2004年3月13日(土)「しんぶん赤旗」
【マドリード=浅田信幸】十一日のマドリード列車連続爆破テロ事件で、スペイン政府が強調するバスク分離独立派組織、バスク祖国と自由(ETA)の犯行説とは異なり、アルカイダ犯行説が大きく浮上。十五日投票の総選挙の行方にも微妙な影響を及ぼす可能性が生まれています。
AFP通信によると、ロンドンで発行されているアラビア語紙アルクッズアルアラビのドバイ支局は十一日、「アブハフス・アルマスリ旅団/アルカイダ」の署名がある声明文を受け取ったとして全文を公表しました。
声明文は「欧州十字軍の心臓部に浸透し、十字軍同盟の主柱の一つ、スペインに深刻な打撃を加えることに成功した」とのべ、列車爆破テロを「反イスラム戦争での米国の同盟国、十字軍スペインとの古い勘定を精算したものだ」としています。同声明文が本物かどうかは確認されていません。
政府は当初、ETAの犯行と断定していました。十一日のテロ非難の安保理決議はスペイン政府代表の強い主張でETAの犯行としています。しかし、同決議の採択はアルカイダ系とみられる組織の犯行声明のニュースが流れた後でした。
アスナール首相は十二日、マドリードでの記者会見で「いかなる捜査方向も排除しない」とやや軌道修正の姿勢を表明。前日にはアセベス内相が、爆破された一列車の始発駅近くで、コーランの章句を録音したアラビア語のテープと七つの起爆装置を積んだ盗難車を発見したことを発表し、「ETA犯行説はなお主要な捜査方針だが、他の可能性も排除しないよう指示した」ことを明らかにしていました。
ETAの政治組織バタスナが犯行を否定する声明を発表したこと、また過去の犯行手口とは異なる無差別同時多発テロであり、常習としていた事前警告がなかった事実などから、疑問の声も上がっていました。
ETAの犯行であれば、選挙では、そのテロとのたたかいで最も強硬な姿勢をとってきた国民党に有利にはたらくとの見方が強いようです。しかしアルカイダ犯行説が有力になれば米ブッシュ政権のいう「テロとの戦争」論に無批判に追従したアスナール政権の姿勢が批判の的となる可能性も否定できません。
当地の各紙は犯人が誰であるかによって十四日投票の選挙が左右されると指摘。エルムンド紙は「重要なことは、事件の全容とその証拠をすべて明らかにし、この虐殺の犯人が誰かをスペイン国民が知った上で投票所に行けるようにすることだ」と社説で主張。
「イスラム狂信者の犯行だとすれば、国民の過半数の意思を無視してイラク戦争でスペインが果たした役割に目を向けざるを得なくなる」とのべています。