日本共産党

2004年5月11日(火)「しんぶん赤旗」

そもそも けいざい ワールド

??? 武器輸出三原則って ???


グラフ

 昨年末に小泉自・公政権が決めた「ミサイル防衛」の導入を契機にして、国是の武器輸出三原則の見直しに向けた動きが激しくなっています。三月末には自民党が「見直すことが必要」との提言をまとめ、財界からも「見直し」の声が上がっています。そもそも武器輸出三原則ってなんなの。 金子 豊弘記者

憲法の立場から

 国是というからには、国会にいけば何か分かるはずだ――。

 意気込んで出かけたのは、国会議事堂中央部の四階にある国立国会図書館の国会分館です。薄暗い三号書庫は、自分の足音以外には何も聞こえない静かでひんやりとした部屋でした。資料の山で見つけました。

 一九六七年四月二十一日、衆院の決算委員会での佐藤栄作首相の発言(別項)です。これは、(1)共産諸国(2)国連決議による武器禁輸対象国(3)国際紛争当事国――には武器輸出は認めないという三原則でした。そして一九七六年二月二十七日に三木武夫内閣が「政府統一見解」を示し、三原則以外の国にも「『武器』の輸出を慎む」としました。

 その「政府統一見解」の中には、政府自身「『武器』の輸出については、平和国家としての我(わ)が国の立場から、それによって国際紛争等を助長することを回避するため」、「憲法の精神にのっとり」、武器輸出を慎むとしています。

 武器輸出三原則は、日本が戦争や武力紛争の手段をばらまいてはいけないという国民の願いに支えられてきたものだったのです。

訪米みやげに風穴

 この国是に風穴を開けたのが中曽根康弘首相でした。一九八三年一月十四日、日米首脳会談のための訪米を控えた中曽根首相は、閣議でアメリカが紛争当事国になった場合も含めて、日本の軍事技術を無条件で全面的にアメリカへ提供する方針を決めました。

 そのとき、レーガン米大統領は、「武器技術供与の努力を多としたい」と大歓迎でした。それが、小泉内閣になると、アメリカの核戦略の優位を絶対のものにし、報復の心配なく先制攻撃できる「ミサイル防衛」に参加することを決めるまでになっています。

 ある官僚は、「ミサイル防衛」問題と武器輸出三原則の関係について、次のようなことを教えてくれました。

 ――「ミサイル防衛」問題では、すでに九九年から日米は四つのミサイル部品(別項)について共同研究をおこなっている。この研究は、政府が昨年末に導入を決めた「ミサイル防衛」の機能が、さらに高まった段階で使用されるもの。実際に生産段階になると、米国への部品の輸出が必要になり、米国に技術供与しかできないという武器輸出三原則が障害になる――。

 政府はこれまで、ミサイル部品の実験も含めた研究開発に約百七十七億円を投入してきました。

 「この開発に携わっている企業は、三菱重工、東芝、三菱電機、富士通、川崎重工、石川島播磨の軍事企業です」と経済アナリスト。

 特定の大企業のもうけのために、国是が投げ捨てられようとしているのです。

国是が金で動く

 政府の資料によると、これらの企業の軍需に依存する割合は5%前後から10%程度に達しています(表)。世界の軍需企業と比べると低い割合になっていますが、武器輸出三原則に歯止めがなくなれば、日本企業の軍需依存の割合も高くなるでしょう。

 日本の軍需企業のトップである三菱重工業の西岡喬会長は、二月の自民党五役との懇談の席で武器輸出三原則の「見直し」を要求しています。西岡会長は、政策を金で買う企業献金「あっせん」を再開した日本経団連の副会長でもあります。

 市民の立場から企業の行動を監視している株主オンブズマン代表の森岡孝二関西大学教授は、「軍需企業が企業献金をおこなうことで、軍事予算の増額や武器輸出禁止の見直しの見返りを求めれば、国是が金で動くことになり非常に危険なことです」と指摘します。

 しかも日本経団連は五月末の総会で、憲法問題の委員会を立ち上げ、武器輸出三原則の大もとになっている憲法の改悪へ向けて動きだします。

 このままでは、アメリカと財界の言いなりになって、「戦争をすれば金になる」国に。そんな日本にしてはいけないという思いを強くしました。


 佐藤首相の国会答弁 「戦争をしている国、あるいはまた共産国向けの場合、あるいは国連決議により武器等の輸出の禁止がされている国向けの場合、それとただいま国際紛争中の当事国またはそのおそれのある国向け、こういうのは輸出してはならない」(一九六七年四月二十一日、衆院決算委員会)

 ミサイル部品の日米共同研究の四つ 赤外線を利用し、標的を識別したり捕捉する「赤外線シーカ」、この「赤外線シーカ」を保護する「ノーズコーン」、相手の弾道を破壊する「キネティック弾道」、それに全三段のミサイルの中の第二段目の「第二段ロケットモータ」です。


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