日本共産党

2004年3月6日(土)「しんぶん赤旗」

最大限の驚き ビラ配布を犯罪扱い

世界には通用しない


 警視庁公安部による「国家公務員法違反」を口実にした堀越明男氏の逮捕と起訴について、国際民主法律家協会、フランス人権団体から「世界人権宣言」にも反する不当な行為との抗議が発せられています。(パリ=浅田信幸)


表現の自由、参政権を侵害

国際民主法律家協会
ベイユ副会長

 国際民主法律家協会(本部ブリュッセル)の副会長でパリ在住のロラン・ベイユ氏は四日、堀越氏の不当逮捕について抗議の談話を発表しました。同氏はまた「協会としても東京の弁護士会に働きかけたい」と語りました。

 堀越さんの逮捕が引き起こしている抗議に、私も断固として加わりたいと思います。

 日本共産党の新聞やビラの配布が公務員の身分に反するとして、逮捕したり、家宅捜索や押収を行ったことが事実なら、そうした犯罪者扱いは不適当なことであり、正当化できません。また刑事訴追の根拠にもなりません。

 そこには、世界人権宣言の一九条と二一条が保障している表現の自由と参政権に対する重大な侵害があります。

 世界人権宣言は「普遍的な公共の秩序」の価値をもっており、これに反するいっさいの法律上の規定や規則も存在しないものと見なすことを求めています。

 日本当局が早急に事態をしかるべく収拾することを望まないではおれません。


国家公務員 仏では政治活動、ストもできる

写真
年金改悪に反対してパリで行われたデモ。国家公務員も多数が参加しました=2003年5月25日(浅田信幸撮影)

きわめて異常だ

 「きわめて異常だ」。公務員であることを理由に政党の機関紙、ビラを配布したことで逮捕されるという事態に、国際民主法律家協会の副会長を務めるフランスの弁護士ロラン・ベイユ氏は一瞬、言葉を詰まらせました。二の句が継げない、という印象です。

 フランスに限らず欧州諸国では、一般に公務員、民間労働者にかかわらず、結社・表現の自由は広く認められています。警察官や消防署職員にも組合が認められることはいまでは常識となっており、これを日本が認めていないことは国連人権委員会でも繰り返し問題だと指摘されています。

 フランスにおける公務員の政治活動で一例をあげると、革命的共産主義者同盟(LCR)の党首ブザンスノ氏の場合もそうです。二〇〇二年の大統領選挙に立候補した人物でマスコミにもしばしば登場しますが、同氏は現職の郵便職員(国家公務員)であり、郵便配達をしている姿が紹介されることも珍しくありません。

 昨年は年金制度の改悪や教育の地方分権化をめぐって、長期にわたる労働者のたたかいが繰り広げられました。

 年金制度改革では民間労働者が対象であったものの、これに連帯して公務員労組もストライキを実行。基本が国立である教育部門でも、教職員は数度にわたって全国ストを行っています。

 公務員だから政治活動やストライキが認められないなどという発想は、今日では国際的に常識となっている表現や政治参加への自由権をふみにじるものといえます。

仏の法律家団体が抗議声明

世界人権宣言から見て無効

 堀越明男氏の不当逮捕について、フランスで人権問題などに取り組んでいる法律家の団体である「法と連帯」協会(本部パリ)は四日、全文次の抗議声明を発表しました。

 「法と連帯」協会は、三十人もの警察官によって大掛かりに家宅捜索とパソコンや書類の押収をおこない、五十歳の平穏な一市民である堀越明男氏を、社会保険事務所の職員として、日本共産党の新聞を戸別に配布し、選挙期間中の二〇〇三年十月に同党のビラを百数十枚配布したことによって人事院規則に違反した、ということのみを理由として逮捕したという知らせを最大限の驚きを持って受け取った。

 一、この分野に関する日本の法律がいかなるものであろうとも、このことは(1)この行為が、このような処置を正当化するほど公秩序に対して十分な重大性があると判断するのに四カ月もかかっていること(2)ビラ配布のみが問題となっている一市民が、重罪犯かのように扱われていることにより、すでに衝撃的なものである。

 二、かりに法が公務員に対して政党のビラや新聞の配布に参加すること、そして(または)選挙活動に参加することを禁止しているとしても、(1)これらの行為が公務の執行の中、そして業務時間中に行われたとしても、それらは公務運営内部の問題であり、刑法の範疇(はんちゅう)には決して入らないこと、(2)このことを差し置いても、このような活動は世界人権宣言、特に第一九条「すべての者は、意見及び表現の自由についての権利を有する」と、第二一条「すべての者は、直接に、又は自由に選んだ代表者を通じて、自国の政治に参与する権利を有する」―この条項はこの自由選択に貢献する性格を持ったあらゆる活動に参加する自由を前提とするのだが―との条項によって保障されている個人および公の権利に属するものである。一市民にこれらの自由の行使を公務員だからという理由のみによって禁止することは、この至高の国際法への明白な違反を構成する。

 二〇〇三年五月、マルセイユで二十四カ国の法律家を集めて開かれた国際民主法律家協会の会議では、世界人権宣言のこれらの条項は普遍的な公秩序形成力を持っており、これに反するあらゆる法や規則は無効であるべきだと考えるようにしなければならないと想起した。

 堀越氏の釈放、彼に対する訴追の放棄、彼のパソコンや書類の返却、彼に対する物的・精神的損害の回復、そしてさらに可能ならば〔今回の逮捕の〕基礎となり得る法文の廃止により、日本の民主的イメージを損なった大きな影を緊急に払しょくすることを期待する。

世界人権宣言から

 一九四八年十二月十日に国連総会で採択された世界人権宣言の関連条項は、次の通りです。

 第一条【自由平等】すべての人間は、生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利において平等である。人間は理性と良心とを授けられており、互いに友愛の精神をもって行動しなければならない。

 第二条【権利と自由の享有に関する無差別待遇】1 すべての者は、特に人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治上その他の意見、国民的若しくは社会的出身、財産、門地その他の地位によるいかなる差別をも受けることなく、この宣言に掲げる権利と自由とを享有することができる。

 第九条【逮捕、抑留又は追放の制限】何人も、恣意的に逮捕され、抑留又は追放されない。

 第一九条【意見及び表現の自由】すべての者は、意見及び表現の自由についての権利を有する。この権利には、干渉されることなく意見を持つ自由並びに、あらゆる方法により、国境とのかかわりなく、情報及び考えを求め、受け及び伝える自由を含む。

 第二一条【参政権】1 すべての者は、直接に、又は自由に選んだ代表者を通じて、自国の政治に参与する権利を有する。2 すべての者は、平等条件の下で自国の公務に平等に携わる権利を有する。3 人民の意思は、統治の権力の基礎である。この意思は、普通かつ平等の選挙権に基づき秘密投票又は同等の自由な投票手続により行われる真正な定期的選挙において表明されなければならない。


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