日本共産党

2004年1月21日(水)「しんぶん赤旗」

イラク直接選挙で3者会合

国連調査団派遣を検討

アナン総長は慎重姿勢


 【ワシントン=遠藤誠二】米主導のイラク占領当局である暫定行政当局(CPA)、イラク統治評議会と国連の三者会合が十九日、ニューヨークの国連本部で行われました。会合後の記者会見でアナン国連事務総長は、暫定議会の直接選挙が「可能かどうかを勧告するための専門家チームを派遣すべきだとの強い意思を統治評議会とCPA代表が表明した」と述べました。

 アナン氏は安全の調査について国連職員四人の派遣をすでに決めていることを明らかにしましたが、直接選挙問題でのチームの派遣については技術的な問題で「さらなる協議が必要だ」と語りました。また、「六月末までに発足する暫定政府と、(二〇〇五年の)制憲議会、総選挙で国連が重要な役割を果たさなければならないという点では幅広い合意がある」が、六月までの選挙実施と(国連要員の)安全確保についてさらなる協議が必要だと強調しました。

 また、選挙について勧告し、選挙が可能でない場合に代替案を示すように求めた統治評議会メンバー、ハキム師の書簡を検討したことも明らかにしました。

 会合にはアナン氏のほかCPAからブレマー文民行政官、統治評議会からパチャチ議長らが参加しました。

 アナン氏はこれまで、米英の占領が続き安全保障の見通しが立たないもとでの直接選挙の可能性を否定していました。

 十九日付の米紙ワシントン・ポストは、大統領選挙を控えたブッシュ政権にとって、イラクの主権移譲プロセスが失敗した場合に責任を転嫁できる国連という「いけにえを探す必要がある」との安保理関係者のコメントを紹介し、三者協議でのCPAなどの態度を説明しました。

解説

米の主権移譲計画深刻な困難示す

 イラク暫定行政当局(CPA)と統治評議会の両代表が十九日の会合で国連のアナン事務総長にイラクへの選挙調査団派遣を要請したことは、今年六月末が期限のイラク暫定政府樹立という米主導の主権移譲計画が深刻な困難に直面している中、国連を利用することによって活路を見いだそうとする米国の思惑と矛盾を示しているといえます。

 昨年十一月十五日にCPAと統治評議会が合意した主権移譲計画では、暫定政府樹立の母体となる暫定議会を五月末までに間接選挙で選出し、その過程をCPAが監督することなどを定めていました。

 イラクでは人口の六割以上を占めるイスラム教シーア派教徒を中心に直接選挙を求める声が急速に高まっています。危機感を抱いたCPAは、主権移譲計画にたいするイラク内外の批判を和らげるため、当初計画でその役割を一切排除していた国連の関与を必要とするようになり、CPAのブレマー文民行政官はブッシュ米大統領と急きょ協議したうえで十九日のアナン事務総長との会談に臨みました。

 アナン事務総長は会談後の会見で、選挙調査団派遣を検討すると表明する一方、大規模な国連要員のイラク復帰には治安状況の抜本的な改善が必要だとの立場を崩していません。調査団派遣そのものに慎重な態度を示しながら、実際に派遣したとしても「(直接選挙が可能かどうか)判断するのにあらゆる情報をえなければならない」と語り、見通しは不透明な状態となっています。

 直接選挙を拒否しているCPAとしては、選挙調査団がシーア派を説得する役割を担うことを期待していると指摘されています。

 ロイター通信は「イラク侵略の承認を国連安保理が拒否したときに国連を無視した米国が、主権移譲ではアナン氏に希望を見いだしている」と皮肉を込めて報じました。会合前には、ある国連高官が「占領下にある国での国連の地位はまったくもって空想的な話であり、前例もなく不愉快なものだ」(米紙ニューヨーク・タイムズ十八日付)とのべました。(小泉大介記者)


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