日本共産党

2004年2月19日(木)「しんぶん赤旗」

混乱のハイチ

反政府武装集団が都市を占拠

市民は平和的政権交代求める


 【メキシコ市=菅原啓】選挙不正や汚職問題を理由に大統領の辞任を求める運動が高まっているカリブ海のハイチで、五日以降、反政府武装集団が北部の諸都市を次々占拠。平和的な反政府デモにたいする弾圧や攻撃も激化し、暴力的な対立と混乱が広がっています。


地図

 ハイチのネプトゥン首相は十七日、同国の国家警察部隊は約五千人と小規模で、装備も訓練も不足していることをあげ、武装集団に占拠された都市を奪還し、治安を回復するために、米州機構(OAS)などに、国際的な警察部隊の派遣を要請する考えを明らかにしました。

 アリスティド大統領は、貧困層や弱者のために積極的に活動する神父として知られ、三十年にわたるデュバリエ独裁政権の崩壊後初めて行われた一九九〇年の選挙で初当選しました。その後、軍のクーデターで国外に亡命、九四年に米国の軍事介入で軍事政権が崩壊した後、政権に復帰しました。

 二〇〇〇年の国会選挙では与党ラバラス・ファミリー(FL)が圧勝しました。しかし、国連や野党側は大規模な不正があったと非難。野党がボイコットした同年の大統領選挙でアリスティド氏は二期目の当選を果たしました。

 もともとフランスの植民地だったハイチは一八〇四年に独立。中南米で最初の独立国となりましたが、米国に支援された長期の独裁政権のもとで、貧困層が八割に達するなど、中南米で最も貧しい国となっています。選挙不正を理由に欧米諸国、世界銀行が援助を次々停止したことから、経済はいっそう困難を増し、アリスティド辞任を求める世論が高まったとされています。

 大統領辞任を求める労働組合や市民団体、企業家など広範な勢力が結集している共闘組織「民主主義プラットホーム」は、あくまで「憲法の枠内での政権交代」「平和的な抗議行動」を主張。十五日にも首都で大規模な反政府デモを呼びかけました。デモは警察隊の弾圧や与党を支持する集団の投石などで中止に追い込まれました。

 政府側は、反政府勢力を一律に「テロリスト」と非難しています。しかし、「プラットホーム」は、武装集団との共同を拒否。指導者の一人アンドレ・アパイド氏は、武装集団を率いている主要人物に、九一年のクーデターで政権を握り、国民を弾圧した元軍人やFL自身が反政府勢力への対抗のためにつくった準軍事組織の残党などが含まれている問題をあげ、「彼らはハイチ人民がけっして後戻りすることを望まない暴力支配を代表している」と厳しく批判しています。

 ハイチ国民の一部には新たな米軍介入を求める声もあります。しかし、メキシコのホルナダ紙十六日付社説は、歴代の軍事政権をささえてきたのが米国だったことを説明しながら、今回も米国などが自国に都合のいい政権を押し付ける結果となることを警戒。「ハイチ国民が外国からの干渉なしに自分自身で国の運命を決める時がきた」とのべ、民族自決権を尊重した解決が必要なことを強調しています。


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