日本共産党

2004年4月17日(土)「しんぶん赤旗」

イラクは全土が戦争状態

米軍占領の協力者として

自衛隊駐留続けていいのか


 米占領軍によるイラク中部ファルージャにたいする報復的な軍事作戦を契機に、深刻な状況を迎えているイラク情勢。自衛隊は、その無法な占領に協力者として加担している―。イラク国民からもそうみられ、撤退を求める声が上がり始めました。もともと憲法をふみにじって強行された自衛隊のイラク派兵を、このまま続けていいのか、いま、根本から問われています。


NGO、報道機関相次ぎ撤退

 四月以降、すでに九十人近い米兵が死亡し、占領軍に参加している複数の国が撤退を表明するなど、イラク全土は戦闘状態にあります。

 米軍がイラク中部・ファルージャでの掃討作戦を開始した五日以降、在イラク日本人は激減(グラフ参照)。昨年八月からバグダッドで学校修復を行ってきたNGO(非政府組織)のひとつJEN(ジェン)は、今月七日以降、治安悪化のため活動を全面休止。日本国際ボランティアセンター(JVC)も、バグダッドの日本人スタッフをヨルダンに一時退避させる方針を決めるなど、民間団体による人道援助ができない状態になっています。報道機関も相次いで退避しています。

 イラク特措法では、自衛隊の活動は「非戦闘地域」に限定され、かつ安全に配慮するとしています。そもそも、「非戦闘地域」の存在そのものが虚構だと批判されていましたが、四月以降の劇的な情勢悪化で、イラク特措法に照らしても、派兵をつづける根拠は崩れています。

グラフ

 こうした事態に陥ったのは、米軍によるファルージャでの無差別殺りく行為です。イラク全土に抵抗運動が広がり、統治評議会も辞任が相次ぎました。日本共産党の志位和夫委員長は、十四日の党首討論で「国際人道法をも無視する戦争行為にたいしては、『支持できない』という立場をとるべきだ」と迫りました。自民党内にも米軍の行動に異論が相次いでいます。(別項)

 それでも政府は、自衛隊は「イラク人のために活動している」から「撤退する理由がない」(福田康夫官房長官)との立場を変えていません。

 しかし、米国の侵略戦争と占領が復興支援の大きな障害になっているのが実情です。国連のアナン事務総長は八日、イラクでの暴力の拡大に「重大な懸念」を表明。十三日には、「不安定な状況」を理由に「大規模な国連チームを派遣することはできない」とのべました。国際赤十字も昨年十月に活動停止に陥り、いまだ再開できていません。

 こうした事態をつくりだした米国の無法行為を支持し、加担していいのかが問われています。

司令部に参加、武装兵輸送

 イラクで活動する自衛隊が、米占領軍への協力者として駐留しつづけたらどうなるのでしょうか。このことを考えさせられる事態がすすんでいます。

 八日には航空自衛隊の津曲義光幕僚長が会見し、クウェートを拠点に活動する空自のC130輸送機部隊が、武器を携行した連合軍兵の輸送を実施していたことを認めました。防衛庁によれば、空自のC130輸送機は、日本からの物資や、各国・関係機関の物資・人員、陸自部隊への補給物資などの輸送を、五日までに十八回実施しています。

 ファルージャへの掃討作戦などイラク国民の怒りに火をつけた米軍の作戦が展開しているなか、自衛隊は各種の占領軍司令部機構に連絡幹部を派遣しつづけています。イラク・バグダッドにある第七連合統合任務軍(CJTF7)司令部、同バスラの多国籍師団(南東部)司令部などです。

 たとえ、ファルージャでの作戦に参加していなくても、米軍と一体とみられることは必至です。

 現地で人道支援活動を展開する非政府組織(NGO)は、かねてから「米軍と同じくイラクを占領するための活動を行っているかのごとき印象を与える可能性が高い」「日本国旗をつけた軍服を着た人々が活動することは、現地における日本に対する感情を悪化させかねない」と警告していました(JENの「自衛隊派遣に対する意見書」昨年十二月)。その警告どおり、自衛隊の活動実態が明らかになるにつれ、イラク国民の反発は強まっています。

 自衛隊がこのまま占領軍の一翼として駐留をつづければ、自衛隊がイラク国民に銃口を向ける事態に足を踏み入れることになりかねません。いまこそ勇断をもって自衛隊を撤退させるべきです。


自民内からも米軍統治に疑問

 自民党からも、アメリカによるイラク統治への疑問の声があがっています。

 「国連を中心とした国際協調が必要だ」「米国による武力行使もできる限り抑制される必要がある。『目には目を。歯には歯を』というやり方では問題は収まらない」(十六日、河野洋平衆院議長)

 「(反米勢力と米軍の)双方が本来なら禁じ手であるはずのものを超えてしまった。モスクや宗教指導者を狙った攻撃は問題だ」(十五日、橋本龍太郎元首相)

米追随、最も目立つ日本

 中東調査会の大野元裕上席研究員

 「スペインがイラク駐留部隊の撤退を表明した今、米国に追随してきた国として最も目立つのは日本だ」(「東京」十三日付)

 自民党の久間章生幹事長代理

 「日本は戦争終結後に自衛隊を派遣したが、イラク人からは、日本は米国の手先とのレッテルを張られてしまっている」(「東京」十四日付)

イラクの聖職者は…

自衛隊でなく一般の人々の支援を

 NHKによるイラク・イスラム聖職者協会のクベイシ師へのインタビュー

 イラク国民と日本の人たちは、ずっと良い関係を続けていかなければなりません。悲しいときもうれしいときも、同じ考えでいなければなりません。

 日本の人々は、ずっと戦争に反対してきました。自衛隊は、海外に出てはいけないはずです。それなのに、イラクにやってきました。自衛隊ではない、一般の人々による支援がイラクにとって一番なのです。こうした良い援助による印象が、自衛隊の派遣によって傷ついてしまうことは、残念なことです。(十六日に放映。NHKの同時通訳から)

日本に派兵する権利はない

 中東の衛星テレビ・アルジャジーラが放映した討論番組でのシーア派聖職者の発言

 一言いわせてください。私たちは人質、とくに日本人の人質の解放を求めていますが、だからといってアメリカの圧力に屈して、イラクに派兵をした日本政府の立場への批判をやめたわけではありません。日本人はヒロシマに原爆を落とされて、いまでもアメリカをおそれているのです。そうだとしても、イラクに派兵する権利はありません。たとえ、人道支援のためでも、ダメなものはダメなのです。(十三日に放映。NHKの同時通訳から)



もどる
「戻る」ボタンが機能しない場合は、ブラウザの機能をご使用ください。

日本共産党ホームへ「しんぶん赤旗」へ


著作権 : 日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 Mail:info@jcp.or.jp