日本共産党

2004年5月27日(木)「しんぶん赤旗」

米国企業“戦争請け負います”

イラク 社員が殺人、収容所で拷問


 【ワシントン=浜谷浩司】世界に大きな衝撃を与えた米軍のイラク人収容者拷問に、米国の「民間企業」の存在がちらついています。イラクやアフガニスタンで、戦争を絶好の金もうけの機会にする軍事企業が暗躍し、「民営化」「下請け化」された戦争を担っています。これら企業の「社員」が戦場で人を殺害し、収容者を拷問しているのです。刑法にも戦争犯罪にも問われることなく…。


戦争「民営化」で株上昇

 「米国の軍事予算がどこへいくのかとお思いなら、まずは、タイタン社をご覧ください」

 求職関係のホームページに、こんなうたい文句を出しているのが、カリフォルニア州サンディエゴに本社をおくタイタン社。株価は昨年夏に急上昇し、以後も高値を維持。この一年でおよそ二・五倍という成長企業です。

 どんな会社なのか? 「米国防総省や情報機関、連邦政府各省の情報・通信問題を解決する一流企業」と、同社は説明します。

 そのタイタン社が最近、社員を一人解雇しました。エジプト生まれの米国人アデル・ナクラ氏。バグダッド近郊のアブグレイブ収容所に、第二〇五軍情報旅団付き通訳として働いていました。

 拷問・虐待事件について、米軍のタグバ少将が二月にとりまとめた内部報告書に、タイタン社の社員として三人の名があり、その一人がナクラ氏です。

 報告書の中でナクラ氏は、手錠をかけられた全裸の収容者らが、互いにレイプを強制されたようすを証言しています。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙二十四日付によれば、タイタン社は、同氏の解雇を確認したものの、理由を示しませんでした。同紙は、「解雇の状況は不明」としながらも、司法省が「ある民間人契約者」に対する刑事捜査を開始したことと、符合すると伝えています。タグバ報告によれば、タイタン社の社員はいずれも通訳です。

 一方、同報告は別企業CACI社の社員一人も挙げており、同社員を「民間契約取調官」としています。「取調官」のステファノビッツ社員は収容所で百五十回以上、尋問を担当。看守の憲兵隊員に対して、収容者を手荒く扱うよう指示しながら、軍の調査にはうその証言をしたと伝えられます。

軍事情報も企業が収集

 CACIインターナショナル社(本社・バージニア州アーリントン)の事業案内は、「情報問題の解決」を項目にあげ、「宇宙を舞台とする活動から人を情報源とする活動まで」とうたいます。

 「反テロ戦争におけるグローバルな情報を収集、分析、共有し、情報機関を支援する」という同社。株価は、タイタン社とよく似た動きを示しています。

 同社のホームページには、国防総省、中央情報局(CIA)、国家安全保障局(NSA)、国家偵察局(NRO)のマークが誇らしげに並んでいます。米国の情報機関がこぞって、同社に「支援されている」というわけです。

 同社は、拷問・虐待事件について九日付で声明を発表。同社のロンドン会長が、「CACI社員は米陸軍隊員の監督下で監視されており、CACI社の米軍との契約通りだった」と述べ、違法行為はなかったと強調。「イラクと世界中で軍の任務を引き続き支援する」としています。

収容所内で自由に行動

 一方、タグバ報告は、同収容所での「民間契約者」の行動を、こう指摘しています。「(彼らは)適切な監督下にはなかったようだ。われわれが査察している間も、収容区域を自由に歩き回っていた」

 拷問・虐待事件にかかわったとして追及されている米兵はこう証言しました。「夜番のときに、FBI、OGA、CID、MIが(情報をもつとみられる者を収容した)区域に出入りし、収容者を連れ出しては尋問していた」(ワシントン・ポスト紙二十二日付)

 FBIは連邦捜査局、CIDは軍刑事捜査部、MIは軍情報機関。OGAは「他の政府省庁」の略語で、CIAを意味するといいます。

 証言した米兵は、これら取調官の名前は分からないといいます。「彼らはしばしば制服を着ておらず、また、制服を着ていても名札をつけていない」

特殊部隊出身の社員も

 戦争「民営化」の実態が明るみに出たのは、イラクのファルージャで三月三十一日、四人の米「民間人」が殺害され、遺体が損壊された事件でした。その報復として米軍が行ったのが、市民七百人以上を殺害したファルージャの包囲、せん滅作戦でした。

 四人の正体は米国防総省と契約して、イラクで要人・施設警護などに携わるブラックウオーターUSA社の「社員」。このうち三人はレンジャー部隊など陸軍出身。一人は海軍のエリート特殊部隊シールズの出身者と伝えられました。

 同社のホームページによると、「政府による銃火器・治安訓練のアウトソーシング(外注)需要に応じるため」に、一九九六年に同社を設立したとあります。

 ノースカロライナ州にある同社の射撃訓練センターは「米国でも最も総合的な民間戦術訓練施設」。最近では、バグダッドとクウェート市に新たに事務所を開設し、イラク戦争への深いかかわりを示唆しています。

 「イラクには、彼らのような民間人が英国軍兵士よりも多数いる」―四人の殺害が起きた後の四月六日、米ABCテレビは伝えました。米軍のイラク占領はこうした「民間人」に大きく依存しており、その存在なくして、戦争は遂行できないことを物語っています。


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