日本共産党

2004年5月4日(火)「しんぶん赤旗」

経済・財界気流

三菱自“存続の岐路”

外資頼みで墓穴掘る

隠ぺい体質 政府が後押し


 独ダイムラークライスラーの土壇場での支援打ち切りで再建策が白紙になった三菱自動車。四月三十日の臨時株主総会では株主が「どうしてこうなったのか」と怒りに声を震わせて問いただす場面も。

  ダイムラーが三菱自動車への増資を拒否するという知らせが入ったのは先月二十三日の朝だったね。

  政府にも衝撃が走った。経済産業省の担当官も「えっ、何かの聞き間違い?」と耳を疑ったそうだよ。

  国内での報道では、ダイムラーが四千五百億円程度の追加出資をして三菱自の再建を支援するといわれていたからね。

  ところが、「元のシナリオ通りになったね」という感想をもらしていた業界関係者もいるよ。

株主への責任

  どういうこと。

  ダイムラーはすでに三菱自からトラック・バスを切り離された三菱ふそうトラック・バスを子会社化している。欠陥車問題があっても、アジア諸国ではブランド力がある。「うまみ」だけ手に入れ、魅力のなくなった三菱自からは手を引くという見方だ。

  それにしても臨時株主総会に向けてダイムラーも一緒になって早くから再建策を練っていたわけでしょう。ここにきて、土壇場の白紙撤回はないよね。

  そこは、外資の外資たるゆえんだよ。ダイムラーは、大株主が三菱自への追加支援打ち切りを求めた。経営側は、進出先への責任より、株主への責任が重いということで、今回の決定になったわけだ。

  三菱自の外資頼みの姿勢が墓穴を掘った形だね。外資を呼びこみ日本経済を再生させるシナリオを描いている小泉政権も反省してほしいね。

  株主総会の場で、会長兼社長に就任した岡崎洋一郎氏は、「会社存続を問われる重要な岐路に立っている」とあいさつしたが、この結果を招いたのは、長年の三菱自の隠ぺい体質だ。

  クレーム情報とその資料をロッカーなどに隠していたことが判明したのは、二〇〇〇年七月だった。その体質が改善されずに結局、〇二年には横浜市での死傷事件にまで発展してしまった。

顧客は3番目

  三菱自では以前から、「クレーム情報なんていちいち政府側に出していられるか」というのが常態化していた。

  実は、三菱自の歴代社長には、戦争中に戦闘機の開発にあたっていた久保富夫氏や、東条英機の二男、東条輝雄氏などそうそうたる顔ぶれが並んでいる。当時、久保氏は「久保天皇」ともいわれ、三菱自の社員はその威光をかさに政府の役人をとことんなめていた、という。

  三菱自の顧客軽視の企業体質については、こんな話もある。幹部社員が「うちの会社は、まず自分の地位を守ること、次に、コストを削減すること。三番目にやっと顧客がくる。順番が普通の会社とは違うんだ」ともらしていたそうだ。責任感の欠落だね。

  三菱自は一九七〇年に日本の軍需企業のトップである三菱重工業から分離、独立した会社だ。「軍需産業は秘密を明かさない」という体質が、三菱自の隠ぺい体質につながっているのかもしれない。

  そんな三菱自にたいし政府は、リストラを応援する「産業再生」法を二回も適用している。しかも、二回目の二〇〇〇年十月は、クレーム隠しが発覚した三カ月後だった。それで三菱自は六億円以上もの減税を受けている。

  三菱自の隠ぺい体質を政府が後押ししたとも言える。政府にも大いに責任があるね。

  株主総会で経営側は「意識改革をすすめる」「企業風土を改革する」という抽象的な説明に終始していた。失った国民の信頼を回復するには、大企業の社会的責任を果たすための具体策を打ち出せるかどうかがカギになる。


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