日本共産党

2004年2月14日(土)「しんぶん赤旗」

消費税増税これが財界の本音


 日本経団連(会長・奥田碩トヨタ自動車会長)は「遅くとも2007年度までに消費税率を10%(2025年度18%)に引き上げる」と提言しています。大企業が政治献金をする基準となる政党「通信簿」まで公表して、自民党や民主党に消費税増税を競わせています。庶民への大増税を迫る財界の本音はどこにあるのでしょうか。

その1 大企業の税・保険料 軽減

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 財界は、消費税増税は、社会保障の財源を確保するためだといっています。しかし、これは通用しません。一九八九年に導入されていらいの消費税による税収は、大企業のための減税などで落ち込んだ法人税収の穴埋めにつかわれてしまった計算になるからです。

 もともと財界は、大企業減税(法人課税の減税)をしろ、そのための財源がないんだったら大型間接税(消費税もその一つ)を導入しろと政府に迫ってきました。旧経団連の五十年史に正直に書いています。

 そのとおりになってきましたが、財界は満足していません。もっと大企業減税をしろ、社会保障の企業負担を軽くしろ、そのための財源は消費税の税率を引き上げて生み出せばいいじゃないか―。これが、いま財界が音頭をとる消費税大増税の本音です。

 日本経団連が消費税大増税構想を正式に打ち出した二〇〇三年一月発表の提言「活力と魅力あふれる日本をめざして」(「奥田ビジョン」)に、一部を除いて労使折半となっている年金などの社会保険料について、こんなくだりがあります。

 「企業の従業員についても、自営業者と同様、保険料を全額本人が負担する方法に改めることが考えられる」

 大企業はもう社会保険料の負担はしたくない、従業員が全額負担しなさい、それがいやなら、消費税率を引き上げて財源をつくるしかないじゃないか、というわけです。大企業の負担を軽くすること先にありき。なんとも身勝手です。

その2 新たな軍拡の財源づくり

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 「すべての(同盟)国の年間軍事費は全体で20%弱も減ったのに比べ、日本は20%も増えた」

 米国防総省は二〇〇二年六月に発表した「共同防衛に対する同盟国の貢献度報告」で、日本をほめたたえました。日本の軍事費は米国とその同盟国二十五カ国のなかで、十一年前の五位から二位(二〇〇一年、軍事支出の絶対額)に順位を上げました。主要な同盟国が軍事費を減らしているなか、日本の異常さが際立っています。

 いまや日本の軍事費は五兆円規模です。消費税の2%分に相当します。消費税導入(一九八九年四月実施)の動機のひとつに軍拡財源づくりがありました。当時、自民党税制改革推進本部長として、消費税導入の旗振りをした渡辺美智雄自民党政調会長は外国人記者を前にこんな本音を語っていました。

 「昭和六十五年(一九九〇年)までは年々5・4%ずつ実質的に防衛費を伸ばすというお約束が(米政権と)ある。そうすると、ますます財源がなくなる」

 いま、新たな軍拡の圧力が強まっています。米国と財界にハッパをかけられ、自民党と民主党が改憲を競い合っています。憲法九条を改定して、米国の戦争に、自衛隊が公然と武力行使をもって参加する「戦争をする国」につくりかえようという策動です。

 小泉内閣はすでに、昨年末、米国の先制攻撃戦略に加担する「弾道ミサイル防衛システム」の整備や自衛隊の態勢・装備を海外派兵型に変える計画の策定を決めました。

 米国のランド研究所は、日本の「ミサイル防衛システム」整備は約六兆円(研究開発だけで三兆六千億円)の経費がかかると試算しています。米日の軍事産業が巨額のビジネスになると群がろうとしています。

 消費税など、消費一般に課税する大型間接税は、第一次世界大戦の財源づくりのために一九一六年にドイツで導入されたのがはじまりです。“戦争の申し子”として生まれた大型間接税が、いま消費税増税という形で、日本の海外派兵国家づくりの財源として狙われています。

消費税に頼らなくても 社会保障財源は確保できます

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 日本共産党は、消費税に頼らなくても安心できる社会保障を築けると考えています。

当面は  

 まず、税金の使い道を改めて、社会保障を予算の主役にする歳出の改革をおこなうことが大切です。

 巨大な公共事業の浪費と、年間六兆円にのぼる道路特定財源、五兆円規模に膨れ上がった軍事費という、財界・大企業の予算私物化の中心点にメスを入れるべきだと主張しています。

 いま、国と地方あわせて八十兆円ほどの税収がありますが、社会保障につかわれているのは二十数兆円にすぎません。国民が納めた税金が社会保障につかわれる割合(“見返り率”)をイギリスやドイツ並みに40%台に引き上げるだけで年間十兆円が社会保障に回ることになります。

将来は  

 将来、高齢化が進んで、社会保障の財源がもっと必要になったさいは、税収をもっと増やさなければならないでしょう。そのさいは、税や社会保障の財源は、負担できる能力のある大企業や高額所得者に応分の負担を求めるという考えに立った歳入の改革を行うことが大切です。

 日本の大企業は、税や社会保険料の負担をヨーロッパ諸国並みにしていません。

 負担水準を国民所得比でみてみると12%にすぎません。ヨーロッパ諸国の二分の一から八割程度の水準です。

 しかも、ここ十年間をみるとヨーロッパ諸国の大企業の負担は増えているのに、日本では逆に大企業の負担が軽減されています。

 日本の国民所得は三百七十四兆円(一九九九年)ですから、企業負担を1%増やすだけで三兆七千億円の財源ができます。企業負担をフランス並みの24%にすれば四十兆円ほどの財源が生まれることになります。


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4人家族の場合、消費税の負担は

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 景気などに左右されますが、消費税は1%引き上げるだけで、およそ年2兆5000億円の税収増になります。赤ちゃんからお年寄りまで、国民1人当たり年2万円ほどです。消費税が10%に引き上げられたら税収は年約25兆円という計算になります。国民1人当たり年20万円、4人家族で年80万円という信じられないような負担です。

 注)消費税1%で2.5兆円、日本の人口1億2500万人として計算。



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