2004年3月27日(土)「しんぶん赤旗」
ドイツではドイツ共産党(DKP)などの左翼勢力が大企業の中でも労働者の利益を代表してたたかっています。カブトムシの愛称の車で知られたフォルクスワーゲン社はドイツでも有数の自動車会社。従業員六千七百人のニーダーザクセン州ブラウンシュワイク工場では同党の党員が労働者を代表する事業所評議会の議長を務めています。同議長のウベ・フリッチェ氏に話を聞きました。(ブラウンシュワイク=片岡正明 写真も)
フォルクスワーゲンのブラウンシュワイク工場では全従業員六千七百人の利益を守るために三十三人の事業所評議会委員が選出されています。うち私を含む三人が共産党員です。同評議会の選挙はドイツ金属産業労組(IGメタル)とキリスト教民主同盟(CDU)系の労組で争われますが、IGメタルから三十人、CDU系から三人が選出されています。ドイツ共産党の候補者はIGメタルの統一名簿の中に入って選挙活動をおこなっています。
ドイツでは第二次大戦後、労組の中では共産党も社民党も意見の違いを置いて統一して労組をつくっています。
これは戦前、共産党系労組、社会民主党系労組と分かれていたことが労組の力を弱め、ナチスの台頭を許した教訓に基づいています。分裂していたため、労組の中にいた共産党員も社民党員もナチスの強制収容所に送られたのです。
このため、労組の中では、共産党員も差別なく同じように活動できます。もちろん、反共の風潮はあり、共産党員だと分かるとなかなか大企業には就職できません。しかし私の場合は両親が共産党員で、私自身も青年時代からドイツ共産党の青年組織で活動していたにもかかわらず、一九八二年にフォルクスワーゲンに就職できました。八五年にこの工場で三百三十人いる労組の職場代表の一人となり、八七年から事業所評議会委員、二〇〇二年に事業所評議会の議長になりました。
企業での労働者は党派にかかわりなく、誰が自分たちの利益を一番守ってくれるのかを基準に事業所評議会委員を選んでいます。労組や事業所評議会で、賃金や労働条件などの労働協約、あるいは工場の人員削減問題などで活動する共産党員を労働者は見ているのです。
職場でのいやがらせ、賃金や労働条件のこと、労働者への親身になった相談が積み重なって、労働者の信頼を勝ち取ってきました。
共産党独自の活動は、企業での労働条件をはじめ、年金など全国的な問題全体にかかわるテーマで常に解決方法を示してきたことです。私たちブラウンシュワイク工場の党員グループは交代勤務の合間をぬって三週間か四週間に一度は会議を開き、職場の状況を分析します。また、職場のことから平和・戦争のことまで私たちの意見を載せた新聞「ローテ・ケーファー」(赤いカブトムシ)を六週間から八週間に一度発行し、門前で配っています。ただし、党員の企業外での政治活動は自由ですが、企業内では法律で禁止されているため注意が必要で、大きな課題になっています。
工場の外では私自身、何回か市議会議員に立候補しましたが、当選はしませんでした。
ドイツ企業で働く党員の活動は、企業内で労組の一員として従業員の利益のために尽くし、企業外では党の宣伝活動を公然とおこなうという二つがあります。企業内で労組の代表、事業所評議会委員として長い時間をかけて信頼を勝ち取っても、なかなか市議会などの選挙では変化が目に見えるところまではいきません。メディアの影響力が強く、朝に労働者を説得しても夕方にはもとにもどっているということもありました。しかし、私たちの活動には科学的な基礎と国際連帯があり、これからがチャンスだと思っています。