日本共産党

2004年2月2日(月)「しんぶん赤旗」

“都合のいい情報だけ集めろ 悪い情報は隠せ”

赤嶺議員が暴露した政府内部文書の全ぼう

イラク派兵ありきのシナリオづくり


 政府・与党が「慎重の上にも慎重を期して」決めたはずのイラクへの陸上自衛隊本隊の派兵―。その判断の根拠とされたのが、陸自先遣隊の報告書です。ところが、この報告書が派兵にとって都合のいい情報だけを集め、都合の悪い情報は隠ぺいしたものだったことが、日本共産党の赤嶺政賢衆院議員が暴露した政府内部文書で判明。その内容を改めてみてみると―。


報告書原案は事前に作成

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日本共産党の赤嶺政賢議員が暴露した政府内部文書「(案)最新のイラク情勢と陸自派遣の調整状況等について」

 赤嶺氏が明らかにした内部文書は、「(案) 最新のイラク情勢と陸自派遣の調整状況等について」と題するもの。防衛庁と外務省の間でやりとりした陸自先遣隊の報告書原案です。ところが、この文書は、陸自先遣隊の現地調査の前に作成されていました。

 先遣隊が陸自部隊の派兵されるイラク南東部サマワに入ったのは、現地時間で一月十九日午後八時五十分。内部文書に記録されているファクスの送信時刻をみると、防衛庁運用局運用課から外務省安全保障政策課に対し、同月二十日の午後零時二十分に発信されたことになっています。イラクの現地時間では、同日午前六時二十分にあたります。

 陸自先遣隊のサマワ入りから一夜明けたら、すでに原案が完成していたことになるのです。

“歓迎のコメントをとれ”

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政府の内部文書を示して追及する赤嶺政賢議員=29日、衆院イラク特別委

 しかも、内部文書は、陸自先遣隊に対し派兵にとって都合のいい情報だけを集めるよう指示しています。

 内部文書は、「サマワ市評議会議長」の項目で「自衛隊の到来を全面的に歓迎しており、今や遅しと待っている」とあり、「最新のコメントを再度(可能であれば書面で)確認できれば望ましい」と記述。自衛隊歓迎の「コメント」をとるよう求めているのです。

 また、サマワで開かれた治安対策会議で、「自衛隊が安心して活動を実施」できるようにするため、市民が治安維持に協力することで合意したと記述。「資料源が新聞報道であるため、現地において要確認」としています。これも文書の趣旨に沿って、確認をとるよう指示したものです。

 まさに、派兵を前提にした事前のシナリオに沿って、先遣隊の報告書はつくられたのです。

襲撃数は「対外公表不可」

 一方で、内部文書は、現地の危険度を示す都合の悪い情報は隠すように指示しています。

 内部文書は、サマワを含むイラク南東部のムサンナ州で、昨年五月一日から今年一月二十日までに「連合軍に対する襲撃等の発生件数は6件」にのぼると指摘しています。

 また、イラク南東部全体についても、バスラ周辺では、同じ期間に「約70件の襲撃等が発生」したと指摘しています。

 ところが、内部文書は、いずれも「具体的な数字については対外公表不可」との注意書きを付けているのです。

 実際、陸自先遣隊の報告書は、襲撃件数を明らかにせず、「ムサンナ県における事件は著しく少ない」などとごまかしています。

 さらに、内部文書は、陸自隊員が駐在するバグダッドについて「引き続き襲撃等が頻発」「大使館等への脅威が深刻」と指摘していますが、先遣隊の報告書はいっさい触れていません。

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「占領軍司令部に勤務」認める

 内部文書は、イラクに派兵される自衛隊員が、バグダッドにあるイラク占領軍(CJTF―7)司令部や、バスラにある占領軍の師団司令部に「勤務する」と明記しています。

 石破茂防衛庁長官は、赤嶺氏の追及に、「勤務をすることはあり得る」と認めました。(一月三十日、衆院イラク特別委員会)

 これまでの日本共産党の追及で、イラクに派兵される自衛隊は占領軍としての地位・特権を法的に保障されることや、実態的にも自衛隊が占領軍の指揮下に置かれるなど、占領軍の一員となることも明らかになっています。

 これらのこととあわせ、内部文書は、政府が憲法違反の「交戦権」行使にあたるとする「相手国領土の占領」や「占領行政」に、自衛隊が参加することを如実に示すものです。

政府も文書の存在否定できず

 石破防衛庁長官は一月三十日の衆院イラク特別委員会で、赤嶺氏が内部文書の存在を追及したのに対し、「(防衛庁内に)残っていない」としつつ、「政府の文書をつくる過程でこのようなもの(文書)がやりとりをされるということはある」と述べ、存在を否定できませんでした。

 内部文書は、サマワへの「経済協力」について詳述していますが、「外(務省)にて別途作成」との注釈が付いています。実際、この部分は、陸自先遣隊の報告書とは別に、外務省が一月二十六日に発表しました。このことも内部文書の信ぴょう性を裏付けるものです。

 首相官邸の関係者からは「報告書の原案がパソコンに残っていないことなどあり得ない。本当に存在しないなら、上司が指示して消したとしか思えない」(「朝日」一月三十一日付)との声が上がっています。


情報集めを指示する文書(抜粋)

 (3)自衛隊の派遣に対する地元の反応

 ア 地方統治機構

 (ア)ムサンナ県庁(略)

 (イ)サマワ市評議会議長

 ○サマワ市は、自衛隊の到来を全面的に歓迎しており、今や遅しと待っている。市民の多くが自衛隊員の身の安全を確保することに協力する意向である。

 【最新のコメントを再度(可能であれば書面で)確認できれば望ましい】

 イ 一般民衆(略)

 ウ その他

 ○先遣隊は、本年1月7日に地元警察、部族長等も出席して開催されたサマワ市民議会による治安対策会議において、自衛隊の受入れを前に市内の治安をより安定させることが必要であり、自衛隊が安心して活動を実施することができるよう、市民が協力することの重要性について一致し、以下の2点を合意したことを確認。

 ・テロリストの侵入を防ぐため、不審者を見つけた場合は、その場で市民が取り押さえ、警察に通報する

 ・デモが暴力につながらないよう、デモ参加者に平和的にデモを行わなければならないことを認識させる。

 【資料源が新聞報道であるため、現地において要確認】


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