日本共産党

2004年2月24日(火)「しんぶん赤旗」

薬害エイズ

安部被告の公判停止

東京高裁決定 医師の責任裁かれず


 薬害エイズ事件で業務上過失致死罪に問われ、一審で無罪判決を受けた元帝京大副学長安部英被告(87)の控訴審で、東京高裁(河辺義正裁判長)は二十三日、安部被告が心神喪失状態にあるとして公判手続きの停止を決定しました。回復による公判再開の可能性は低く、審理は事実上終結しました。医師・官僚・製薬会社による複合過失が問われた薬害エイズ事件は、医師の判決が確定しない展開となりました。

 河辺裁判長は医師の鑑定書などから「被告は現在、高度の痴ほう状態にある」と認定。心神喪失状態の被告の公判停止を定めた刑事訴訟法の規定に基づき決定しました。

 弁護団によると、安部被告は昨年四月から入退院を繰り返し、九月末には打ち合わせができない状態になっていました。

 弁護団は昨年十一月、公判停止を申請。高裁は医師に精神鑑定を依頼し、今月十六日には裁判官が安部被告と面会、状態を確認していました。

 安部被告は一九八五年五月―六月、帝京大病院の医師にエイズウイルス(HIV)が混入した非加熱製剤を血友病男性患者に投与させ、九一年に死亡させたとして起訴されました。

 一審・東京地裁は二○○一年三月、「結果を予見できた可能性は低い。当時は多くの専門医が非加熱製剤を使っており、被告に過失があったとは言えない」と無罪(求刑禁固三年)を言い渡し、検察側が控訴しました。

 控訴審は○二年十一月に始まり、検察側は「一審は予見可能性を不当に低く評価している」と主張。被告が一度も出廷しないまま、検察、弁護側双方の最終弁論を残すだけになっていました。

 薬害エイズ事件では、元厚生省課長松村明仁被告(62)が一審で有罪判決を受け、控訴審で公判中。製薬会社旧ミドリ十字の元社長二人は一、二審で実刑判決を受け、上告しています。


 薬害エイズ事件 エイズウイルス(HIV)が混入した非加熱血液製剤の投与で千四百人以上が感染、約五百人が死亡しました。「産・官・医」の複合過失による薬害といわれ、一九九六年に安部英・元帝京大副学長、松村明仁元厚生省課長、製薬会社旧ミドリ十字(現三菱ウェルファーマ)の歴代三社長が業務上過失致死罪で起訴されました。

 安部被告は二○○一年三月、東京地裁で無罪となり、検察側が控訴。松村被告は○一年九月、同地裁で禁固一年、執行猶予二年の有罪判決を受け、控訴審で公判中。旧ミドリ十字では○二年八月、大阪高裁で松下廉蔵被告が禁固一年六月、須山忠和被告が同一年二月の実刑判決を受け、いずれも上告。川野武彦被告(一審禁固一年四月)は控訴審の公判中に死亡しました。


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