2004年3月13日(土)「しんぶん赤旗」
【ロンドン=西尾正哉】キューバのグアンタナモ米海軍基地に拘束されている英国人九人のうち五人が九日、帰国しました。五人は全員、無罪で釈放されました。司法上の権利を否定した上に非人道的な扱いをしてきた米軍当局に新たな怒りが広がるとともに、「米国の『同盟国』にもかかわらず自国民の権利も守れない」ブレア政権への批判が強まっています。
「彼は、残酷で非人間的かつ自尊心を傷つけるような扱いを受けた」
帰国後すぐに釈放されたジャマル・アル・ハリフさん(37)の弁護士は厳しく指摘。同じく釈放されたルヘル・アーメドさん(21)の父親は、「私の息子を動物のように扱ってきた。おりの中に二年間、弁護士にも会わせず拘束してきた」と怒りに震えて語りました。
二年以上も勾留され続け、結局はなんの罪状もみつからなかったことで、勾留者の家族、人権擁護団体などから「無実の英国民を自由の身にするのにどうして二年もかかったのか」と、英政府への怒りがさらに高まっています。
米軍はアフガニスタン戦争や「対テロ戦争」で拘束した兵士らをグアンタナモ基地に収容してきました。拘束者は四十カ国以上の国籍をもつ六百四十人にのぼります。米政府は「敵の戦闘員」だと勝手に規定し、国際条約で権利を保障された「捕虜」として扱ってきませんでした。
人権団体などが米政府を批判し抗議。英法務長官は、グアンタナモで拘束されていた際の証言、証拠は英国の司法では採用されないことを認めています。
インディペンデント紙十日付社説は、「英政府は最も緊密な同盟国に対しグアンタナモの問題で何の影響も与えることができなかった。これは(ブレア政権が強調してきた米国との)『特別の関係』が内容のないものであることを示した」と指摘しています。