日本共産党

2004年5月7日(金)「しんぶん赤旗」

責任者逮捕 あまりに遅い

三菱タイヤ脱落

悲しみ永遠に癒えない

岡本さんの母、涙の会見


 「逮捕されても私の娘は生きかえらないのです」。二〇〇二年一月、横浜市瀬谷区で三菱製大型車のタイヤ脱落事故で亡くなった主婦・岡本紫穂さん=当時二十九歳=の母・増田陽子さん(55)は六日、横浜市内で記者会見に臨み終始、うつむきかげんで、目頭にたまる涙をハンカチでおさえながら語りました。


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「娘を返して」と会見する被害者の母、増田陽子さん=6日、横浜市中区

 この日、増田さんは、午前九時に強制捜査開始のニュースを聞いて、娘の紫穂さんが生前使っていた携帯電話のメールに次のように送信したといいます。

 「ようやく三菱の責任者が逮捕されることになったよ。でも、あまりに遅かったよね。しーちゃんはもう帰ってこれないんだもんね」

 逮捕された幹部たちはついに増田さんら遺族の前に謝罪に現れませんでした。「誠意がまったく感じられません。この二年間のウソを洗いざらい全部明らかにして、かかわった幹部一人ひとりが心のこもった謝罪をしてほしい」。こう、言葉をしぼりだすように増田さんは話します。

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会見の冒頭、謝罪する岡崎洋一郎三菱自動車会長兼社長(右)と堀道夫三菱ふそうトラック・バス会長=6日午後6時すぎ、東京都千代田区のパレスホテル

 増田さんの代理人で同席した青木勝治弁護士は「三菱は日本を代表する企業です。今回の不祥事を機に欧米並みの企業モラルの範を示してほしい」とのべます。三菱を相手どった民事訴訟で、欧米で企業に対して消費者から行われる「制裁的慰謝料」を認めさせ「企業犯罪の再発防止」の意義を強調しました。

 「娘が亡くなったあと、いろんなものを失った」と振りかえる増田さん。

 仕事帰りに毎日のように娘の家にいって、岡本さんが帰るまで娘と会話していました。

 事故現場は仕事で通る道でした。事故後、通ろうとすると胸騒ぎが激しくなり、怖くてつらくて通ることができませんでした。孫と一緒に買い物をしたスーパーなどもそばに行くだけで胸が苦しくなり涙が出て近づけません。自身、体調を崩しました。「娘の顔が寝てもさめても、いつも浮かんできて、寂しいつらい思いがずっと続いている」といいます。

 取材陣に逮捕について問われると、「会社ぐるみの殺人です。(業務上過失致死傷や虚偽報告では)軽すぎます」と答えました。


他の逮捕者氏名

 宇佐美隆、花輪亮男、村川洋の三容疑者以外に逮捕されたのは次の四人。

 【道路運送車両法違反】

 元品質技術本部長・越川忠(61)▽品質統括部長・望月進(54)▽品質情報部長・柿沼彰(54)

 【業務上過失致死傷】

 技術品質部グループ長・三木広俊(56)


 母子死傷事故 横浜市瀬谷区の県道で二○○二年一月十日、走行中の大型トレーラーの左前輪タイヤが突然外れ、ベビーカーを押して歩道を歩いていた主婦・岡本紫穂さん=当時(29)=の背中を直撃。岡本さんが死亡し、当時四歳の長男と一歳の二男が軽傷を負いました。

 神奈川県警は昨年十月と今年一月、「ハブの設計上の欠陥」の疑いもあるとみて、業務上過失致死傷容疑で三菱自動車本社などを家宅捜索。遺族も昨年三月、同社などを相手取り民事訴訟を起こしました。


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