日本共産党

2004年5月17日(月)「しんぶん赤旗」

インド 総選挙で左翼戦線躍進

ケララ州にみる

自治・行政に住民の信頼

“農村開発の先進例”国連も注目


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 インド総選挙(定数五百四十五)で、史上最多の六十議席に躍進した左翼戦線。南部ケララ州(人口三千二百万人)の政治地図も激変しました。「国民会議派候補が全滅するとは、ケララの歴史で初めてだ」。地元紙記者が驚くほどです。

 同州は、今回全国で第一党となった国民会議派率いる統一民主戦線と、インド共産党(マルクス主義)=CPIM=主体の左翼民主戦線が、この半世紀の基本的な対決構図。一九五七年にインド初の共産党州政府が誕生しました。その後は二つの戦線が交互に州議会選挙で勝利し政府も交代を繰り返しました。現在は会議派の戦線の州政府。

 このケララ州で今回、定数二十のうち左翼民主戦線が十八を占め圧勝しました。主力のインド共産党(マルクス主義)も前回九九年の八から十三議席に躍進し最多です。会議派の牙城ムクンダプラムでも初めて勝ちました。会議派は前回の八議席をすべて失いました。地元紙記者は「会議派の内紛続きに住民が批判票を投じた」と分析します。しかし、左翼勝利の土台は「敵失」以上に、組織力と自治・行政能力への住民の信頼です。

選挙の組織戦は全有権者対象

 ケララ州のパンチャヤト(地方自治)は、発展途上国の農村開発の先進的例として国連機関も注目します。国連開発計画(UNDP)が三月、同州のバランニカブ地区(人口十八万人)を訪れ、休耕地を活用した農産物の増産、女性の社会的地位向上のとりくみを調査しました。インド共産党(マルクス主義)の党員はそこで献身的に活動しています。

 記者が三月、チャリアナド地区(人口二万二千人)を訪ねたとき、三カ月に一度開くパンチャヤト住民集会に毎回必ず参加しているというクンジュクンジャマさん(77)は、こう語りました。「集会は、パンチャヤトがこれから何をやるのかを教えてくれる。私もそこで希望を言う。インド共産党(マルクス主義)は、私のように定期収人がない人も助けてくれる。毎回、この党に投票しているよ」。この日、彼女はパンチャヤト事務所を訪れ、住民の希望が強い自宅のトイレ建設助成金の小切手を手にしました。

 選挙での組織戦は文字通り全有権者対象です。インド共産党(マルクス主義)党員で公営観光会社勤務のスレーシュさん(27)は「全部の家々を党員が手分けして回る。要望を聞き政策を話す」と言います。

宗派間の調和支持広がる

 同党が史上初めて勝ったもう一つの選挙区はマンジェリ。イスラム教徒が人口の六割近くで、会議派の戦線を構成するムスリム連盟の不敗の拠点でした。インド共産党(マルクス主義)ケララ州機関紙デシャビマニの記者は「州政府が宗派紛争の避難民を長く放置し、イスラム教徒がムスリム連盟から離れた。それが宗派間の調和を呼びかけてきた左翼民主戦線への支持に回った」と説明します。

 拠点の西ベンガル、ケララ、トリプラ各州のほか、左翼戦線はアンドラプラデシュ州で二、タミルナド州で三議席、新たに確保しました。人民党のヒンズー至上主義に対決し政教分離政権をつくることをめざして、地域政党や会議派と候補者調整を行いました。インド共産党(CPI)候補はジャルカンド州で人民党政権のシンハ外相を破りました。アンドラプラデシュ州、タミルナド州では人民党議席がゼロになりました。

 タミルナド州のナガルコイル選挙区ではインド共産党(マルクス主義)候補が道路輸送・高速道路相を破りました。ここでの同党の勝利は初めて。記者が同選挙区を訪ねた選挙戦中の三月、キリスト教修道女のサロジヤムさんが言いました。「人民党の閣僚を倒すチャンスです。人民党はヒンズー教を利用して票を集めているけれど、私たちは、貧しい人のために働いているのはだれ? とみんなに問いかけています。共産党がどんな党か広く知らせたい」

 (ニューデリー=小玉純一)


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