日本共産党

2004年3月7日(日)「しんぶん赤旗」

すすむ

食の安全と地域活性化


 地元で生産された産物をその地域で消費する地産地消の運動。“食の安全”の問題が関心を集めるなか近年、運動は各地で盛り上がりをみせています。県庁に地産地消課が誕生した高知県、県農業基本条例をつくり地産地消を大きな柱に据えた山形県に、その進展ぶりをみてみました。


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田植えの体験学習に取り組む親子連れ=03年5月26日、南国市(提供=南国市教育委員会)

高知県 専門課設け事例普及

 高知県は基幹産業の農業の振興に向け地産地消に力を入れてきました。学校給食で地場産米を活用することを追求。現在、米飯給食をおこなっている学校では、ほぼ100%、県内産米が使われています。

 今後は、地産地消を学校から、福祉・医療施設、観光施設など他の分野へと広げていく方針です。

 橋本大二郎知事は「地産地消には、経済的な側面のほか、消費者との距離が近づくことで、生産者にはやりがいを、また消費者には安心をもたらすといった利点があります」(昨年二月定例県議会の所信表明)とのべています。

 県は、推進体制の強化に今年度、農林水産部に地産地消課を設置しました。同課は先進的なモデル事例の普及、地産地消に賛同し率先して実践する「おいしい風土こうちサポーター」の募集などに取り組んでいます。

 同課は「地産地消は単に地域の食材を使うだけが目的でなく、生産者と消費者がおたがいに助け合い、地域を盛り上げていく、地域づくりを進めるものです。伝統料理を含め、地域の食文化の保存、継承を進めていきたい」と話しています。


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稲刈りの体験学習に取り組む親子連れ=03年10月3日、南国市(提供=南国市教育委員会)

児童に人気の給食

米も副食も100%めざす

南国市

 高知県内の地産地消で注目を集めているのは、南国市の取り組みです。同市は全小学校で週五日、地場産米による米飯給食を実施。各学級ごとに電気炊飯器で炊きます。炊きたてのほかほかでおいしく、大変に食べ残しが少なくなっています。

 米飯給食を中山間地の農業振興と結ぼうと、上倉、亀岩地区の棚田米を使用。生産農家の川村一成さん(54)は「給食で使用されることで、安定して販売できることが一番のメリットです。子どもたちが食べるということで、がんばってつくろうという気持ちがわきます」と語ります。

 食農教育として小学校五年生は、生産農家の指導を受け、親子で田植え、稲刈りの体験学習をします。二男が大篠小学校に通う竹内江里子さんは「給食に地元の方がつくった、お米が使われることで、安心できます。体験学習もまったく知らないことばかりで、よい経験になりました」と話します。

 副食の野菜なども、多いときで八割が地元産です。西森善郎教育長は「副食も100%をめざして一皿、一品ごとに地産地消を強めていきたい」と抱負を語ります。

 日本共産党市議団(五人)は議会で米飯給食の充実などを求めたびたび質問。地産地消課の設置などの提案も。

 市は学校給食の経験を病院や福祉施設などにも広げようと、アンケート活動などに取り組んでいます。

 高知県・浦準一記者


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児童と生産農家の給食交流会。食への安心感と同時に地域農業への関心も高まる=藤島町

子孫に継ぐ循環型へ

山形・藤島町

 米どころ山形県庄内地方の藤島町(人口一万二千人)は、公設直営のセンターを新たに発足させ、学校給食などで地元産野菜の割合を増やすなど大きな成果を上げています。

 藤島町は「人と環境にやさしいまち」宣言をあげ、安全で良質な農作物を生産し、消費者から信頼される農業の町を目指しています。

 ふれあい食センター「サンサン」(小細澤充所長)は〇二年四月に開設。町内五つの小中学校、四つの児童館や障害者授産施設などに千四百食余を供給しています。

常設直売所や朝市
特産物ひろげます

山形県内

 山形県は2001年に県農業基本条例を制定、地産地消を大きな柱に据えて推進をはかっています。

 常設直売所や定期的な朝市などで地元の農産物や加工品をひろげようという動きが広がっています。

 直売所の数は99年度の116カ所から02年度の161カ所へ、加工所は150カ所から215カ所へと増加しています。(農業改良普及センター調べ)

 「低農薬で安心」「新鮮で安い」などのセールスポイントのほか、ここでしか味わえないという地元の特産物など内容も多彩で喜ばれ、農業振興や地域活性化に大きく寄与するものとなっています。

 町は農業振興の一環で地産地消を掲げ、「サンサン」の運営も町のエコタウン課(農水課)が直接責任を持つことで、〇一年度16・9%にすぎなかった町内産野菜の給食に占める割合が、二年目の本年度は53%(二月まで)に前進しています。

 週四回の米飯給食はすべて町内産。みそ、豆腐、納豆などの大豆加工品、小松菜なども100%町内産を使用しています。大豆をつかった呉汁、孟宗汁など郷土色豊かなメニューも人気です。

 生産者側の「サンサン畑の会」には五団体、十五個人が加入し、「子どもたちに一番安全で良いものを」と低農薬で心のこもった野菜を供給。給食に必要な野菜品目は四十五程度といわれますが、畑の会ではいま二十八品目を扱っています。

 給食の残飯などは圧搾され、全量が卵を供給している生産者グループに引き取られます。

 小細澤所長は「本年度はすべての野菜に栽培履歴も付けてもらった。学校給食と地産地消の取り組みを通して、安全安心を内外にアピールし、町の農業振興につなげたい」と期待を込めています。

 自らも「サンサン」に平飼い鶏の卵を納めている日本共産党の加藤鉱一町議は、「安全な作物という信頼感をつくる上で地産地消は欠かせません。民間委託には未来はありません」と語り、この三月議会では高齢者世帯への給食宅配サービスの実現にむけ提案しています。

 食の安心を追求する上で一つの象徴ともいえる学校給食で地場産使用率80%を掲げ挑戦する藤島町。目指すのは子孫に安全・安心を引き継ぐ持続可能な循環型社会です。山形県・阿曽隆記者


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