日本共産党

2004年4月29日(木)「しんぶん赤旗」

イラク暫定政権来月中に

ブラヒミ国連総長特別顧問が提案

安保理は支持声明を採択


 【ワシントン=遠藤誠二】ブラヒミ国連事務総長特別顧問は二十七日の安保理会合で、イラク訪問を踏まえて作成したイラク国民への「主権移譲」案とそのための暫定政権づくりの構想について報告。五月中に暫定政権の人選を終えて発足させる意向を表明しました。その一方で、イラク各地で米軍による攻撃が行われている現状は「きわめて深刻だ」として米軍の占領体制を厳しく批判しました。

 ブラヒミ特別顧問は、連合国暫定当局(CPA)にとってかわる暫定政権を立ち上げ、選挙管理政権の役を果たすと提唱。大統領、副大統領二人、首相を任命すると表明しました。また、千―千五百人からなる「国民会議」の七月開催にむけて五月末までに準備委員会を設立することを提唱しました。国民会議は、暫定政権を補佐する諮問評議会を選出するといいます。

 イラクでの治安状況についてブラヒミ氏は、「CPAも承知していることだが、対立が平和的に解決されない限り、悲惨な結果となる」と述べ、ファルージャなどの事態の悪化は主権移譲を困難にすると強調しました。

 安保理は同日、ブラヒミ氏の提案を支持する議長声明を採択しました。


米国の占領固執の姿勢

主権移譲に障害

解説

 ブラヒミ特別顧問は、二カ月という短期間の間に主権を占領当局からイラク国民代表に戻すのは「やさしいことではない」としながらも、「実行可能で確かな道筋をつくるためにはほかに方策はない」と語り、主権移譲の重要性を強調しました。五月末までの暫定政権の人選について、ブラヒミ氏は、国連が中心でイラク人自身によるとしました。しかし、現実にはCPAの管理という状況下で行われることになります。

 他方で、ブラヒミ氏がファルージャなどでの攻撃強化を批判し、「こうした状況下で(暫定政権づくりなどの政治的)過程を進めることができるだろうか」と述べて米軍の占領を批判したことは注目されました。米国のネグロポンテ国連大使はすぐに反論しましたが、今後の安保理での激論を予感させます。

 ブラヒミ報告を受けて安保理では新しい決議案をめぐる論議が始まります。米国が提出予定の決議案は、暫定政権の主権を制限するとともに、米軍を中核とする多国籍軍の駐留継続と地位保証などを盛り込んだもの。安保理事国からの反発が出ることが当然予想されます。

 ブラヒミ報告は、ファルージャで米軍が攻撃を加えているときに行われました。暫定政権といい主権移譲といっても、占領に固執する米国が軍事攻撃を続ける状況下では、ブラヒミ氏がいうように「(政治的)過程」を進めるのはきわめて難しいでしょう。(ワシントン=遠藤誠二)


 ブラヒミ国連事務総長特別顧問

 国連を代表し、アナン国連事務総長の代理として各国やイラクの各勢力との交渉にあたり、イラク暫定政府づくりを担当します。ラクダル・ブラヒミ氏は一九三四年生まれのアルジェリア人。フランスからの独立闘争に身を投じ、アラブ連盟事務次長や外相などを歴任しました。二〇〇一年、国連事務総長アフガニスタン担当特別代表に任命。今年一月現職に。


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