2004年4月1日(木)「しんぶん赤旗」
田中真紀子前外相長女の私生活に関する記事をめぐる『週刊文春』出版禁止問題で、東京高裁(根本真裁判長)は三十一日、「記事はプライバシー侵害だが、事前差し止めを認めなければならないほどの回復困難な損害を与えるとまではいえない」として、東京地裁の出版禁止仮処分決定を取り消しました。
また、「憲法で表現の自由は最も尊重されなければならない権利」と言及し、差し止めには極めて慎重な対応が必要であるとの考えを示しました。
東京地裁は「長女は私人で、報道に公益目的はない」と認定。「長女側が重大で回復困難な損害を被る恐れがある」として、仮処分追認の決定をしていました。
これに対し、東京高裁はまず、長女について「将来の可能性はともかく、現時点では私人にすぎない」と指摘。「記事は全くの私事を暴露したといえる」として、プライバシー侵害を地裁同様に認めました。
その上で、表現の自由の重要性に触れ「事前差し止めを認めるには慎重な上にも慎重な対応が要求されるべきだ」と判断。今回の記事によるプライバシー侵害の内容や程度に照らし、著しく重大な回復困難な損害の恐れがあるとはいえないと結論付けました。
長女側の弁護士は最高裁に特別抗告などを申し立てる方針。