2004年2月29日(日)「しんぶん赤旗」
【ワシントン=浜谷浩司】ハイチの首都ポルトープランス市内では、周辺に武装勢力が迫るなか、アリスティド大統領派の武装グループなどによる略奪が横行。一般市民はなすすべもなく、まったくの無法状態に陥っています。
現地からの報道によると、市内では殺人や放火なども起きています。同地の米大使館は同日、声明を発表し、「出口のない暴力を止める」ようアリスティド大統領に求めました。
同大統領の退陣を要求している武装勢力には、一九九一―九四年の軍事独裁政権下で反対派を弾圧した悪名高い元軍人らが含まれています。首都攻撃という事態になれば、百万人を超える市民に深刻な危険が及ぶとともに、アリスティド支持派への報復も予想されます。
国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチは、武装勢力を率いる人物が独裁政権下で「数知れない残虐行為を犯した」と指摘。「これほど暴力的で無法な連中がまたも出現したことは、ハイチの将来にとって憂慮すべき前兆」だと表明しました。
武装勢力の退陣要求に対して同大統領は、クーデターが多発する同国で憲法手続きを守ることが何より重要だとして、応じる姿勢をみせていません。
米政府はすでにアリスティド大統領に事実上、退陣を勧告。ブッシュ米大統領は同日、「安定確保」などを目的に多国籍軍の派遣に言及したものの、「政治解決のなりゆき次第」だとして、同大統領の退陣が前提になるとの考えを示しました。同時に、難民流出などの事態に備え、ハイチ沖への艦船の派遣も検討していると伝えられます。