に伝える「プロペラシャフト」が脱落、ブレーキホースを破損し制動がきかなくなったと考えられています。
ホームページで「三菱」「動力伝達」の項目を開くと、車の初度登録年月や申し出の受付日、事故内容が掲載されています。
そのなかに、山口県熊毛町の事故の情報もありました。二〇〇二年十月二十八日に受け付けたもので、「プロペラ・シャフト破断・脱落、ブレーキ配管切断」とあります。
その三カ月前に広島で、車両火災を引き起こす重大事故も発生していました。
〇二年七月二十五日に受け付けたもので、車種は九三年十月登録の「グレート」。「高速道路走行中、プロペラシャフト前側のスプライン部が脱落し、燃料タンク及び真裏を破損したため軽油に引火し車両火災となった」と記載されています。
同社がリコール対象としている大型トラック「スーパーグレート」のプロペラシャフトの欠陥情報もあります。
〇三年十二月五日の受け付け分で、九七年七月登録の「スーパーグレート」です。「時速九〇キロ程度で走行中、プロペラシャフトが脱落しこれに後続車二台が乗り上げ、タイヤホイール等が損傷する事故が発生」とありました。
山口県熊毛町の事故について、同省リコール対策室は、「捜査中の事案でもあり詳細は答えられない」としたうえで、「当時、三菱に調査報告を求めたが、県警が部品を押収しているため調査できないとして詳細な報告は上がってこなかった」としています。
残る二つの事故については、「プロペラシャフトをつなぐベアリングが焼き付いたり、外れたりした例で、『整備不良』が原因で欠陥とは判断しなかった。三菱に指導はしていない」と話しています。
クラッチ 自動車のエンジンは、一時停止したり変速したりする間も回転し続けています。そのエンジン動力を変速機につないだり、切ったりする装置。三菱製大型車で欠陥が見つかったクラッチハウジングは、クラッチを覆うアルミ製のカバー。プロペラシャフトで、エンジンと後輪の車軸間を結び動力を車輪に伝えます。