日本共産党

2004年2月25日(水)「しんぶん赤旗」

有事関連法案

米の戦争支援へ“制約”外す

空港・港湾 有無をいわさず優先利用

戦闘地域へも自衛隊


 有事7法案の要綱・要旨は、米軍が海外で引き起こす先制攻撃の戦争を日本が支援する際の“二つの制約”を突破するものです。二つとは、1997年の日米軍事協力の指針(ガイドライン)での制約――(1)海外での米軍の戦争に自治体・民間を強制動員できない(2)自衛隊の活動は「後方地域支援」に限定される――です。政府が進めてきた「戦争国家」づくりは、重大な段階を迎えます。


自治体拒めば首相の指示で

強制される米軍支援

●民間空港・港湾の優先使用
 管理者が拒否すれば、首相が指示、直接執行
●道路の優先使用
 緊急通行、妨害になっている車両などの撤去も
●海・空域の優先使用
 民間船舶の航行制限、民間航空機の飛行禁止空域の設定など。航行制限に違反すれば罰則
●電波の優先使用
●自衛隊による物品・役務の提供
 支援地域に制限なし。武器・弾薬の提供も
●土地・家屋の強制使用
 立ち入り検査などを拒めば罰則

 ガイドラインでは、米国が海外で引き起こす介入・干渉戦争=「周辺事態」に際し、空港・港湾の使用や補給・輸送・整備など、地方自治体・民間による米軍協力が定められました。

 九九年にはガイドラインの具体化である「周辺事態法」が成立しましたが、同法には政府の強制措置は含まれていません。このため、米国から強い不満が表明されていました。

 七法案のうち「特定公共施設等利用法案」は、政府が「周辺事態」と重なり合うと認める「武力攻撃予測事態」から発動されます。

 同法案では、「特定の者」=米軍・自衛隊による空港・港湾の「優先的な利用」が規定されました。大部分の民間空港・港湾は地方自治体や公団が管理主体ですが、同法案では、自治体などが政府の要請を拒否した場合、「内閣総理大臣の権限(指示、国土交通大臣を指揮しての措置の実施)を行使することができる」とし、強制使用が可能になっています。

 神戸市などでは、米艦船の入港に際して「非核証明書」の提出を求めていますが、このような自治体の方針も有無をいわさず無視される危険があります。

 同法案では、「現に停泊中の船舶又は駐機中の航空機の移動」も定め、空港・港湾から民間機・船舶を完全に排除することも想定されています。

 「制限海域」と「飛行禁止区域」の設定も規定されています。「海上保安庁長官は…特定の海域において船舶の航行を制限することができる」とし、これに違反した場合は「罰則を設ける」としています。米軍・自衛隊の活動の自由を確保する内容です。

 道路や特定電波の米軍・自衛隊の優先使用も規定しています。

 また、「米軍支援法案」では、日本国内での米軍の行動の自由も拡大しようとしています。米軍車両の「緊急通行」や「車両等の物件の撤去」が規定されています。

「予測事態」で武器・弾薬提供

 「周辺事態法」では、自衛隊による米軍支援も定めていますが、戦闘が行われていない地域での後方支援=「後方地域支援」に限定されています。戦闘行為が行われたり、それが予測される場合、「活動を休止する」としています。武器・弾薬の提供も除外されています。

 しかし、「米軍支援法案」では、「武力攻撃予測事態」での「自衛隊による物品及び役務の提供」を定めています。

 武器・弾薬の提供も除外されておらず、「後方地域」といった歯止めは何もありません。「戦闘地域」での支援に道を開く危険があります。

 自衛隊は、米軍の海外の戦闘行動を、何の歯止めもなく支援することを可能とする内容です。

 さらに米軍に対する「土地又は家屋」の提供が規定され、「立入検査を拒んだ者等に対する罰則を設ける」としています。

罰則付きで強制動員

 「国民保護法案」は、法案の一歩手前となる「要綱」が決定されました。同法案は、米軍・自衛隊の行動の自由を確保するために、国民を管理・統制し、そのための業務を地方自治体や指定公共機関(民間企業、団体を指定)に担わせるものです。

 このため、自治体や指定公共機関は平時から計画を策定し、政府・自衛隊をふくむ協議機関を設置するなど、戦時体制に組みこまれることになります。

 昨年十一月に決定された同法案の「要旨」では、罰則対象が十項目でしたが、「要綱」ではさらに拡大して十一項目になりました。懲役や罰金も詳細に規定され、物資の保管命令に違反した場合は六月以下の懲役、土地収用のための立入検査を拒んだ場合は三十万円以下の罰金、自衛隊などによる退去命令に従わなかった場合は三十万円以下の罰金もしくは拘留となっています。

 これらの一連の措置は、「武力攻撃予測事態」から発動されます。



物品役務提供協定も改悪

日米軍事一体化の範囲拡大

 「米軍支援法」案に伴い、自衛隊による米軍への後方支援を取り決めた日米物品役務提供協定(ACSA)も改悪されます。

 現行のACSAは、米軍への後方支援は、▽日米共同訓練▽PKO(国連平和維持活動)▽国際救援活動▽「周辺事態」―の場合となっています。

 今回の改悪では、「武力攻撃予測事態」を含む「武力攻撃事態等」に加え、米軍による海外での在外邦人などの輸送、日本国内での災害応急活動、訓練その他の目的で自衛隊施設に一時的に滞在する場合にも拡大。自衛隊と米軍との一体化がいっそう進むことになります。


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