日本共産党

2004年4月26日(月)「しんぶん赤旗」

キプロス住民投票

トルコ系住民は統合賛成

拒否のギリシャ系がEU加盟へ


 【パリ=浅田信幸】キプロスで二十四日、三十年間の分裂に終止符を打つか否かを問う住民投票が実施され、国連が提示した統一案にトルコ系住民が賛成したものの、ギリシャ系住民は拒否を表明。この結果、統一案は採用されないことになり、ギリシャ系住民のキプロス共和国だけが五月一日、欧州連合(EU)に加盟することになりました。

 最終結果は、キプロスの多数を占めるギリシャ系住民(約七十一万人)の間で国連案に「反対」が75・83%、他方トルコ系住民(約二十一万人)の間では「賛成」が64・9%を占めました。

 投票結果について、キプロス共和国(ギリシャ系)のパパドプロス大統領は、国連案に「反対」のキャンペーンを行ったものの「キプロスの統一をめざしてともに活動する」ことを呼びかける声明を発表しました。他方、国際的な認知は得ていない「北キプロス・トルコ共和国」のデンクタシュ大統領は、国際社会に対して統一を「強制」しないよう呼びかけました。

 住民投票は、キプロス両国が統一してEU加盟を果たす最後の機会にあたり、国連が仲介して統一案を提示。しかし両国の指導者の合意は得られないまま住民に賛否を問う形となりました。

 国連案は、両民族の共同体のそれぞれに強い独立性を持たせた連邦国家とし、人口比に近づけて北の領地の一部を南に編入する一方で、七四年のトルコによる侵略で北から南に避難した難民の帰還に制限を設けることなどを提案していました。

 ギリシャ系住民の間では、北から南への領地の編入部分が少なく、統一してEUに加盟しても域内で原則とされる人の移動の権利(難民の帰還権を含む)が制限されることなどに、強い不満が出ていました。


南北分断さらに長期化へ

解説 国連の統一案が否決されたことで、キプロスの分断はさらに長期化しそうです。

 キプロスの欧州連合(EU)加盟前の問題解決を課題にしていた欧州委員会は「キプロス問題を解決する唯一の機会が失われた」と失望を表明しました。国連や米国も一様に失望を表す声明を出しました。

 統一案を提示したアナン国連事務総長は投票前に、「この解決策か、それとも解決しないのかの選択」しかないと指摘。否決された場合は「予見される将来」において別の解決策を提起して交渉することはありえないとの見方を示していました。国連は住民投票の結果を受けて、ニコシアにある国連和平特別代表部の事務所閉鎖を明らかにしました。

 一方、「拒否」を表明したギリシャ系住民とは逆に、トルコ系住民が「賛成」の立場を明確にしたことで、現在トルコ以外のどの国からも認知されていない「北キプロス・トルコ共和国」の国際的地位にも変化が起こる可能性が生まれています。

 北キプロスは、七四年のギリシャ系民族右派によるクーデターをきっかけにトルコが侵略し、全島の36%にあたる北部分を占領。八三年、トルコ系元副大統領のデンクタシュ氏が一方的に独立を宣言したもの。しかし国際社会はトルコを除いて同「国」を承認せず、国連はほぼ全面的な禁輸措置を敷いています。外国からの投資も見込めず、住民一人当たりの国内総生産(GDP)は、南のキプロス共和国の二分の一です。

 EUのパッテン対外関係担当欧州委員は、投票結果を受けて、北に対し「経済的孤立から抜け出す策」を提案することを表明しました。

 またギリシャ本国でも与野党がそろって、「トルコ系キプロスが国際的な認知を得ようとすることは当然ありうる」などの見方を明らかにしています。

 (パリ=浅田信幸)


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