日本共産党

2004年5月25日(火)「しんぶん赤旗」

合併押し付け・利権町長
「もうゴメン」

兵庫・出石町長選 

“議員30年、一度も裏切らなかった彼に”

奥村さん勝利 町民の決断


 古い町なみが残り、小京都といわれる兵庫県出石(いずし)町。観光客が皿そばに舌づつみを打つ姿がみられます。この町で、町民が日本共産党員・奥村忠俊さん(56)を町長に押し上げた――。二十三日投票の町長選で、奥村さんが現職(68)を破り、見事当選しました。(兵庫県・喜田光洋記者)


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当選から一夜明けた24日、町民から祝福される奥村さん(左)=出石町

 「奥村さんが通るとは思わなかったんですが、勝って本当によかった。非常に気分がいいですね。前の町長は、合併問題では一方通行、悪いうわさもあるし、町政を新しくした方がいい」

 同町のある商店主(52)は、にっこり笑いながら話します。

 同町を含む北但馬地域では一市五町合併がすすんでおり、来年三月には新市が発足する予定です。ところが、「隣の豊岡市への吸収合併ではないか」「有名な出石の名がなくなって観光がやっていけるのか」など、以前から町民の間には不安がうずまいていました。

 二〇〇二年十二月に、合併は住民投票で決めようと求める住民組織「一町会」が、観光協会の役員やそば屋の店主を中心に結成され、運動が広がります。ことし二月に同会がとりくんだ全世帯アンケートでは、「一市五町合併に賛成」がわずか12・6%、「住民投票をするべき」が87・3%にのぼりました。

 しかし、前町長は、住民投票を否定し続けます。また、「対等合併にならなければ重大な決断をする」「新市の名称が『豊岡市』ではいけない」という当初の言明をほごにして、吸収合併の象徴ともいえる「豊岡市」の新市名を受け入れ、「仕方ない」と転換し、いっそう町民の怒りが高まりました。

 五月十一日、議会で合併議案が強行可決。翌十二日夜の「一町会」役員会では、「運動してきた責任をとらんかったら町民から笑われる」と議論し、町長選に候補者を立てることを決定。「やるからには勝ちたい。それには人柄が抜群の奥村さんしかいない」「議員になって三十年間一度も町民を裏切ったことのない彼に」と、同会のメンバーでもある奥村さんに要請し、奥村さんは受諾します。翌十三日、立候補表明。告示五日前でした。

“力の差”13倍

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 奥村さんの出陣式に集まったのは六十人にたいし、相手側は四百人。知事や副知事、県議が応援に入り、建設業界が支援するなど、大がかりな体制でした。昨年の総選挙の比例票は、日本共産党が四百十二票、前町長与党の自民、公明、民主はあわせて五千四百八十八票で十三倍です。奥村さんは、「マンモスにアリが戦いを挑んでいるように思えた」といいます。

 奥村さんは、合併は、情報を公開し町民の意見を聞いて相談しながらとりくむこと、清潔な町政、町長給与と退職金の半減などを掲げ、「町民の声を聞かない人、ほかの市・町長となれあいで事業内容を決めていこうという人は、最後の町長にふさわしくありません」と訴えました。

 奥村さんの立候補と訴えが町民の心をとらえ、事務所に来る人、選挙活動に参加する人が日々増えていき、大きな流れとなりました。

 プロパンガス会社の実質的なオーナーである前町長が、町営住宅建替えで、オール電化の予定だったのを熱源にガスを導入し、同社が請け負うなど、前町長の利権体質にも大きな批判が集まっていました。それとは対照的に、利権とは縁がなく、私利私欲のない奥村さんの誠実な人柄はよく知られており、この点でも多くの町民の支持を集めました。


兵庫・出石町長選 奥村さん勝利

中心メンバーは自民党員

 今回、奥村さん押し上げの中心になったのは、自民党員の人たちです。

 熱心に応援した男性の自民党員(55)は、「そりゃもうれしいです。前の町長が通ると、また私腹を肥やされると思った。奥村さんに勝ってもらって、町を変えようと応援しました。出石をよくするためには、共産党も自民党も関係ありません。今後も協力させてもらう」と語ります。

 選挙責任者の渋谷勝彦さん(59)は「私も自民党員ですが住民無視で利権型の町政に審判が下ったということです。出石の町の気風ともいえますが悪いものは悪いと決着がつきました」といいます。

 奥村さんは抱負を語ります。「これまで九回選挙をやってきましたが、今回、町民の力は本当にすごいと思いました。情報公開につとめ、みなさんと相談しながら、町民本位の町政をやっていきたい」

地場産業振興に奮闘 奥村さん

 奥村さんは青年団団長をしていた二十五歳のとき、町議選に出馬し、高位で初当選しました。いらい八期をつとめ、出石町では最も長く議員を務めたベテランです。

 七〇年代前半、部落解放同盟朝田・丸尾派が引き起こした八鹿高校事件などにたいし、奥村さんは、部落解放運動の正常化と国民融合の運動の先頭にたちました。

 町議として他党会派議員と一致できる課題で共同をすすめ、住民要求の実現に力を尽くしてきました。

 奥村さんは地場産業の皿そば屋を営業しています。もともとは、木工業を経営していましたが、不況に直面し、転業したのです。数十件もあるそば屋さんの営業と利益を守ってきました。それだけでなく、転作・減反に苦しむ農家にそば栽培助成金の拡大に力をつくし、地場産業の振興に奮闘してきました。現在皿そば組合の組合長をしています。

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兵庫県出石町 人口約一万千四百人。「但馬の小京都」といわれ、江戸時代の面影を残す城下町です。出石皿そば、出石たくわん、出石焼などが特産品として知られています。



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