日本共産党

2004年1月27日(火)「しんぶん赤旗」

追い詰められるブレア政権

英司法調査委員会報告 イラク情報操作疑惑で批判も


 【ロンドン=西尾正哉】英国では、学費値上げ計画案採決の二十七日に続いて、翌二十八日には国防省顧問の科学者、ケリー博士の自殺の状況を調査する司法調査委員会報告が公表される予定で、ブレア政権は連続して厳しい政権運営に迫られます。英メディアは「ブレア首相の経歴の中で最も緊張した二十四時間」と指摘するなど、政権発足以来の危機に直面しています。

学費値上げ案きょう採決

 ブレア政権が提案した学費値上げ計画の主な内容は、イングランド地方の大学でこれまでの入学時の千百二十五ポンド(一ポンドは約百八十三円)の学費を廃止。代わりに各大学が三千ポンドを上限に学費を設定し、学生は卒業後、一万五千ポンド以上の収入を得るようになれば返還を始めるというものです。

 計画発表以来、学生自治会の全国連合(NUS)が国会請願行動やロンドンでの大規模なデモなど精力的に反対運動を展開。与党労働党議員の百五十人以上が反対の意思表示をしてきました。

 今月十九日、ブレア首相も出演した英BBC放送の討論番組ではスタジオの学生から次々と値上げ計画に厳しい批判が出されました。イングランド北西部ボルトンの高校生は「マニフェスト(二〇〇一年選挙公約)で、あなたは学費値上げには触れないと約束した。しかしいま、あなたと労働党は自分たちの言葉に反することをしており、うそつきであることが判明した」と厳しく追及しました。

 ブレア政権は、批判をかわすため貧困層には新たな奨学金や学費免除策などを設けており、計画で最も打撃を受けるのは中間階層だとの指摘があります。BBC討論番組では、女性の医学生は「私は中流階層出身だが、家族の中で初めて大学に進学した。値上げ計画でもっとも進学意欲を抑制されるのは私のような階層だ。なぜなら、私たちは貧困学生に提案しているような財政援助は受けられないからだ」と批判しました。

 インディペンデント・オン・サンデー紙二十五日付によると、クラーク教育相は計画を採択するのに十分な票が集まっていないことを認めています。また、少なくとも八十一人の労働党議員が反対票を投じると同紙のインタビューに答えたといいいます。政府案が否決された場合、ブレア政権は初めて、内閣信任投票にかけられるとみられています。ブレア首相は「ほかに対案はない」として、あくまで採決にかける意向です。

大量破壊兵器脅威を誇張

 一方、二十七日午後七時の学費値上げ計画採決の十数時間後に、ハットン調査委員会の報告が公表されます。

 ハットン委員会は、ケリー氏の自殺の状況だけではなく、政府がイラクの大量破壊兵器の脅威を誇張したとする疑惑も調査しました。英メディアは、ブレア首相はこの報告では厳しい指弾を免れると報じていますが、「首相の高潔さが裁かれる」(サンデー・タイムズ紙二十五日付)との指摘があり、世論の動向が注目されます。

 辞任した米国の大量破壊兵器調査団のデビッド・ケイ氏が“イラクには大量破壊兵器はなかった”と断言したのに続き、パウエル米国務長官が大量破壊兵器が存在したかどうかは“まだわからない”と述べるなど、米政権中枢を含めイラクの「脅威」を否定する発言が相次いでいます。ブレア首相がイラク攻撃の口実にした“大量破壊兵器の脅威”が虚構だったとの批判は、ハットン報告いかんにかかわらず、引き続き拡大するとみられます。


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