2004年4月30日(金)「しんぶん赤旗」
大型車のタイヤ脱落による死傷事故で刑事責任を追及されている三菱ふそうトラック・バス(三菱自動車工業から昨年分社、東京・港区)が、一九九九年三月の運輸省(当時)監査時にトラック・バスにかかわる全クレーム(不具合)情報の98%にあたる三千七百九十七件を秘匿していたことが二十九日までに分かりました。
![]() クレーム隠しの「お詫び」がはられた三菱自動車工業の本社ショールーム=2000年、東京・港区 |
同社製大型車の車輪と車軸をつなぐ部品ハブの破損事故は、監査対象の九八年にも四件発生していましたが、二〇〇二年の横浜の母子死傷事故が起きるまで発覚しませんでした。ハブ破損の重要なクレーム情報も隠ぺいされていました。
これは、二〇〇〇年七月に発覚した同社のクレーム隠し事件で、株主が当時の河添克彦前社長らを相手に起こした株主代表訴訟(昨年和解)に原告側が提出した同社資料などから判明したもの。
これによると、九八年一月―十二月の期間に販売店などから三菱自工に送られてきたトラックバス関係のクレーム情報総数は、三千八百三十九件でした。
メーカーは道路運送車両法により、監査時にクレーム情報を運輸省(現国土交通省)に報告することが義務づけられています。しかし、同社は、わずか四十二件(1・1%)しか運輸省検査官に提出していませんでした。
同社は二十年以上にわたって、顧客からのクレーム情報を運輸省の監査時に開示する「P」情報と、秘匿する「H」情報に分ける二重管理を実施していました。
当時の品質保証部門の幹部は「運輸省に秘匿する情報は安全性に問題のあるS分類の情報」と述べています。同社の「S分類」には、S1―S3の三段階があり、もっとも重大なS1は「直接人身事故につながるような安全性に極めて重大な影響を及ぼす不具合」と規定されていました。
秘匿した「H」情報には、安全性に疑問を抱かせる「S」分類がふくまれていたことになります。
三菱自工クレーム隠し事件 顧客から販売店に寄せられたクレーム情報を、国土交通省の監査時に二十年以上にわたって秘匿していることが二〇〇〇年七月、内部告発で発覚しました。道路運送車両法違反(虚偽報告)で同社副社長らが書類送検され罰金の略式命令が出されました。発覚後に同社が届け出たリコール(無償回収・修理)は、トラック・バスを含む六十二万台にのぼります。