日本共産党

2004年3月10日(水)「しんぶん赤旗」

ビラ配布弾圧事件、野党外交と

六カ国協議、イラク問題について

CS放送朝日ニュースター  志位委員長語る


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CS放送・朝日ニュースター「各党はいま」で、早野朝日新聞編集委員(右)のインタビューに答える志位和夫委員長

 日本共産党の志位和夫委員長は九日放映の朝日ニュースター(CS放送)の番組「各党はいま」に出演し、ビラ配布弾圧事件、チュニジア大使主催の懇談会、北朝鮮をめぐる六カ国協議、イラク問題について語りました。その大要を紹介します。聞き手は、早野透・朝日新聞編集委員。

人権と自由への不当弾圧を許さない

 早野 共産党が非常に怒っている最近の事件ですね。「しんぶん赤旗」号外を配って、国家公務員法で逮捕されたと。これはどういうふうに志位さんたちは…。

 志位 逮捕された方は社会保険庁に勤める男性ですけれども、昨年の総選挙のおりに「しんぶん赤旗」号外を配ったと。(それを理由に)国家公務員法違反の容疑で逮捕され起訴までされた。これはほんとうに異常な不当弾圧です。

 もともと国家公務員法自体が、公務員の政治活動の自由を人事院規則で広範に制限する仕組みになっている。違憲性の強いものです。しかし、今度の事件は、その国家公務員法をもってしても、男性が住んでいた居住地で日曜・休日に、一市民としてビラを配ったというだけのことであって、弾圧の理由にはできない。それを逮捕する、しかも選挙から四カ月もたったいまになって逮捕する、自宅や日本共産党の千代田地区委員会の大規模な捜索をやって、重大な犯罪人のように扱う―これは、日本共産党を標的にした許しがたい政治弾圧です。不当な起訴の取り下げを求めるとともに、かりに裁判になればかならず無罪をかちとりたい。

 市民がビラをまいただけで逮捕されて、捜索されることがまかりとおったら、日本は暗黒社会に逆戻りします。フランスの法律家団体も「最大限の驚き」をもって聞いた、「国際的な人権のルールに反することで許されない」という声明を出していますが、それぐらい異常なことです。

もともと違憲の立法だが、その法律でも「違法」扱いしてこなかったもの

 早野 公務員の政治活動というのは国それぞれで決め方があるんでしょうけども、六法全書を調べてみると、形式的には非常に広範にダメだとしばられる、投票以外だめだというような、書いてある気がして。形式的には事件としてはひっかかっちゃうんですか。

 志位 そうとはいえません。もともとこの法律がいつできたかというと、(戦後)占領軍が全権を握っていた時代に、公務員の政治的権利を不当にはく奪すると、そういうなかで無理やりつくられたものなのです。占領の遺産として残っているものです。

 早野 それは歴史的事実ですね。

 志位 ええ。その国家公務員法の一〇二条と人事院規則にたいする違反だということで逮捕したわけですが、(この条文は)憲法との関係があるから、政府のこれまでの運用指針でも、状況に応じて具体的に判断して対応すべきとしていて、ビラの配布を「違反」扱いなどしてこなかった。

 早野 昔学校で習ったときも、こういう政治活動の制限は抑制的に解釈すべきだ、と習った気がします。

 志位 政府ですらそういってきた。だいたい、国家公務員法をふりかざすわけですが、自民党は何をやっているのか。国家公務員の地位を利用して、ほんとうに許されない省庁ぐるみ選挙を平気でやっているわけでしょ。それを野放しにしておいて、一市民としての自由な政治活動を弾圧するとは、政治的な意図をもった卑劣なやり方です。

 早野 戦後も非常に市民社会も成熟してきて、市民としての活動と職業人としての活動と明らかに分けて考えていいことになってきているはずなんですけども。何でなんですかね。四カ月もたって。

日本共産党の正論が広がることを恐れての卑劣な政治的弾圧

 志位 やはり日本共産党の正論が広がるのを恐れて、不当な弾圧によって足を止めるということをねらってのものでしょう。

 早野 東京都下で別の市民運動の人たちがイラクへの自衛隊反対のビラを自衛官の住宅に投げ入れた(だけで逮捕された)。

 志位 これも異常なやり方で(逮捕は)許されないことだと思います。

 早野 スーパーのチラシを配っているのと同じ形態なので私もどうなっているのか、という気がしているのは事実です。

 志位 (日本共産党は)イラク派兵でも憲法改悪でも(間違った政治に)立ちはだかっている党だと。この邪魔者に打撃をあたえると、そういう政治的意図があるとしかいえない。これにたいしては党を前進させて回答をつきつけようと。

 早野 私たちは市民的な自由という観点から、政治活動の自由や思想信条の自由が脅かされるというのは何より大変なことだと思いますので、注目していきたいと思います。

 志位 おっしゃられるように、市民的自由を奪われることについては反撃をしていかなければならないと思います。これは党派の違いをこえて、おおいに協力していきたいと思います。

チュニジア大使主催の懇談会について

 早野 もう一つ、共産党の話題なんですけども、最近大きかったのは共産党外交というべきか、チュニジア大使が不破さんと志位さんを招いて、八カ国の中東・アフリカの国と一席をもうけ、いろいろと懇談をしたと、こういう話ですね。なんでああいうことになるのですか。

日本共産党の原則的で先駆的な立場への評価

 志位 これは、三年半ほど前に、ベンヤヒアさんというチュニジアの外務大臣が来日されたときに、不破議長が懇談したことがあったのです。そこでとてもいい話ができた。つづいて不破議長が昨年夏、チュニジアの立憲民主連合という与党の大会に招待されて、そこでチュニジアの政府・与党のみなさんと親しくおつきあいする機会がありました。そしてこんどの私たちの党大会に、チュニジアは与党の代表団を派遣してくれ、大使も参加してくれました。そういう関係があって、チュニジアとの交流がすすんできたんです。

 早野 仲良くなっちゃったんですね。むこう(チュニジアの党)も共産党というわけじゃないでしょ。

 志位 ええ。それでも日本共産党のとっている立場の一貫性を評価してくださった。夕食会では、まずチュニジアの大使から歓迎のあいさつをいただいたんですけれども、「ベトナム、アフガニスタン、北朝鮮、パレスチナ問題などで日本共産党が原則的で先駆的な立場をとっていることに注目し、敬意をもっている」ということをおっしゃった。つまり国際問題について非常に幅広い見識をもった党として、私たちのことを評価してくださって、そういうなかでいろんな話題がありましたけれども…。

イラク周辺諸国外相会議では「占領軍撤退」の要求も

 早野 やはりイラクの問題なんかは当然、一番、中心的テーマでしたか。

 志位 イラクの問題も話し合いました。それはやはり、たいへん切実な問題で、集まられた大使はアフリカと中東でしたから…。

 早野 隣国ヨルダンもたしか入っていましたね。

 志位 ええ。ヨルダン、レバノンの大使もおみえになりました。隣国ということでは、二月十五日に、イラク周辺諸国外相会議というのが開かれまして、そこで、「国連が(復興の過程で)中心的な責任をはたすべき」ということと、「それには一刻も早く占領軍撤退のための状況を準備する」ことなどが確認されているんです。これも話題になりました。

 早野 占領軍の撤退…。

 志位 占領軍の撤退です。

 早野 というのはいまの米英軍の撤退…

 志位 そうです。

 早野 わが自衛隊も押っとり刀で行きましたけれども…。

 志位 あれも占領軍に入るわけですね。占領軍の撤退を準備しなければならないんだという声明です。イラクの周辺国はみんな入っていますよ。サウジアラビア、ヨルダン、シリア、トルコ、イラン、クウェート、そしてイラク。そういう国が一堂に集まって、占領軍の撤退を考えなければならないといっているさなかに、自衛隊を出したというのは、これはおよそ方向違いのことをやっている。

 早野 なんか日本の自衛隊の派遣をそれなりに喜んでくれるという、あまりそういうことは…。

 志位 そういう空気はありませんでしたね。

 早野 ちょっと見当はずれかなと…。

 志位 ほんとうに見当はずれです。日本の自衛隊派兵は、憲法を壊すだけではなくて、アラブ・イスラムの人々との友好も壊すものだということを強く感じましたね。

 (この後、志位氏は、早野氏の質問にこたえて、アフリカ・中東と、日本共産党との関係の今後について、懇談で不破議長が、「(アフリカ・中東の諸国民と日本国民とが)おたがいに知り合って、相互に国民的な交流をすすめていくために力をつくしたい」とのべた発言も紹介しながら、日本共産党の野党外交について語りました)

北朝鮮問題をめぐる六カ国協議

 早野 北朝鮮とイラクの二つのテーマがどういうふうにこれから推移していくかということですけれども、北朝鮮の方をまず。六カ国協議がなかなか進まない、いらいらするということですけれども、なにやっているんだという議論もあるが、志位さんたちはわりと評価しているんでしたっけ。

枠組みの強化・前進は意義のあること

 志位 私たちは、こんどの六カ国協議は成果があった、前進の一歩を刻んだ大事な会議だったと評価しているんです。議長声明という形で初めて政治文書をだして、「朝鮮半島の非核化」と「対話による平和的な解決」をはっきり再確認し、六月末までに第三回目の六カ国協議を開くということを決め、作業部会を設置してそれまでもいろいろな協議をやっていくことも決めました。

 ですから、全体として、六カ国協議の枠組みを強化したものだということがいえる。この枠組みを壊さないで、強化して、一歩でも二歩でも前に向かって進めること自体が、たいへん意義のあることなんです。

 前回と比べてみますと、前回は(昨年の)八月でしたけれども、終わったあと、次の会議が開かれるかどうかも、分からなかったわけです。それと比べれば、ある筋では、「常設化に向かっての一歩」だということも言われていますけれども、この枠組みが強化された。この枠組みが強化されて、核にしろさまざまな問題にしろ、解決することができたら、北東アジアの主な国がみんな入っているわけですから、北東アジアの平和の枠組みにしていく可能性もあるわけです。

拉致問題の解決にむけた現状と、日本のとるべき対応について

 早野 しかし、日本の場合は、どうしても「拉致問題」への解決を急ぎたい、何とかしてほしい、これは比較的国民全体の気持ちだと思うんですけれども、これが進まない。一方で、外為法の「改正」で送金を制限する、さらには入港禁止と、こういうほうに国内は進んでいますので…。

 志位 拉致の問題では、たしかに家族の帰国の問題など、ただちに解決が迫られている問題について、前進が得られなかったというのは、おっしゃる通りだと思うんです。

 ただ、今度の六カ国協議では、この問題を日本も提起し、アメリカも提起し、北朝鮮は、“提起したら席を立つ”というようなことを言っていたけれども、席を立たずに聞いた。そして、問題の解決の重要性への理解が、ある程度の国際的広がりをもつようになったと思います。

 それから、六カ国協議と並行して、日朝協議が繰り返しやられて、両国の協議の継続が確認された。この問題でも、話し合いによって一致点を見いだそうという努力がおこなわれたことは事実で、私も、これは全体としては前進の方向だと見るべきだと思います。

 核にしても拉致にしても、問題の解決はなかなか大変だと思いますが、六カ国協議という枠組みが強化の方向に向かい、拉致の問題も、ある程度の国際的な理解が進み、継続協議になったことなどの前進面をみて、日本側が、冷静な、道理をつくした外交努力をやっていくというのが、いま大事な局面だと思います。

 さきほど言われた外為法(「改正」)にしても、入港(禁止)問題にしても、これは(昨年)八月の六カ国協議で、各当事国は「状況を悪化させる行動をとらない」という合意があるわけです。ですから、その六カ国の合意にてらしても、日本側が、エスカレート(悪化)させる措置をとるというのは、合意に反するということで、私たちは反対しています。

 早野 これは、小泉さん(首相)が、案外、「だんびらかざして、刀振り回さないほうがいい」というような答弁をしていて、むしろ、意外に思ったんですけれども、そういう姿勢は、小泉さんを支持するということになるんですか。

この枠組みが成功したら、大きな展望が開けてくる

 志位 日本政府もいま、六カ国協議で、対話による解決を追求している最中ですから。アメリカだって、ともかくこの問題については、軍事のオプション(選択肢)ではなくて、平和的な解決ということで、いまやっているわけですよ。

 六カ国協議が、なかなか重要な枠組みだと思うのは、米朝が対立しているわけですが、たとえば核兵器の問題についていうと、その他の四カ国はすべて(北朝鮮の)核兵器開発は反対です。一対五になるわけです。アメリカが北朝鮮に軍事的対応をするという方向になったら、それに反対することではその他の四カ国が一致していますから、これも一対五になるんです。なかなか柔構造みたいに働く枠組みとなっている。(朝鮮問題の)理性的な外交的な解決の方向に、この枠組みを何としても前進させる必要があると思います。

 早野 たしかに、非常に面白い、可能性のある政治的場というのができあがっている感じがしますよね。

 志位 これがほんとうに成功したら、東南アジアではASEAN(東南アジア諸国連合)が平和の枠組みになっていますけれども、それと北東アジアが一体になって、すごく大きな展望が開けてくるわけです。そのぐらい重要な課題です。

イラクの現状をどうみるか

 早野 イラクのほうも、どうしても一言、うかがっておきたいんですけれども、自衛隊が行って、テレビを見ていると、どうやら順調に宿営地などつくって、「日の丸」を掲げたり、「北の国から」のラッパを吹き鳴らしたり、とんでもないことが起きなければいいなと思うんですけれども、志位さん、この状況で(自衛隊派兵は)「仕方ないかな」とは思わないですか。

既成事実追認の動きには、絶対にくみしない

 志位 既成事実の追認というのは、絶対にやってはならないことです。あなたの書いた(朝日新聞の)「ポリティカ日本」でも、「黄色いハンカチ運動」に追随する一部政党の批判をやっていましたが、私は、同感なんです。

 「(海外派遣自衛隊員を)支援する(国会)議員の会」というのがあるでしょう。その目的に、「イラク派遣の是非をこえ、自衛隊が任務を果たし、無事に帰還することを願う」とあるわけです。国会議員は、是非で対立したら、最後まできちんと是非を争わなければいけない。出ちゃったら、是非を超え、あとは任務を立派に果たしてきてくださいになったら、「応援運動」になってしまうわけです。絶対に、そういう現状追認には、私たちはくみしません。

米英軍主導の占領支配が破綻しつつある――国連中心の枠組みへの変更を

 志位 いまのイラクの状況についていいますと、さきほど、イラクの周辺諸国の外相会議で、国連中心の枠組みに移し、外国軍の撤退をどうはかるかが問題になっているということをのべましたが、最近、もう一つ、興味深い報告書を読みました。

 二月二十三日に、ブラヒミ国連事務総長特別顧問の報告書にもとづくイラクにかんする事務総長報告書が、国連安保理に提出されたんです。米国によるイラク占領統治の構想は、今年六月を期限にしてイラクに暫定政府を樹立する、その母体となる暫定議会を全国十八州で招集する「実力者会議」で間接選挙で選ぶ、その選出過程は占領軍の指揮下でおこなう―要するに自分たちの都合の良いような議会をつくって、そのうえに政府をつくろうという構想だったわけです。

 ところが、ブラヒミさんが入って状況を調べてみたら、(間接選挙方式は)「実行不可能であり、選挙の代替になりえないもの」であると、「イラク人にとって、まさに異質なものだ」という判定となった。間接選挙での「実力者会議」方式というのは、破たんしたわけです。アメリカが描いてきたような、自分たちの都合の良い政権をつくり、駐留をずっと続けていくやり方が破たんしつつある。破たんして、いかに国連中心の枠組みに切り替えるかということが、いま国際社会の議論の中心になっているわけです。

 そのときに、その問題についての何の見識も持たないで、占領軍に合流していくというのが自衛隊の派兵ですから、これはほんとうに、さきほど周辺国の外相会議の意向にも反しているという話をしましたが、いま、国際社会で真剣に議論されている方向とも反しているものです。いまの米英占領軍主導の占領支配が、これだけ破たんしつつあるわけですから、この軌道を変えて、国連中心の枠組みにして、いかに早期に占領軍の撤退をはかるかということが大切です。

 早野 やはり、国連の関与を進めていくというのが、具体的突破口ですね。

 志位 それが突破口です。チュニジア大使主催の晩さん会でも、それが共通して語られました。

 早野 きょうはどうも、ありがとうございました。


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