日本共産党

2004年3月1日(月)「しんぶん赤旗」

NHK「日曜討論」 

市田書記局長の発言 (大要)


 日本共産党の市田忠義書記局長は二十九日午前、NHK「日曜討論」に出演し、北朝鮮問題、有事法制関連法案について各党幹事長と討論しました。番組には、安倍晋三(自民)、岡田克也(民主)、冬柴鉄三(公明)、又市征治(社民)の各幹事長が出席しました。


6カ国協議の枠組み強化の方向で進展したことは歓迎

 冒頭、二十八日閉幕した北朝鮮の核問題をめぐる六カ国協議の評価について議論になり、安倍氏は「予想されていた通りの印象だ」、岡田氏は「表面だけみれば失敗だ」とのべました。市田氏は、六カ国協議の枠組みを強化することになったのかどうか、と司会者から問われ、次のようにのべました。

 市田 私は明確に六カ国協議の枠組みが強化する方向で進展したと、そういう点では歓迎したいと思っています。

 朝鮮半島の非核化を目標にするということと、これを対話を通じて話し合いによって平和的に解決するということを改めて確認した。前回の一回目の協議のときは次回の協議の日程が決まっていなかったんですけれども、これは六月末までに開くということと、作業部会を設置するということを決めたという限りにおいては枠組みが強化された。

 ただ、重要なこんどの大きな議題であった朝鮮半島の非核化という問題については重大な意見の対立があったことは明確で、われわれはかねがね核兵器の完全な廃棄、そのことが東アジアの平和と安全にとって不可欠だということをいってまいりました。そういう点ではまだまだ重要な対立が残ったままだったけれども、これらの問題は作業部会で、非核化の内容、検証方法、北朝鮮がいう「安全の保証」などについて、国際的なルールと監視のもとでそれが進むということが望ましいと思います。拉致問題についていいますと、やっぱり五人の家族の帰国問題など緊急重要課題についての前進がなかったわけですけれども、ただようやくこういう問題が二国間だけでなく国際的な一定の問題解決の重要性への理解が進んだということと、こんどの会議中も二国間協議がありましたし、こんごも二国間協議を継続するということが確認されたという意味ではいずれも一定の前進があったということです。

「改正」外為法、特定船舶入港禁止 第1回6カ国協議合意に反する

  続いて、六カ国協議を受けて、こんご北朝鮮にどう対応していくかについて議論になり、自民党が準備している特定船舶入港禁止法案にたいする考えを各氏が発言。安倍氏は「対話と圧力の姿勢で北朝鮮の問題を解決する」、冬柴氏は「いい法案だ。厳しく攻める態度も必要」、岡田氏は「法案は賛成だが、発動するとなればリスクがともなう」とのべました。又市氏は「経済封鎖はいまやるべきでない」とのべました。市田氏は次のようにのべました。

 市田 何をもって圧力というかということにもなるかと思うんです。私は今回の六カ国協議も外交的な、そういう意味では圧力だったと思うんです。

 われわれが、外為法の「改正」に反対し、今度出されるであろう外国の特定船舶の入港禁止法案について反対するという態度を明らかにしている理由は一つです。

 去年の八月の六カ国協議の際の六項目の議長総括というのがあります。これは外務省も事実上の合意事項だということで国会の答弁でもいっております。その四項目に、「六者会合の参加者は平和的な解決のプロセスの中で状況を悪化させる行動をとらない」という文言があります。

 日本政府もこれに合意してきたわけで、この合意を守るという立場に私は立つ必要があると思うんです。この合意に、外為法の「改正」や特定船舶の入港禁止というのが反するので、それは反対だということです。

有事関連7法案―米の干渉戦争に日本を強制動員

 「国民保護法案」など有事法制関連七法案についての議論では、「迅速にしっかりした議論をして、成立させることが必要」(岡田氏)、「こういう法律は有事に際してぜひ必要」(冬柴氏)など、与野党から早期成立を求める発言がありました。

 市田氏は、次のようにのべました。

 市田 私は前提が間違っていると思います。

 外国から日本が攻められたときにどうするかということを、いまおっしゃいましたけれども、去年成立した有事法、いわゆる「武力攻撃事態法」などの法律全体の議論のなかで明らかになりましたけれども、日本がどこかから攻められたときの「備え」のための法律ではなくて、一番の可能性としては、「周辺事態」で、米軍が海外で干渉戦争をやっているときに、自衛隊がそれに協力する、これまでだったら「後方地域」でしか米軍への協力ができないと(されてきた)。しかし、それを「武力攻撃事態」とか「予測事態」と読みかえれば、米軍と一体となった武力行使が可能になる。要するに、海外でアメリカがやる干渉戦争に、日本が協力していく、そのために国民を強制的に動員するための法律です。

 「保護」という名前がついているけれども、「自主性を尊重する」というけれども、いろんな罰則規定があるんですよ。これはやっぱり、事実上、国民を強制的に戦争に動員していく法律です。

 沖縄戦の苦い経験をした沖縄の(地元紙の)沖縄タイムスだとか琉球新報は、「戦前の国家総動員法を思い起こすような危険な法律だ」ということを、体験者自身が語っているんですよ。

 有事七法案の一つで、日本の領海や周辺の公海で武器や弾薬を輸送している「疑い」のある外国船を臨検(停船させて検査する)し、応じない場合は武器使用ができる「海上輸送規制法案」について議論になり、市田氏は、次のようにのべました。

 市田 私は、明確に「交戦権の行使」にあたると、その点では、現行の日本国憲法に違反すると(思います)。そういう外国船の臨検をおこなって、それに従わない場合は、武力の行使も可能だということを明記しているわけですから、重大な問題だと思います。

 だいたい、国会の論議のなかでも、総理自身も「わが国に脅威を与える特定の国を想定したものでない」ということを言っているわけで、当時の防衛庁長官も「二、三年のターム(期間)で考えた場合、そういうことはありえない」と(言っている)。

 一番可能性があるというのは、さきほどらい、議論しているように、「周辺事態」=日本が攻撃されていない段階で、海外で、しかも「武力攻撃予測事態」という予備役を相手国が召集するという段階でもそれが発動するというところに大きな問題があるわけで、そういうときに臨検だとか、あるいは国民の権利を抑圧するというふうなやり方というのは、やはり正しくないと思います。

「先制攻撃」を実行する米軍に弾薬提供するACSA「改正」

 また、ACSA(日米物品役務提供協定)の「改正」案で、自衛隊の米軍への弾薬提供を認め、さらに支援の対象が「国際貢献」活動にまで拡大されていることに関連し、冬柴氏は「アメリカが日本の平和と安全を確保するために、攻めてきた敵とたたかっているときに、武器・弾薬を供給するのは当然だ」と発言しました。

 市田氏は次のようにのべました。

 市田 「攻められたとき」という話がさかんに出ていますけれども、「武力攻撃予測事態」でも、これは発動されるんですよ。「先制攻撃」を当然の戦略だと公言し、実行している米軍に対して、弾薬を提供するわけでしょう。これまでだったら、共同訓練だとかPKO(国連平和維持活動)のときというふうに、いくつかに限定されていたわけですね。

 それをいわゆる「有事」の際にもひろげる。さらに、いまのイラク戦争でも自衛隊が「米軍との一体化」を進めるという極めて重大なものです。私は、「武器輸出三原則」にも明確に違反する問題だと、大問題にしていく必要があると思います。

 与党と民主党による「緊急事態基本法」の協議機関で、有事七法案についても協議するのかが議論になりました。岡田氏が「政府の出してきた(有事関連)法案の議論はしない」とのべたのにたいし、安倍氏は、協議機関と有事特別委員会の理事が重なれば、「『国民保護法制』などの議論もおこなわれるかもしれない」とのべました。

 司会者から「『緊急事態基本法』などを、民主党と与党側の協議で話を進めるということをどう受け止めるか」と問われ、市田氏は、次のようにのべました。

 市田 私は、そういう国会審議のしかたは正しくないと。やはり、各党オープンで、全体のところでやるべきです。一致する点で、各党いろいろ相談するのはいいですけれども、国会で重要な問題を決めるとき、「理事同士だから」という話もありましたけれども、私はそういう関係でやるべきではないと思います。


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