日本共産党

2004年5月1日(土)「しんぶん赤旗」

憲法をこの手に

立ち上がる人たち(1)

人類の理想――9条守るたたかい

「戦争しない国」で生きる権利


写真

イラク派兵差し止めを求めるデモ=2月23日、名古屋市内

 自民党が二〇〇五年、民主党が〇六年と、改憲案づくりで競い合い、国会では改憲の発議権を持つ委員会設置と国民投票法案提出の動き――。憲法改悪にむけた動きが急ピッチで進むなか、三日の憲法記念日を迎えようとしています。一方、憲法九条を守ろう、憲法を生かし再生しようという動きも強まりつつあります。憲法を手に平和や権利を守ろうと立ちあがっている人たちを追いました。

 今年一月、名古屋空港に隣接する航空自衛隊小牧基地。クウェートに向かうC130輸送機に、抗議のこぶしを突きつける池住義憲さん(59)=イラク派兵差し止め訴訟原告団代表=の胸には憤りがこみあげてきました。

“傍観しない”訴訟に次つぎ

 昨年二月の愛知県知事選に立候補した池住さん。「『愛知県を平和メッセージの発信基地に』が私の公約でした。ところがその愛知県が、イラクへの出撃基地になってしまったのです」

 「憲法改正が望ましい」と公言する小泉政権の発足以来、米軍の侵略・干渉戦争への全面的参加を目的に急ピッチで進んだ憲法改悪の動き。

 海上自衛艦のインド洋派兵、有事法制の制定・具体化、「ミサイル防衛」導入の決定、イラクへの戦地派兵…。「憲法九条が踏みにじられるのを、これ以上黙って見ているわけにはいかない」。池住さんがイラク派兵差し止め訴訟に踏み切った動機でした。

 池住さんたちは一月、つながりのある八百人に電子メールを送り、原告団を募集。「どうせ最後は、自公政権の数の暴力でやられてしまう」という反応も多く、「百人も集まればいい」と思っていました。しかし、「このまま傍観していいのか」との思いは、口コミやメール、ビラで広がりました。一家四人で原告団に加わる例も生まれ、四月末時点で二千四百人を超えました。

 五月末まで原告団を募り、六月の裁判開始を予定しています。

 訴訟の最大の目的は、イラク派兵の憲法違反を確認することです。「私たち自身、『戦争をしない国』に生きる権利を奪われることになります。加えて、憲法は二千万人のアジア民衆の命を奪った反省として、二度と戦争はしません、軍備も持ちません、と世界に誓ったものです。『時代が変わった』とか、『国際貢献』だとか、その程度の理由で変えられるものではありません」

 一九八〇年代、フィリピンに滞在していた池住さんは、現地の人たちから同じ質問を三回、突きつけられたことがあります。「一九四二年から四四年の間、あなたのお父さんはどこにいましたか」――。

 侵略戦争の加害者だったのか、問われたのです。戦争の傷跡は消えていない。だから憲法九条の意義は大きいと、池住さんは実感しました。

 「自衛隊派兵ではなく、憲法九条の輸出こそが日本の国際貢献です」

県民過半数の署名をめざす

 「自民・民主・公明各党による改憲の動きの強まりのなか、九条改悪に反対する署名行動や学習運動も、各地域で広がりつつあります」。憲法改悪阻止各界連絡会議の川村俊夫事務局長はいいます。

 長野県では昨年来、長野県革新懇を中心に「イラク戦争を裁く長野法廷」や開戦一周年集会など、イラク派兵反対の運動を展開。奥平康弘・東京大学名誉教授や本多勝一・元朝日新聞編集委員など同県ゆかりの著名人も参加し、共同を広げてきました。

 五月三日には、これら著名人十六人が呼びかけ人となって「憲法第九条を守る県民過半数署名をすすめる会」を発足させ、全県規模での運動を開始する予定です。

 数多くの戦場写真を手がけた報道写真家の石川文洋さん(65)も、呼びかけ人の一人です。

 生まれ故郷の沖縄県やベトナム、カンボジア、アフガニスタンなどアジア諸国で、軍隊が存在するがゆえの惨禍を、レンズ越しに見てきた石川さん。「これ以上九条違反を見逃せば、徴兵制復活までいくでしょう。でも、九条が徹底的に守られれば自衛隊はなくなるし、九条の精神が世界に広まれば、軍隊は消え去り、人々は戦争の苦しみから解放されます。だから、私は九条を守ろうといいたい」

 長野県は戦前、旧日本軍の中国侵略を補完するための満蒙開拓団や同青少年義勇軍を全国で最も多く送り出した県です。今なお中国残留孤児問題など戦争の傷跡を残しています。「会」の呼びかけは、憲法九条を守ることについて「いまを生きる長野県民の責務」と訴えています。

 石川さんは最近、日本を北から南まで歩いて縦断し、出会った人々や風景を写真に収めました。

 「日本はやっぱり平和で、戦乱のイラクは遠い世界なんだな、と感じました。でも、みんな有権者です。イラクからの撤兵を決断したスペインのように、一人ひとりが声をあげれば、状況は変わるのです」竹下岳記者(つづく)


 第九条 (1)日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

 (2)前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。


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