日本共産党

2004年3月16日(火)「しんぶん赤旗」

「イラク撤兵」の野党勝利

スペイン総選挙

対米追随外交に審判

平和への思い燃やし 国民は「変化」望んだ


 「国民は変化への政府を選んだ」イラク戦争に協力・加担した国民党の敗北、戦争加担を批判し、イラク撤兵を掲げた社会労働党が勝利し、スペイン政治の逆転が明らかになった十四日深夜。スペイン社会労働党の党首で、次期首相につくと目されているサパテロ氏は、こう勝利を宣言しました。マドリードで浅田信幸記者

 今回の選挙は投票日の三日前に国際テロ組織アルカイダの犯行とみられる列車爆破テロが発生、二百人の死者と千五百人にのぼる負傷者が出て、国民が深い衝撃を引きずる中で実施されました。この事件で最終盤の選挙キャンペーンも全面的に停止される異例の事態でした。

 十四日投票を終えたマドリードの市民は、残虐なテロへの怒り、犠牲者への追悼の思いのなかで、自分たちが選んだ政治の変化をそれぞれに実感していました。

 多数の犠牲者を出した鉄道駅の一つエルポソ駅に近い投票所はじめ市内の多くの投票所のそばには、「パス(平和)」と書いたカード。そのそばを黒っぽい服装に身を包んで投票所に入って行く市民の姿が印象的でした。

 「実は投票はしまいと思っていた」という男性は「だが、今度の事件で決めた。国民党は今度のテロとイラクでの殺りくの責任を負うべきだ」といいます。「初めての選挙。政治を変えなければ。イラク戦争をやめさせるためにも」と語る若者もいました。

上昇した投票率

 「棄権しようかと思っていたが…」という人びとの考えが大きく変わり、投票率は77・21%と大きく上がりました。それがおそらく与野党逆転の理由です。

 テレビは国民党のアスナール首相夫妻の投票の様子を放映しました。そこには、首相支持を叫ぶ市民の姿の一方で、抗議する大勢の市民が映し出されていました。同首相は市民に向かって「演説」しようとしましたが、「うそつき」「隠謀家」「平和を」の声に立ち往生する始末でした。

 「アスナール支持」という人も少なくありません。三割をこえる国民党の得票率はそれを示しています。しかし、今回の選挙結果にあらわれたスペインの有権者の審判は、侵略戦争に加担した政府にたいする「ノー」でした。

 それは偶然の結果ではなく、投票日直前の残虐なテロ故の出来事ということではないでしょう。 一昨年から昨年にかけて、イラク戦争に反対する市民の行動は他のヨーロッパ諸国同様、マドリードなどスペインの諸都市を揺るがし、世論調査では九割近い市民が戦争反対の意思表示をしてきていました。

国際的にも意味

 イラク侵略戦争への加担と派兵は、そうした国民の声に背いた行為でした。今回の選挙結果はまさに、そうした裏切りの政治にたいする国民の決断です。国際的にもきわめて大きな意味をもつ判断をスペイン国民は下したのでした。

 米国の要請を受けて千三百人の部隊を派遣したスペイン。

 真偽は不明ながら国際テロ組織アルカイダによる列車爆破の「犯行声明」は、この事実を犯行理由にあげていました。国民党の対米追随姿勢が大惨事を招いたとの感情が大きく広がったこと、これが結果に如実に示されました。

 同時に、有権者の投票行動は、テロへの怒りや感情に左右されたからだけではありませんでした。

 テロ事件の直前まで、世論調査では国民党が一貫して優位にあり、その理由として欧州でも抜き出た経済成長率、八年間の統治期間に失業率を22%台から11%台へと半減させたことが指摘されていました。

 しかしその半面、短期契約(多くが一カ月)の不安定雇用が就業者全体の30%に達する異常な労働市場、不動産バブルにより十年間で二倍になった住宅費の高騰、保育所など社会政策面での立ち遅れが指摘されていました。

 有力紙エルパイス十日付は、二十八歳以下の七百万有権者(全体の20%)の動向に注目しています。同紙によると、この世代の関心は(1)失業(2)戦争(3)テロの順であり、近年では、昨年のイラク戦争反対をはじめ、重油流出事故での抗議行動やボランティア活動への参加などで、青年の意識が以前と大きく変わってきているとのべています。

 こうした底流があったからこそ生まれた「変化への期待」であり、国民党の敗北といえるでしょう。

 一方、勝利した社会労働党は、昨年のイラク戦争後の五月いっせい地方選挙で前進しながら、党内「造反者」のために一度手中に収めたマドリード県政を再選挙で手放す失態を演じ、その後の中間地方選挙では後退続きでした。党首のサパテロ氏の指導力にも多少の疑問符がつくとの報道もありました。しかし選挙キャンペーンを進めるなかで、現実的な政策を提示し「信頼性を増した」(エルパイス紙)との評価も生まれています。

公約実践に期待

 同党は、イラク占領軍に派遣されている部隊の撤退を公約に掲げ、青年層に「変化へのボランティア」になるよう訴えて着実に支持を広げていました。テロ事件とも関連してこの公約実践がまず期待されます。


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