2004年4月28日(水)「しんぶん赤旗」
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経済産業省・中小企業庁は二十七日、二〇〇三年度の「中小企業の動向に関する年次報告」(中小企業白書)を発表しました。ここ数年の経済停滞のなかでも中小企業がとりくんでいる革新的で多様な事業を紹介し、中小企業は「産業構造を転換させる原動力」だと指摘しました。
日本の産業構造の多くが縮少傾向にあるなかで、サービス業の事業所が増加しています。その要因として白書は、介護サービスやアロマテラピー(芳香療法)、インターネットカフェなど「ニューサービス」と呼ばれる新しい様態のサービス業に注目。これらは、高齢化やライフスタイルの変化、企業の外部発注やインターネットの普及など、社会の変化と多様なニーズに素早く対応する中小企業が「創出」したものとしました。
また地域でも、女性や定年退職者などが参加している「地域貢献型事業」(コミュニティー・ビジネス)に注目。地域の活性化や雇用、住民の生きがいの創出などを達成しているとしています。
一方、経営者の平均年齢は〇三年に五十八歳を超えているなど、一般社会より急速に高齢化が進行。とりわけ中小企業では大きい「後継者問題」に触れ、小規模企業の廃業は技術・技能の喪失など経済資源の「損失」であるとして、後継ぎが育つ環境づくりを検討しています。
二〇〇三年度の中小企業白書は、長引く不況、産業の構造的激変のなかで、中小企業個々の経営努力による発展・可能性に焦点をあてています。
確かに個々の中小企業の努力は必要です。中小企業は好景気のときも景気悪化のときも、新しいものにとりくまなければ生きていけず、産業構造転換の「原動力」役を果たしてきました。これらのとりくみへの激励・支援も必要です。
同時に、大手製造業企業による海外生産の強化、それにともなう国内生産の減少や下請け企業への低単価押し付け、商業・サービス業界での不公正取引の押し付けなど、中小企業の経営環境を悪化させている問題も重大です。白書はこれに触れていません。これは一九九九年の中小企業基本法改定の精神に沿っているからです。
同改定は大企業と中小企業の格差や、中小企業が不利益を被りやすい大企業との関係に視点を置くことをやめてしまいました。そのため近年の中小企業白書では、中小企業の経営環境をとりまくおおきな状況が見えません。
個々の新しいとりくみや経営継続に必要な金融支援をさせなくしてきた小泉政権の「金融改革」、グローバル(地球規模)企業への支援一辺倒の経済政策の転換も必要です。大小島美和子記者