日本共産党

2004年2月7日(土)「しんぶん赤旗」

イラク大量破壊兵器

「ある」と断言した責任


 戦争はうそから始まる−−。イラク戦争も例外ではありませんでした。戦争の大義とされた「イラクの大量破壊兵器保有」の根拠が次々と崩れ、米国でも英国でも調査委員会設置の動きが出ています。米英に追従して「大量破壊兵器の保有」を断定していた小泉純一郎首相と、それを大宣伝していた公明党の責任は重大です。


逃げる しかない 小泉首相

「見解の相違」と議論を拒否
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 イラク戦争開戦前後。小泉首相は「読者百万人」ともいわれるメールマガジンで、繰り返しイラクの大量破壊兵器「保有」を断定し、イラク戦争支持の最大の理由にしました。

 ところが、CPA(連合国暫定当局)傘下の「イラク調査団」がイラク占領後ただちに大量破壊兵器の捜索に着手しますが、発見されません。

 いらだちを募らせた首相は、昨年六月十一日の党首討論で、大量破壊兵器未発見とフセイン大統領が見つからないこととを同列視する詭弁(きべん)まで持ち出して、周囲をあぜんとさせました。

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答弁で居直る小泉首相=5日、参院イラク有事特別委

 昨年十二月、フセイン大統領は拘束されました。しかし、大量破壊兵器は発見されず、米政府のケイ調査団長は一月、辞任。米議会で「イラク戦争開戦時に大量破壊兵器が存在したことを示す証拠は一切ない」と証言しました。

 そんななかで、日本共産党の穀田恵二議員の追及に首相はついに、「(大量破壊兵器の問題は)未解決だということは事実」(一月二十六日、衆院予算委員会)と、「保有」発言の撤回に追いこまれたのです。

 五日の参院イラク有事特別委員会。日本共産党の宮本岳志議員の追及に、首相は過去の保有や立証責任を果たさなかったことなどを言いたてて、「持っていたと断定しても不思議はない」と居直りました。

 宮本氏が、「それはイラクが大量破壊兵器を持っていた可能性を示すもので、『保有』を断定する根拠にはならない」と反論すると、首相は「見解の相違だ」と議論を拒否したのです。

 情報操作の疑惑を指摘されて調査に乗り出そうという米国や英国と比べても、何の反省も、検証もしない首相の姿勢は異常としかいいようがありません。


ごまかし きかない 公明党

いまさら持ち出す珍説・新説
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「公明新聞」号外(2003年3月)

 公明党は、世界中を覆ったイラク反戦運動を「利敵行為」とか「ただ口で反戦、平和と叫んでいても本当の平和は構築できない」(冬柴鉄三幹事長)と口をきわめて非難・敵視し、米英の侵略戦争を支持してきました。その最大の口実にしてきたのは、首相と同様、イラクの大量破壊兵器保有の脅威でした。

 冬柴幹事長は開戦前、「スプーン一杯で約二百万人分の殺傷能力がある炭疽(そ)菌が約一万g」などと繰り返し、その脅威をけん伝。神崎武法代表は「イラク問題の本質」は、イラクに大量破壊兵器が「保有」されていることだと断言。開戦直後には、「(イラクの)大量破壊兵器は世界の脅威」と大書した公明新聞号外まで配布しました。

 ところが、戦争後も大量破壊兵器が発見されないとなると、“いずれ見つかる”と言い張る首相に対し、「大量破壊兵器が絶対あるんだとあまり言わない方がいい」(赤松正雄議員、昨年六月二十五日、衆院イラク特別委)と、とたんに動揺。今年の通常国会冒頭の各党代表質問では、神崎代表も、浜四津敏子代表代行も、戦争の“大義”にはいっさい触れることができませんでした。

 最近では、赤松氏が一九九一年の湾岸戦争とイラク戦争を「十三年間に及ぶ一つの戦争だ」(公明新聞二日付)という珍説まで持ち出して合理化。五日の参院イラク有事特別委では、「イラク戦争の大義は何か」として、「大量破壊兵器の保有、有無ということではなくて、私はもう当初から対テロリズムにあると理解をしていた」(高野博師議員)などという議員まで出るありさまです。開戦当時、「対テロリズム」など、党の見解でも公明新聞号外でも一言もいったことがありませんでした。

 高野氏は「フセイン政権がテロリストを支援していた事実がある」とのべました。米国でさえ証拠を示せないことを持ち出してイラク戦争支持の態度をごまかそうとしても国際社会の物笑いの種になるだけです。


調査に乗り出す米英

当事者が発言訂正に追い込まれ

 イラク戦争の最大の口実とされた大量破壊兵器が見つからないなか、ブッシュ米大統領やブレア英首相ら戦争を強行した当事者も、イラクの大量破壊兵器保有に関する戦争前の発言を事実上訂正せざるを得ない状況に追い込まれています。米英両国では真相究明を求める世論に押され、政府から独立した調査委員会が設置される方向です。

 「開戦時に大量破壊兵器が存在しなかったかもしれないという見方がある。その可能性はあると思う」−イラク戦争遂行の急先ぽうだったラムズフェルド米国防長官は四日、上院軍事委員会の公聴会でこう証言し、イラク戦争を正当化しつつも戦争前に「大量破壊兵器のありかを知っている」とした発言は誇張だったと認めました。

 ライス大統領補佐官(国家安全保障問題担当)も一月二十九日、米テレビで「われわれが知っていた証拠と現地で見つけたものには違いがある」と発言。大量破壊兵器保有の情報に誤りがあったことを認めました。

 ブッシュ大統領自身も五日の演説で、「われわれがあると考えていた兵器備蓄はまだ見つかっていない」と指摘。一月三十日にも、情報当局の分析に誤りがあったとされる問題で「私も事実を知りたい」と述べるなど、戦争前の発言を明らかに後退させています。

 戦争の口実を崩す発言が当事者から相次ぐなか、ブッシュ大統領は二日、大量破壊兵器に関する情報操作疑惑について超党派調査委員会を設置すると表明しました。

 英国でも三日、ブレア首相が機密情報についての独立調査委員会を設置することを確認しました。同国では一月二十八日、司法調査委員会報告で、大量破壊兵器に関する情報操作問題で英政府に責任はないと結論づけていました。しかし、米英の政府関係者による相次ぐ開戦の口実の見直し発言や批判の世論が広がるなか、独立の調査委員会を設置せざるをえなくなったものです。


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