日本共産党

2004年1月22日(木)「しんぶん赤旗」

前会長は盗聴を自供するも

武富士、なお否認

自浄作用 はたらかず

貸金業登録取消しも焦点


 サラ金最大手「武富士」のオーナーで前会長・武井保雄被告(74)が盗聴容疑で起訴(昨年十二月十五日)されてから一カ月。法人としての同社も昨年十二月末に起訴され、同社は元金融庁長官らを招きコンプライアンス(法令順守)委員会を設置、「事件の再発防止」をうたっています。しかし、前会長が罪を認めたのに、いまだ盗聴への「会社ぐるみの関与」は否定したまま。その体質に変化はうかがえません。


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盗聴を認める武井前会長のコメントを発表した武富士の記者会見=昨年12月8日、東京証券取引所

 武富士の盗聴事件をめぐり、さる十三日、一つの裁判が開かれました。

 「原告に対する盗聴は否認する」。武富士による盗聴や上司の暴行で精神的苦痛を被ったとして、元支店長藤井龍さん(33)が同社に慰謝料を求めた訴訟の第一回口頭弁論。武富士側は、藤井さんへの盗聴を否認する答弁書を提出しました。理由は「現在被告(武富士)の有する資料にはかかる事実(盗聴)を推認させる証左は存在しない」というものでした。

 藤井さんは香川県の丸亀支店長だった二〇〇〇年三月、武井被告の二男の武井健晃専務(33)に同行した本社社員に暴行され、告訴。その後、実家を盗聴されています。藤井さんは、会話を盗聴した録音テープも確認しています。

被害者あぜん

 盗聴が明らかになったのは、同社元法務課長中川一博被告(二件の盗聴容疑で起訴)の証言から。法廷で“自白”した六件の盗聴の一件でした。中川被告は、藤井さん宅盗聴は「二男(武井健晃専務)の要請をうけた武井会長の指示」だったと証言。武井被告はすでに「一連の盗聴はすべて私の指示」だったと認めています。

 藤井さんへの盗聴は公訴時効が過ぎているため立件はされていませんが、武富士の否認は被害者の藤井さんや関係者をあぜんとさせました。藤井さんは「なぜ今なお事実を否定するのか。徹底的にたたかうしかないと強く決心した」と話します。

 武富士被害対策全国会議の新里宏二弁護士は「トップの武井被告が盗聴を自供しているのに、藤井さんの件も、会社ぐるみの関与もいまだに否定し、一部上場企業の体をなしていない。武富士の体質はまったく変わっていない」と指摘します。

 武富士は、同社の起訴後、「自浄作用が働く組織づくりを目指す」などとして、コンプライアンス委員会を設置しましたが、この委員会には武井健晃専務もメンバーに入っていると報道されています。新里弁護士は「自浄作用は期待できない。外からうみを出し切るしかないのではないか」といいます。

厳正な判断を

 貸金業規制法には、「役員」が禁固以上の刑を科されたら貸金業登録を取り消す、との規定があります。武井被告が会長を退任したことで、同規定の適用は免れることができるかどうか−も一つの焦点です。

 同法の「役員」には代表、取締役のほか「取締役らと同等以上の支配力を有する者」が含まれています。「支配力を有する者」にあたるのは「25%超の株式を保有する者」だと内閣府令で規定されています。武井被告自身の所有株は2・21%ですが、武井被告一族とファミリー企業九社は計66・51%の同社株を保有しています。

 弁護士、ジャーナリストらでつくる武富士対策連絡会議(宇都宮健児代表)は昨年十二月末、66%のうちの相当数は実質的に武井被告の所有と考えられるとして、金融庁と関東財務局に、登録取り消しで厳正な判断をするよう申し入れています。登録がないと貸金業は行えず、取り消しは「廃業宣告」になります。


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