日本共産党

2004年3月5日(金)「しんぶん赤旗」

警視庁公安部の弾圧――各界はこうみた

逮捕おかしい


 警視庁公安部が「ビラ配布」を理由に、社会保険庁目黒社会保険事務所の堀越明男さん(50)を不当逮捕した事件で、各界に懸念や批判、怒りが広がっています。識者の声や報道を紹介します。


政治活動禁止は憲法違反

弁護士(第一法律事務所)

竹澤 哲夫さん

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警視庁を訪れ抗議した(左から)日本共産党の秋田かくお都議、同東京都委員会の田辺進書記長、鷲見賢一郎弁護士の各氏=4日、警視庁(東京・千代田区)

 今回の事件で逮捕の理由となった国家公務員の政治活動を広く禁止する国家公務員法(一〇二条一項)と人事院規則は、マッカーサー書簡に基づく政令二〇一号(一九四八年七月)に由来するものです。政令二〇一号は公務員のストライキ権の禁止と、政治活動の禁止の二つを柱としていました。それは戦後の民主化を進めるうえでの大きな力の一つとみなされた公務員労働者の力を奪うために、政治的に仕組まれた反動化攻撃でした。

 公務員の職種の区別や、行為の公的・私的の区別を問わず、ほとんど全面的に政治活動を禁止する現行法の規定は、公務員の言論・政治活動の自由を侵害し、明らかに憲法違反であるとの論点はすでに出尽くしています。

 司法の反動化のもと猿払事件最高裁大法廷判決(一九七四年)で判例変更がなされ判例上は合憲とされたものの、下級審での違憲・無罪判決の蓄積や国民世論を受けて、警察は実際には長い間、公務員法の具体的適用はできないできました。特に本件のような、時間外における一市民としての政治活動については、厳しく適用を戒められてきたのです。

 それが、何十年かぶりに突然でてきたことに驚きを禁じ得ません。そこには深い背景、経緯があり、根が深いものがあると感じます。

 現在、平和原則をはじめ憲法の基本的価値を掘り崩す動きが非常に露骨になっています。

 こうした動きに対抗して憲法を守る力と運動の中心は労働者です。そのなかで、政府の内部の部隊でもある公務員労働者の勤務時間外の政治活動に対して、こういう攻撃が新たに表面化したことは重大だと思います。

 また日本共産党が狙い撃ちされていることは絶対に許されないことで、背景の究明が必要です。


異常な捜査、意図感じる

ジャーナリスト

大谷 昭宏さん

 逮捕が不当なのは当たり前だ。マスコミの記者も「逮捕はおかしい」といっている。

 古い話を口実に家宅捜索をして事件にすること自体異常だ。最初から意図的に捜査をやったとしか考えられない。

 公務員が政治家の横に立って演説をしたとか、勤務中に仕事をほったらかしにして政治活動したというならともかく、地域でビラを配布することなど一般的に行われている。

 思想信条の自由は憲法で保障されており、国家公務員法に思想信条の自由を縛る権限はない。

 警察庁は、警察官の増員を要求している。治安情勢の悪化で手が回らないと六千人の増員を要求している。

 国民はストーカーや児童虐待、泥棒をちゃんと捕まえてほしいと思っている。

 公務員がビラを配ってだれが迷惑しているというのか。こんな暇なことをして増員なんて口がさけても言えないだろう。人員や予算を増やしたいとはもってのほかだ。

 逆をいえば共産党たたきをして自公政権を喜ばせて、予算増額の手土産にしようとの意図があるのではないか。


戦前の特高警察のようだ

治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟中央本部会長

中西 三洋さん

 今回の事件は、憲法で保障された国民の自由を侵害するまったく不当な政治弾圧です。

 政府が憲法を蹂躙(じゅうりん)してすすめるイラク戦争、自衛隊派兵に、国民の反対運動が大きく盛りあがっている中で起きた今回の事件は、共産党を弾圧することで、反戦運動を弾圧しようとする悪質な政治弾圧であり、絶対に許せません。

 私たち治安維持法犠牲者は戦前、日本の侵略戦争に反対し、大弾圧を受けました。その経験からいっても、今度の事件は、日本の民主主義の発展にとって、大きな支障となりかねません。

 公安警察がいま、戦前の特高警察のような役割を果たそうとしていることは、許せません。

 日本と世界の平和のためには、この政治弾圧事件を絶対に許してはならない。



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地方紙も「懸念」

 警視庁公安部による不当弾圧事件では、マスコミのなかにも懸念や批判の声が出ています。

 四日付の高知新聞は、「『赤旗配布し逮捕』妥当か」「懸念続々 反戦排除につながる 言論の自由抑圧にも」という見出しで社会面で報道しています。

 記事(写真)は、逮捕について「識者からは驚きとともに『逮捕するほどのことか』『市民のための法秩序になっていない』と、懸念の声が上がった」と指摘。ジャーナリストの大谷昭宏さん、憲法学者の奥平康弘東大名誉教授のコメントを紹介しています。

 大谷さんは「はっきり言って行き過ぎだ」「処罰に値する違法性があるだろうか」、奥平さんは「逮捕をささえる『法秩序』が市民のためのものといえるのか、言論の自由を抑圧していないのか、考えるべきだ」などと語っています。

 警視庁にくわしいある記者は「警視庁のなかでも『この事件は起訴できないのではないか』といぶかる人もいる。『逮捕はやりすぎ』という検察関係者もいる」と話しています。



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