2004年5月8日(土)「しんぶん赤旗」
自民党はこの夏の参院選を公明党との選挙協力で乗り切ろうとしています。しかし、公明党との協力関係は代償が大きく、自民党のアイデンティティー(独自性)の危機もいわれています。
「このままでは自民党は溶けてなくなる」
自民党内にはこんな危機感が沈殿しています。公明党への遠慮から大きな声にはならないが、公明党との選挙協力はかえって自民党を衰退させるというものです。
自民党にとっていまや公明党の協力は必要不可欠です。
「新しい自民党の到来を予感させる」と安倍晋三幹事長が胸を張った四月二十五日の衆院三補欠選挙の勝利。公明党・創価学会の支えが決め手でした。小泉純一郎総裁(首相)の下、自民党は参院選でも公明党に選挙協力を求めて協議中です。
昨年の総選挙。小選挙区で当選した自民党議員の半数近くが、創価学会票の恩恵によるとされています。自民党選挙関係者はこういいます。
「後援会員の多くはおいしいものを与えたから動いたが、いまはそうはいかない。一部では、選挙で票が足りないだけでなく、票を獲得するための運動員も足りない現状がある。それを補ってくれるのが創価学会員だ」
政権政党であることによる利益配分が行き詰まり、小泉「構造改革」での社会保障切り捨て、中小業者つぶしなど、支持基盤の崩壊がすすむ自民党にとって願ったりの選挙対策。しかしそれが、さらに自民党の支持基盤を脅かしています。
公明党側の見返り要求は強烈です。夏の参院選も総選挙も、「比例票をよこせ」です。昨年の総選挙では、小泉首相の眼前で自民党議員らが「比例は公明党に」と連呼。後に首相は「はじめは驚いたがあまり多いので慣れた」ともらしたといわれます。自民党陣営は虎の子の後援会名簿を、一万、二万、三万人と提出させられました。本来「門外不出」のもの。それが、公明党・創価学会に食われたのです。
保守層の自民党離れも起きました。「不況に加え、公明党との連立、選挙協力に不満を持つ自民党支持層がこちらに流れてきた」(民主党議員)
自民党関係者は「創価学会は県長を責任者に、長期戦略に基づいて組織的にやっているが、自民党は現場任せでいいようにやられた」と振り返ります。
個人は自分の議席獲得を、党は政権維持を最優先。これが国民に責任を負う政党といえるのか、という自民党の現状です。「自民党らしさ、独自性が損なわれるようになっている」(自民党議員)との不満も膨れ上がっています。
「公明党との関係もある」。三月上旬、自民党の部会が防衛庁の「省」昇格法案を了承したのにたいし、小泉首相がブレーキをかけました。公明党は「マニフェストで公約した」と主張して、譲らないことがしばしば。国民に大きな負担増と給付減を強いる年金改悪法案も公明党主導でした。
案件が自民党の担当部会を超えて自民・公明の与党協議の場に持ち込まれ、自民党議員の手の届かないところで政策決定される。公明党に日ごろの言動がチェックされ、推薦ほしさに公明党に迎合するようになっている――などなど。
危機の自民党は「基本理念」の策定に取り組んでいます。「背骨がしっかりしていないと、自民党は持たない」。憲法や教育基本法の改悪など「真の保守政党として、堂々と理念、政策を主張したい」というものです。
一方現実は――。静岡県連幹事長は二月下旬、公明党県本部の国政報告会で「参院選は『あうんの呼吸』でやりたい」と表明。あちこちで、比例票を求める公明党に呼応。政党としての自己否定、自ら自民党を掘り崩す動きはやみそうにありません。