日本共産党

2004年5月4日(火)「しんぶん赤旗」

「九条と世界の中の日本」

NHK憲法記念日特集 市田書記局長が語る


 日本共産党の市田忠義書記局長は三日、NHKの憲法記念日特集番組「九条と世界の中の日本」に出演し、各党の代表と討論しました。市田氏の発言(大要)を紹介します。

憲法九条――痛苦の教訓で生まれた「時代のさきがけ」

 冒頭、憲法「改正」や九条について討論となり、自民、民主、公明各党から「自衛隊を持つことを明確にしたらいい」(岡田克也民主党幹事長)など、見直しを求める発言が相次ぎました。市田氏は次のようにのべました。

 市田 まず憲法九条がどうしてできたのかをはっきりさせておく必要があると思います。先の大戦で三百十万人の日本国民、二千万人のアジアの人々が犠牲になったわけで、その痛苦の教訓の上に二度と再び戦争をしないと誓って九条は確立したと思うんですね。それから、戦後の国際社会に日本が仲間入りするうえで、世界に対してもう戦争をしない、あの戦前のアジア侵略を反省して国際社会に仲間入りする前提条件が九条だったと思うんです。

 たしかにイラクへ自衛隊が派兵されたりしていますが、憲法の建前上、いまの政府といえども――私は虚構だと思いますが――「戦闘地域にはいかない」とか「武力行使はできない」と(いっている)。やっぱり憲法の制約があるからだと思います。国民の運動、世論で九条が守られてきたことが、公然と海外での戦争に日本が協力・加担することを阻止してきた大きな力になっているわけです。

 時代遅れとかいわれるんですが、むしろ時代のさきがけです。世界ではこういう日本国憲法、九条のようなものを持ちたいと思っている国が増えているわけですから、誇りと自信をもって私は九条を堅持していくべきだと思います。

自衛隊――世界有数の軍隊憲法完全実施で現実ただす

 与党側は「『戦力は保持しない』という書き方が誤解される」(久間章生自民党幹事長代理)、「現在の自衛隊は憲法の枠内で行われている」(太田昭宏公明党幹事長代行)などと発言。市田氏は司会者から「どう憲法を現実に近づけていくか」と問われて次のように答えました。

 市田 どこから読んでも、どうみても、現実にある日本の自衛隊は、名前は「自衛隊」と呼んでいるが、世界有数の軍隊であることは間違いないわけで、憲法違反です。

 憲法に現実との乖離(かいり)があるからと憲法を変えるのではなくて、憲法の完全実施のために現実をただしていく。これは、やはり国民の合意が必要です。一歩一歩国民の合意を得ながら、平和外交に転換する。安保条約も廃棄し、軍事同盟から抜け出し、自衛隊が必要ないという国民の意識が醸成されていく段階を踏むべきだ、と。

 国軍として認めればいいではないかという話がありましたが、単なる名前を変えるということにとどまらないと思う。自衛隊と呼んでいるのは、実際は軍隊ですけれど、自衛隊と呼ばざるをえないのは、自衛のための最小限度を超えてはならないという歯止めがあったと思うんですね。それを国軍ということにすれば、日本の軍隊がアメリカや外国の軍隊と同じように集団的自衛権の行使も可能だということに突き進んでいくわけで、単なる名前を変えることにとどまらないと思います。

集団的自衛権――侵略の合理化

 「集団的自衛権の行使を認めるとどういう懸念があるか」と司会者から問われ、市田氏は次のようにのべました。

 市田 「自衛」という言葉がついているから日本語の語感からすると、どこかから攻められたときに共同で守るという感じがすると思います。しかし、私どもの代表が国会で「集団的自衛権の名で実際に軍事行動を行った例はどういうものがあるか」と聞いたら、当時の田中外務大臣は、アメリカのベトナム侵略、旧ソ連のチェコスロバキアへの侵略とアフガンへの侵攻をあげたんです。

 それ以外にも、アメリカのニカラグア侵略、グレナダへの侵略もあるし、旧ソ連のハンガリーへの侵攻もある。結局これらは全部、国連総会や国際司法裁判所で「間違っている」「国際法違反だ」と糾弾を受けた行為ばかりなんですね。

 そういう侵略を合理化するための理屈として持ち出されているのが、「集団的自衛権」です。そうなると、日本がいっそう海外でのアメリカの干渉戦争に協力していくことになる。

 (集団的自衛権の行使の)震源地、発祥地をみますと、アメリカのアーミテージ国務副長官が“集団的自衛権の行使ができないような憲法では日米同盟の束縛になる。取り払え”と「アーミテージリポート」でも書いている。憲法改悪の一番の狙いも、九条変えようという狙いもそこにあるし、集団的自衛権の本質はそこにあると思います。

国際貢献――憲法に基づく非軍事でこそ

 日本の国際貢献に関して岡田氏は、民主党内で議論されている自衛隊と別組織の「国連待機軍」について「あまり大きくせず、自衛隊を衣替えさせる」と提案。市田氏は「第二自衛隊的なものに結局なるのではないか」としたうえで、次のようにのべました。

 市田 国際貢献というと、軍事力による貢献という。この発想を変えるべきだと思います。

 一番いま求められているのは、飢餓、戦災、貧困に直面している方々に、人道的な支援、非軍事の国際貢献を憲法に基づいてやることだ。そういう憲法をもった国として国連に加盟しているわけだから。

 自衛隊の「人道支援」といっているが、武装した自衛隊が宿営地に閉じこもって、外に出ていったら危ないということで鉄条網越しにホースを出して給水をやっているわけでしょ。

 実際に人道支援をやっている日本国際ボランティアセンター(代表)の熊岡(路矢)さんが国会で証言されて、“人道支援というのは中立性が一番大事だ。あのアメリカの戦争に真っ先に賛成した日本の武装した自衛隊がきたら、人道支援の邪魔になるんだ。しかも非効率だ”とおっしゃっているんです。

 イラクで三月に世論調査が行われました。どの国に一番、復興支援を期待するかといったら日本はダントツで36%だったんですね。日本はアジアには侵略したけれども、イラクを含む中東にはあの戦前の日本軍国主義も侵略しなかった、憲法九条をもっている。戦争放棄をうたっている国だからこそ復興のために非軍事で日本が来てほしいというのが本当の願いだと思うんですね。国際貢献というと「軍事」という発想を変えるべきだ。

 自衛隊の海外派兵を常時できるよう政府が恒久法を検討していることについて市田氏は、「これまで以上に、海外でのアメリカがやる不当な干渉戦争に常に協力・加担していく道をつくろうとするわけだから、それほどまずいことはない」と強く反対。日本として国際貢献をどうすすめるべきかについて次のように答えました。

 市田 憲法の前文にある「いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」とは、戦前の日本軍国主義の侵略の反省の上にたったもので、二度とそういうことをしない誓いです。その言葉を使って自衛隊の海外派兵の根拠に小泉さん(首相)がされたのはまったく違う。

 国際貢献のあり方は、憲法に基づいて平和的な非軍事のさまざまな貢献のやり方はいくらでもある。国連が決めたことはすべて何でもOKというが、憲法をもっているわけですから、憲法の精神にたってわれわれは非軍事に徹するべきだと思います。

憲法論議にどうのぞむか 

 最後に、憲法論議を今後どうすすめるかについて市田氏は次のようにのべました。

 市田 憲法九条はもちろんのこと、生存権を明記した二五条――健康で文化的な最低限度の生活を営む権利、両性の平等とか、世界の憲法の中でも日本の平和的民主的な宝ともいうべき世界のブランドだと思う。この憲法を守る国民的議論を起こす先頭に立ちたいと思っています。


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