2004年3月8日(月)「しんぶん赤旗」
全国食健連(国民の食糧と健康を守る運動全国連絡会)と農民連(農民運動全国連合会)が主催し、四月十、十一の両日に東京都内で開かれる「WTO協定改定と食糧主権確立を求める国際シンポジウム」に期待と関心が高まっています。海外のパネリストも決まりました。主催者は「世界の農民、市民レベルで広がる食料主権確立の流れを交流し、職場・地域の活動に展望をもとう」と参加を呼びかけています。
全国食健連の坂口正明事務局長は、国際シンポジウム開催について、食料主権の確立が世界的に大きな流れになっていることを確認する意義を強調します。
WTO交渉は、多国籍企業の利益優先で貿易拡大を主張するアメリカなどの輸出大国にたいし、反発を強める途上国の団結が広がっています。二〇〇三年九月のメキシコ・カンクン閣僚会議でも何も決められず、決裂状態となっています。この背景には非同盟諸国運動と、市民運動の力があります。
「途上国は、ただWTO反対というだけでなく、改定へ対案を示している。その柱の一つが食料主権の確立。今回パネリストとして参加する世界的農民組織の『ビア・カンペシーナ』はその中心だ。国際的には国連人権委員会、カンクンの市民集会、さらに今年一月にインド・ムンバイで開かれた世界社会フォーラムでも食料主権の確立の要求が大きくなった」といいます。
もう一つは、「国連が呼びかける国際コメ年の催しの有力な一つ」との位置付けです。
国連は、世界の飢餓と食料不足の深刻化を警告し、米の生産拡大をよびかけます。しかし、小泉内閣は、「米政策改革」などで水田つぶし、農地からの農民排除をすすめます。
坂口事務局長は、「輸入を拡大し水田を減反する現状を告発し、各国の主食をとおして食料主権を考えたい」と、参加を訴えます。
海外パネリストは、全国食健連、農民連が国際活動のなかで交流を深めてきた団体の代表です。
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農民連の真嶋良孝副会長(国際部長)は、一九九五年一月にWTO農業協定が動き出して以来の“害悪の構図”について「世界の農民にも消費者にも勝利者はいない。WTO体制のもとで唯一の勝利者は多国籍企業だ」と話します。世界社会フォーラムでは、農業の困難と食の不安にある日本の現状(グラフ)を訴え、WTO協定の民主的改定に共感を得たといいます。
真嶋氏が訴えたWTOの貿易構図は―。
(1)多国籍企業が「北」の農産物輸出大国の農民から穀物や大豆を買いたたく。
(2)これが補助金付きダンピング輸出となって「南」の国々の小農の穀物生産をつぶす。農民は、巨大地主や多国籍企業が支配する熱帯産品、果物など輸出作物の生産を押し付けられる。アジアではダンピングの「安い」穀物輸入と、外貨稼ぎのための「換金作物」の生産が迫られる。
(3)これらの輸出用農産物が日本など「北」の家族経営をおしつぶす。
その結果、アメリカやカナダ、欧州の国々が穀物を輸出し、発展途上国が輸入に依存する「飢餓の構図」となっていると指摘します。
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国際シンポジウムの会場は東京・新宿区の「あいおい損保新宿ホール」(新宿駅南口下車、徒歩十分)。参加費は、一人一万円(学生割引あり)。
連絡は、全国食健連「国際シンポジウム」事務局 電話03(3372)6112、FAX03(3370)8329、Eメール=center@shokkenren.jp。
国際シンポジウムのパネリストは、食料主権確立や農民運動で行動するNGO(非政府組織)や団体の第一線にたつ四氏です。
インドネシアから参加するヘンリー・サラジー氏は、世界最大の農民組織のビア・カンペシーナの「北東・東南アジア責任者」です。
メキシコのビクトル・スアレス氏は、農民運動と産直・加工・協同組合運動をしている組織の前代表です。現在、下院議員。日本共産党大会に参加した民主革命党の所属です。
アメリカからは、農業・貿易政策研究所の全米組織部長のニール・リッチー氏が来日します。多国籍企業の利益一方の自由貿易に反対する農民・消費者の運動、フェアトレード(公正貿易)を実践します。
日本からは、北海道で十三・五ヘクタールの稲作や野菜を経営する白石淳一氏が報告します。
農民運動北海道連合会委員長、農民連副会長を務めます。
「食料主権は、人々、コミュニティー、国が、それぞれに固有の状況にたいして生態系の面、社会的・経済的、および文化的に適切な農業、労働、漁業、食料および土地にかかわる政策を自分自身で明確にし決定する権利である」(2002年6月、国連食糧農業機関=FAO=の食料サミット5年後ローマ会合時の世界市民組織会議の声明)
44カ国の提案(日本も参加)により2002年12月、国連総会で採択しました。コメは世界の半数以上の人々の主食です。「コメは命」をスローガンに一年間コメへの関心を高め、安定的な生産の拡大をめざします。飢餓撲滅や食料安全保障のため持続的な農業発展のとりくみを強めます。