日本共産党

2004年5月20日(木)「しんぶん赤旗」

小泉首相再訪朝を前に
北朝鮮問題と日本共産党の立場を語る

東京・日本武道館での 不破議長の訴えから


 日本共産党の不破哲三議長が十八日、東京都内の日本武道館でおこなった演説から、北朝鮮問題と日本共産党の立場について語った部分(大要)を紹介します。


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演説する不破哲三議長=18日、東京・日本武道館

 外交問題で、もう一つ、お話ししたいことがあります。

 日本共産党は小泉政権反対、アメリカいいなり反対だから、外交問題で「なんでも反対」かというと、私たちは、この分野でも決して「なんでも反対」の政党ではないということであります。外交では、ほんとうの意味で日本の国民の利益、いわゆる国益にかかわる問題がしばしば起こってきます。そういうときには、私たちは相手が自民党の政権であっても、政府に協力するし、問題の道理ある解決のために、私たちの側から助けになる提案も大いにやるのであります。

 いま、小泉再訪朝が問題になっておりますが、北朝鮮問題というのは、そういう問題の一つです。

拉致問題を最初に提起、対応を政府に迫る

 私たちは、この問題では、最初から国民の安全と日本の平和の利益を最優先とする立場でとりくんでまいりました。私たちがなにをやってきたかを簡単にご紹介しますと、第一に拉致問題であります。

 この拉致問題を、国の政治の上で最初にとりあげて、それを解決することを政府に要求したのは、日本共産党でした。

 だいたい、北朝鮮は、七〇年代から八〇年代にかけて、国際的な無法行為――テロ事件とか、日本の漁船を日本海で銃撃するとか、いろんなことをやりました。拉致事件は、そういうなかで起こったことであります。わが党は最初から、北朝鮮の無法行為が問題になるたびに、それを正面から批判する態度をとり、そのために、八〇年代のはじめから、北朝鮮とは完全に関係断絶になりました。今日までその状態がつづいています。

 ところが、不思議なことに、ほかの党は、自民党も、当時の社会党も、公明党も、この時期に、だれが北朝鮮と一番仲がいいかということを競い合って、北朝鮮に友好の代表団を送る競争をしきりにやったものであります。ですから、これらの党には、全国に起こった行方不明者の事件についても、これを北朝鮮にかかわる問題としてとりあげる態度は少しもありませんでした。

 私たちは、行方不明者の事件について、北朝鮮による拉致の疑いがある問題をずっと調べあげ、一九八八年三月の国会で、橋本(敦)参院議員がこの問題を詳しくとりあげて、政府が拉致問題として対応することをつよく要求しました。そのとき、政府がはじめて「拉致」という言葉を使い、これらの行方不明者は北朝鮮によって連れ去られた疑いがある、というはっきりした言明をはじめておこなったわけです。つまり、拉致問題が日本と北朝鮮との間にあることを明確にし、国としてとりくむ条件を築くうえで重要な役割を果たしたのが、日本共産党でありました。(拍手)

 なにか北朝鮮というと、日本共産党が親しい関係にあるかのように誤解している人がいますが、実際はまったく反対であります。当時、北朝鮮との仲良しぶりを自慢していたのは、自民、社会、公明という他の諸党でありました。無法を無法と堂々といって、そのために、この二十年来、党としてのつきあいを絶ってきたのが日本共産党なのであります。(「いいぞ」の声、拍手)

交渉ルートの再開を粘り強く提案、政府を動かす

 二番目には、これをどうして解決するかという問題であります。それが次の問題でした。私たちは、この問題の解決のためにも、中断していた北朝鮮との国交交渉を再開し、そのなかで拉致問題も話し合って解決しよう、こういうことを粘り強く提案し、最後には政府を動かして、いま政府のやっている北朝鮮との政府間の交渉に道を開いてきたわけであります。

 だいたい、朝鮮半島というのは、戦争前、日本が長く植民地にしていたところです。この歴史問題を誠実に解決して、この地域の国ぐにと平和な関係をつくることは、日本の義務であります。ところが、韓国との間では一九六五年に日韓条約を結んで解決しましたが、北朝鮮とは未解決のまま今日まで残っています。しかも、北朝鮮との間では国交問題の交渉もふくめて、何の交渉ルートもないまま、という状態が長く続いていました。

 いまから五、六年前ですが、テポドンという事件が大問題になったのを覚えておられるでしょうか。北朝鮮がテポドン・ミサイルの発射実験をした、それが日本の上空をとおった、大変だということで大騒ぎになり、軍事対決という危険が非常に強くなりました。

 そのとき、私は一九九九年の国会で、この問題をとりあげて提案したのです。“こういう対立が起きているが、日本と北朝鮮の間には何の交渉ルートもないまま、お互いに危ない、危ないと言い合っている。そういう状態が一番危険だ。韓国にしてもアメリカにしても、ちゃんと交渉のルートを持っているじゃないか、日本は中断している国交正常化の交渉を堂々と再開して、そのなかで拉致問題、テポドン問題も解決すべきじゃないか”。このことを、一月と十一月、二度にわたって国会で提案しました。

 政府・与党は最初はこれを無視したのですけれども、その年の末になってようやく動き出して、超党派の議員団の代表を北朝鮮に送るから今度は日本共産党も入ってくれと言ってきました。こういう代表団に、私たちへの参加が求められたのは、はじめてのことです。あとで分かったのですけれども、私たちが繰り返し提案しても、日本の政府は動かない、まわりの方がそれにしびれを切らして、韓国政府とアメリカ政府の側から、国会で日本共産党が提案しているじゃないか、なぜやらないのかと、両方から日本政府に大きなはたらきかけがあったんだそうであります。それで政治が動き出した。

 そして、一九九九年十二月に北朝鮮を訪問した超党派代表団には、参議院からは東京選出の参議院議員である緒方(靖夫)さんが、衆議院からは国対委員長の穀田(恵二)さんが参加して、北朝鮮との話し合いでも大事な役割を果たしました。この代表団は、出発にあたって、日本共産党が提案してきた線で北朝鮮と交渉しようという申し合わせをして出かけました。北朝鮮側ともその線で話がまとまって、このときの確認にもとづいて翌年二〇〇〇年から、政府と政府の間の交渉が始まりました。

 そして、その流れの中で二年前、小泉さん(首相)が訪朝して「日朝平壌宣言」がでる、五人の拉致被害者の帰国が実現する、そして国交正常化にむかって、どういう段取りで進むかということの申し合わせをする、そういうところまで進んだのであります。

 これは、私たちが提唱した、国交正常化にむけての交渉ルートを開く中で拉致問題やテポドン問題を話し合おう、このレールのうえで実現したことであります。この小泉さんの北朝鮮訪問にたいして、野党でも民主党や自由党は口をきわめて非難し、出された「宣言」についても、これは国を裏切るものだとか、ひどい攻撃をしました。しかし、私たちは、評価すべきことはきちんと評価するという態度をとり、その線で問題解決を進めるよう希望してきたのであります。

21世紀、日本がアジアで平和に生きてゆくために

 今度の小泉再訪問も、同じ線のうえで進んでいることであります。二十二日の訪問の結果なにが起こるかを、私がいまから予告的に申し上げる立場にありません。しかし、「日朝平壌宣言」というレールが敷かれているわけですから、この線で努力をつくす以外に前向きの解決の道はないはずであります。

 北朝鮮の話になりますと、テレビなどでも、いまの体制を打倒するという立場からさかんに議論する人がいます。しかし私は、これは邪道の議論だと思います。かりにその国の政治にいろんな問題があっても、その政治をどうするかは、その国の国民の問題であります。自分が気に入らないからといって、国と国の関係に打倒論を持ち込むようなことをしたら、ブッシュ政権がイラクでやったのと同じ道を日本も歩むことになります。(拍手)

 私たちは、こういう邪道の議論はきちんと戒め、やはり国と国の関係をきちんと確立することを国際関係の大道にするという態度を守る必要があります。

 そして日本と北朝鮮の間で拉致問題を解決し、国交正常化への道が開かれるならば、それはいま北京でおこなわれている六カ国協議にも必ず大きな影響を与え、やがては北朝鮮が国際的な無法行為をみずから清算して、国際社会に復帰する新しい条件を開くことにも役立つでしょう。そのことは、私たちが生きている北東アジアに、ルールある平和の国際関係をつくりだすことになり、二十一世紀に日本がアジアで平和に生きていく情勢を強めることでもあります。

 日本共産党は、こういう立場で、今回の小泉さんの再訪朝のなりゆきとその結果を注意深く見守りながら、拉致問題をふくむ北朝鮮問題の解決、北東アジアの平和関係の確立をめざして、ひきつづき努力をつくすつもりであります。(長く大きな拍手)


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