2004年3月20日(土)「しんぶん赤旗」
田中真紀子前外相の長女の私生活に関する記事をめぐる『週刊文春』出版差し止めの仮処分決定について、東京地裁(大橋寛明裁判長)は十九日夜、「長女側が重大で回復困難な損害を被る恐れがある」として、文春側の異議を退け、差し止めを認める決定をしました。
文春は決定を不服として、二十日に東京高裁へ抗告します。
決定はまず、プライバシー権について「広く知られた後では回復不可能。謝罪広告で回復できる名誉権よりも、事前差し止めの必要性が高い」と指摘しました。
続いて、長女の立場に言及し「著名な政治家の親族でも、具体的根拠なしに私生活に公共性を認められない。長女は純然たる私人で、報道に公益目的は認められない」と判断しました。さらに「知られたくない情報を公表しないように求めたのに、毎週数十万部発行の媒体に暴露されると、精神的衝撃を受ける恐れがある」と結果の重大性を指摘しました。
その上で、長女側の不利益と、出版差し止めによる文春側の不利益を比較。「表現行為の価値は、プライバシーに劣るのは明らかだ」と述べ、差し止めを是認しました。
仮処分決定前に七十四万部が出荷され、店頭で販売されましたが、「決定は書店が読者に販売することを禁じていない」として、差し止め対象外としました。
長女側は、出荷分が店頭で売られたとして、文春に制裁金支払いも申し立てましたが、同地裁の金子直史裁判官は、文春が二十日以降、問題の記事を削除せずに出荷した場合、長女側に一日当たり百三十七万円を支払うよう命じました。