日本共産党

2004年3月7日(日)「しんぶん赤旗」

ビラ配布 不当起訴

国民の政治参加を弾圧


元日本弁護士連合会会長 土屋 公献さん

表現の自由の重要な柱

 憲法二一条では、基本的人権の一つとして、国民の表現の自由を保障しています。いうまでもなく政治活動の自由は、この国民の表現の自由の重要な柱です。

 だからアメリカやヨーロッパなど多くの近代民主主義国家では、公務員の政治活動を禁止し、その違反行為にたいして刑事罰を科すなどしていません。国家公務員の政治活動を制限・禁止し、違反にたいして刑罰を科すことまで規定している国家公務員法自体に大きな問題があると思います。

 同時に、国家公務員の政治活動の制限・禁止などを規定している法律の趣旨からいっても問題があります。

 今回のケースは、職務時間外の休みの日に、職場から離れた自分の住んでいるところでビラをまいたのでしょう。この程度のことで逮捕・起訴までする。ここまで法律を広げて解釈していいのかという問題があります。

 憲法で保障されている国民の基本的人権の重みと比較してみても、この程度のことで逮捕・起訴することは、バランスを大きく欠いているのではないかと思います。

 戦時体制へ向けての思想統制強化の動きともみられます。


法政大学名誉教授 野田 正穂さん

憲法で保障された権利

 これは共産党に対する異常な政治弾圧です。堀越さんを起訴した東京地検に強く抗議したい。

 もともと国家公務員法は、公務員が地位や立場を利用する場合を問題としているものです。休日のビラまきは、憲法で保障された当然の権利の行使であり、何ら規制されるものではありません。

 だいたい、選挙での違反事件は普通、選挙が終わった直後に捜査するでしょう。四カ月もたって逮捕し、六カ所も家宅捜索をして、関係ないものまで押収していく。その後の経過を見ても、押収したパソコンを返却し、本人も釈放した直後に起訴するなど、事件の不当性がますます明らかになっています。

 かなり意図的な共産党に対する弾圧であることは明らかです。

 いま、参議院選挙が予定されるなかで、共産党が新聞の読者を増やすなど勢力を拡大している。自衛隊のイラク派兵などで、政府に対する国民の不満が高まっている。そのなかで、共産党を抑えこもうとするきわめて露骨で異常な政治弾圧そのものです。

 起訴取り消し、無罪をかちとるために、ますます抗議と運動の輪を広げていきましょう。


写真
霞ヶ関の官庁街で、不当逮捕に抗議しビラを配り宣伝する支援の人たち=5日、東京・千代田区

もしアメリカで起きたら、
警察を訴えることができる

米ウィリアム・ミッチェル法科大学院
アーリンダー教授に聞く

 米ウィリアム・ミッチェル法科大学院(ミネソタ州)のピーター・アーリンダー教授は四日、社会保険庁職員の堀越明男さんの不当逮捕・起訴事件は「国民の政治参加に対するどう喝だ」と指摘します。弁護士で、米国の民主的法律家団体ナショナル・ロイヤーズ・ギルド(NLG)の議長も務めたアーリンダー教授は、米国での公務員の政治活動についてこう語ります。(ワシントン=浜谷浩司)

 ――事件について。

 ニュースを知ったときには、警察権力がこんなふうに使われたとは、信じられない思いでした。大勢の警察官を動員し、あちこち家宅捜査するという、攻撃的なやり方に驚きました。

 法の執行というより、日本共産党を傷つけ、国民の政治参加をどう喝する、政治的メッセージだと思います。

 ――米国では?

 米国憲法修正第一条は、表現の自由や結社の自由を保障しています。これは、少なくとも理論的には非常に強い考え方です。これらの自由を制限する法律はきわめて限定的でなければなりません。

 米国では百年来、表現の自由は民主主義の核心とされてきました。とりわけ平和的な政治活動への制限は、民主主義への直接の攻撃とみなされます。

 ――国家公務員の政治活動は?

 公務員もまた憲法修正第一条の保護を受け、他の国民と同様に表現の自由があります。勤務時間外なら、ビラ配りをはじめ政治活動は基本的に自由です。

 就業時間中、あるいは政府建物で、党活動を行うことはできません。また、就業時間外であっても、選挙期間中に特定候補への支持を求めることはできないとされています。

 しかし、こうした制限は、政府との雇用関係上でのルールです。違反すれば、雇用者である政府から処分を受けるかもしれない。しかし、「犯罪」ではなく、警察が関与する余地はないのです。

 もし、東京で起きたような事態が米国で起きたなら、被疑者は逆に、警察を相手どって訴えることができるでしょう。

 ――選挙活動への制限は?

 戸別訪問に制限はありません。政治家自身も運動員も、有権者の家を訪ねて話すことができます。それどころか、政治家が有権者を訪ねて話し込まないのなら、かえって奇妙なことでしょう。それは政治家が一人ひとりの有権者を大事にしていることの表れであり、政治家にとっての責任ですから。

 ナショナル・ロイヤーズ・ギルド(NLG) 一九三七年、人種隔離政策に反対する初の米国法律家団体として創立。人権と民主主義を柱に、反戦平和と反核、雇用や教育の権利などを掲げ、民衆に奉仕する法律家の統一を呼びかけている。

 全国本部=ニューヨーク

 人と人とが話す、政治家と有権者とが話すという直接対話を妨げることは、民主主義を弱めます。

 米国でも選挙に関する制限が存在しますが、表現の自由、結社の自由が非常に強い考え方なので、制限は(日本とは)違っています。

 第三政党の候補者には立候補登録が難しいことが、そのいい例です。また、米国での選挙戦は、マスコミと資金が大きな力をもっているため、戸別訪問やビラ配りに制限がなくても、カネのない政党には厳しいという現実があります。

 それだからこそ、人と人との草の根のつながりが民主主義にとって不可欠なのです。


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