日本共産党

2004年4月10日(土)「しんぶん赤旗」

イラク“撤退を視野に対応を”

日本人拘束 家族が政府に要請


 「自衛隊の撤退がなぜ救出の選択肢に入らないのか」――。イラクで人質として拘束された今井紀明さん(18)、高遠菜穂子さん(34)、郡山総一郎さん(32)の家族が九日上京し、外務省に自衛隊の撤退を視野に無事解放を最優先して対応するよう求めるとともに記者会見で、切実な思いを語りました。

 上京したのは、今井さんの父隆志さん(54)、母直子さん(51)、高遠さんの弟修一さん(33)、郡山さんの母きみ子さん(55)ら。外務省で川口順子外相らと面会した一行は、「早く解決してほしい。自衛隊はなぜ撤退できないのか」などと訴え、小泉首相への面談を申し入れました。川口外相は「最大限の努力をしたい」とのべるにとどまりました。

 家族は同日午後、国会近くの北海道東京事務所で記者会見。

 「人質を焼き殺すというなら代わってやりたい」という今井隆志さんは、「なんとか無事で帰って来てほしい」と沈痛な表情で訴え、直子さんも「残る時間が二日。生きて帰ってもらうには一時撤退をお願いするしかない」と声を詰まらせました。兄の洋介さん(23)は、「弟は遊びで行ったのではない。生半可な気持で行ったとは思わないでください」と唇をかみ締めました。

 郡山きみ子さんは「子どもが生きたまま焼かれる…。耐えられないです。皆さんの力添えをよろしくお願いします」と泣き崩れました。「母親だったら同じ気持ち。イラクのテレビで親の気持ちを流してほしい」と訴えました。

 「要求はただ一つ。自衛隊を撤退してほしい」と強調した郡山さんのいとこ、三浦道さん(31)。「三人を助けるなら撤退することはできないのか…。協力をお願いします」と頭を下げました。

 高遠修一さんは、川口外相との会談について「全力での救出には程遠い」といらだちを隠しません。「やれることはすべてやってほしい。すべてやるつもりで東京に来ている」と思いを語りました。 小泉首相が自衛隊撤退の意思がないと表明したことに同日夜の会見で、三浦道さんは「実際どう思っているのか、会って話したい。人命を第一に考え対応してほしい」とのべました。


小泉首相「撤退しない」

 小泉純一郎首相は九日昼、首相官邸で記者団に対し、イラクで日本人三人が人質にされた事件について、「三人の無事救出に全力を尽くす」とのべつつ、「自衛隊を撤退させる考えはあるか」との問いに「ありません」と、撤退させない方針を明言しました。

 首相は「犯人グループがいう三日間の期限を迎えて人質が救出されない場合も同様か」「万が一の事態となっても撤退させない方針か」とも問われましたが、「早く救出されるように全力をあげる」「万が一がないように努力しなきゃいけないと思う」とのべるにとどめました。


家族の発言要旨

 イラクで拘束され三人の家族の発言要旨は以下の通りです。

 【今井紀明さんの父隆志さん】

 息子が無事で帰ってきてくれることを切に願っている。遊びに行ったわけではなく、人道支援をしようと、イラクのことを考えて不安ながらも出かけて行った。川口外相との話の中で、撤退も選択肢に入らないかという話をしたら、「伝えます」と言って終わってしまったのが残念です。とにかく無事に帰ってきてほしい。

 【今井さんの母直子さん】

 あと二日しかありません。息子が元気で帰ってくるためには首相が考えている、撤退を考えないと言うことでは助かる見込みはありません。三人が元気で生きて帰ってくるには、一時撤退でもお願いするしかない。生きて戻り、元気な姿を見たい。

 【今井さんの兄洋介さん】

 弟は、まだ十八歳です。大切な命です。三人とも生きたまま、焼かれてしまうのは悲しい。「兄貴、ただいま」と帰ってきてほしいし、残りの二人も無事に帰ってきてほしい。皆さん応援してください。生半可な思いで行ったとは思わないでください。

 【郡山総一郎さんの母きみ子さん】

 言いたいことは一言です。自分の子どもが、生きたまま焼かれると言うことは本当に耐えられないこと。三人を助けてください。皆様の力をお借りしたい。イラクの人も、子どもを亡くした思いを分かっていると思うので、この親の気持ちを伝えてほしい。

 【郡山さんの伯母三浦紀代子さん】 イラクの写真を撮りに行った時も、イラクの子どもたちのことをよく話していた。わたしたちにはどうにもできない。

 【郡山さんのいとこ三浦道さん】

 多くの人にお願いするしかない。三人が無事に帰ってくることを願っている。もうあと二日しかありません。要求していることは、ただ一つ。撤退です。迷惑をかけていますが、協力をお願いします。

 【高遠菜穂子さんの弟修一さん】

 身勝手といわれてしまえば仕方ないが、見捨てないでください。手を差し伸べてください。政府は、全力で尽くしてくれると約束してくれました。しかし、残念ながら私たちの思いからはほど遠い。ぜひ、やれることをやってほしい。われわれもその思いで東京にやってきた。首相に伝えたいことは、自衛隊撤退をなぜ選択肢から外してしまったのか。外してしまったらいくら全力を尽くすといっても話になりません。


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