日本共産党

2004年1月18日(日)「しんぶん赤旗」

日本共産党第二十三回大会決議



目    次
第一章世界の平和秩序を築くたたかい
第二章異常な対米従属」からの脱却を求めるたたかい
第三章東アジアの平和と安定――北朝鮮問題の解決のために
第四章日本共産党の野党外交の到達点と展望
第五章国民生活を守る諸闘争――たたかいによって暮らしを守るルールを
第六章憲法改悪反対の一点での、広い国民的共同を呼びかける
第七章社会の道義的な危機を克服する国民的対話と運動を
第八章参議院選挙をたたかう政治方針と活動方針について
第九章地方政治の現状ととりくみの強化方向
第十章どんな激動のもとでも選挙で勝てる強大な党をどうつくるか


 日本共産党第二十三回大会は、歴史的な党綱領改定案を討議・採択した。大会決議は、新しく決定された党綱領を、直面する国内外のたたかいにどう生かすかという見地から、当面する情勢分析と党のとりくみの課題、たたかいの課題について、重点的に明らかにするものである。

第一章世界の平和秩序を築くたたかい

 (1)二〇〇〇年十一月の第二十二回党大会の決議では、当時の世界情勢を分析し、「二つの国際秩序の衝突」という問題をつぎのように提起した。

 「二一世紀の世界のあり方として、二つの国際秩序が衝突している。アメリカが横暴をほしいままにする戦争と抑圧の国際秩序か、国連憲章にもとづく平和の国際秩序か――この選択がいま、人類に問われている」。

 この三年間に、米国での同時多発テロ、アフガニスタンへの報復戦争、イラクへの侵略戦争など、世界をゆるがす激動があいついだ。これらの激動をつうじて、「二つの国際秩序の衝突」という問題が、二一世紀の人類の進路をめぐる根本問題の一つであり、大会決議が情勢の核心を先駆的に見とおしていたことが、鮮やかに浮きぼりとなった。そして、どちらの「国際秩序」の側に未来があるかも、すでに明りょうとなりつつある。

 (2)米国が、ブッシュ政権のもとで策定・推進してきた新しい軍事戦略は、つぎのような一連の要素からなりたっている。それはどれ一つをとっても、国連憲章にもとづく平和の国際秩序を根底からくつがえす、危険きわまりないものである。

 −−「テロ」、「大量破壊兵器」への対抗を名目にした先制攻撃戦略。

 −−国連の役割を否定し、米国の独断で武力行使をおこなう単独行動主義。

 −−軍事力による政権転覆、領土占領、政権の押しつけなど、新しい植民地主義。

 −−核兵器の一方的使用戦略と、使いやすい新型の小型核兵器の開発。

 −−将来、米国の競争者になる潜在的可能性を持つ国にも攻撃の矛先を向ける。

 これらをつらぬいている中心思想は、「今日においても、将来においても、世界に抜きんでた米国の軍事力を維持」し、「米国の原則と利益にそって、国際の安全保障秩序をつくりあげる」(ブッシュ政権の中枢を占めている理論政策集団の一つ「新しいアメリカの世紀のためのプロジェクト」による報告書「米国国防の再構築」、二〇〇〇年九月)ことにある。まさにいま米国は、「戦争と抑圧の国際秩序」を世界に押しつけようとしている。ここにあるのは、“一国覇権主義の暴走”ともいうべき世界支配のむきだしの野望である。

 しかし一国覇権主義は、すでに自己破綻(はたん)を深めている。その最初の本格的な発動となったイラク侵略戦争で、米英軍は、圧倒的な軍事力でフセイン政権を押しつぶしたが、無法な暴力にたいする歴史の審判が早くもくだされつつある。米英が、イラク戦争の「大義」とした「大量破壊兵器」はいまだに発見されず、これが歴史的捏造(ねつぞう)だったという疑惑がますます深まっている。米英軍による不法な占領支配がつづくもとで、それへの抵抗や暴力が広がるなど、イラク情勢の泥沼化が深刻になっている。アフガニスタンやイラクで現実に進行している事態は、戦争が、テロと暴力の土壌を拡大するだけで、その解決にはならないことを証明するものである。

 米国が、いかに比類ない軍事力を持っていたとしても、軍事力にのみ依拠した「国際秩序」などは、決してつくれるものではない。一国の力で戦闘に「勝利」することはできても、一国だけで平和をつくることはできない。米国のつきすすんでいる一国覇権主義の道には、決して未来はない。

 (3)二一世紀冒頭の三年間に浮きぼりになった新しい時代の特徴は、こうした危険で無法な逆流に抗して、国連憲章にもとづく平和の国際秩序を求める流れがめざましく成長し、国際政治を動かす大きな力となって作用していることである。

 −−イラク戦争にさいして、戦争が始まる前から、各国の国民が反戦・平和の声をあげ、地球的規模で史上空前の運動がわきおこった。超大国による戦争を未然に防ごうと、幾百千万の人々が立ち上がったのは、人類史でも空前の出来事だった。

 −−世界の政府の約七割が、公然と戦争反対の声をあげた。サミット諸国のなかにもフランス、ドイツ、ロシアなど平和の流れが生まれ、それは非同盟諸国、アラブ・イスラム諸国とも連帯し、さらに中国とも連携しながら、無法な戦争に反対する事実上の国際共同戦線をつくりあげた。

 −−国連安保理事会を舞台に激しい外交的たたかいがつづいたが、国連安保理は国連憲章にのっとった紛争の平和解決のための役割と機能をかつてなく発揮した。米国は戦争の正当性を最後まで得られないまま、深刻な外交的敗北のなかで、開戦に踏み切らざるをえなかった。

 これらは、二〇世紀から二一世紀への人類史の偉大な進歩を反映している。

 人類は、二つの世界大戦の悲惨な体験から国連を創設し、国連憲章をつくりあげて、戦争の違法化など平和の国際秩序の建設を目的として提起したが、それはすぐに世界平和のための現実の力となって働いたわけではなかった。

 一九六〇年代から七〇年代にかけての米国によるベトナム侵略戦争のさいには、国連は無力だった。各国政府のなかでもこの侵略戦争に公然と反対をかかげる政府は、当初はわずかにとどまった。ベトナム人民の不屈の闘争と、侵略戦争の泥沼化とともに世界に広がった各国民衆のたたかいとによって、米軍は歴史的敗北に追いこまれたが、そこに至る経過には二〇世紀の時代的な条件や制約が刻みこまれている。

 同時に、植民地体制の地球的規模での崩壊にくわえて、ベトナム侵略に反対する国際的なたたかい、そしてベトナムでの米国の敗北という冷厳な結果によって、平和の国際秩序が前進をとげたことも、事実である。非同盟運動が力を増し、国連憲章のもとでは大国も小国も平等であることが国際政治のなかで公然と語られるようになり、武力行使を禁止し、民族自決権を擁護する流れが着実に成長した。一九八〇年代に米国がグレナダ、リビア、パナマを軍事攻撃したことにたいしては、国連総会が侵略国を名指しして、国連憲章違反と非難する決議を採択する状況がつくられた。

 平和と民族自決をめざす諸国民のたたかいの積み重ねのうえに、二一世紀の世界がつくられている。各国人民のたたかいこそ、国連憲章にもとづく世界の平和のルールを築く力である。イラク戦争に反対した平和の巨大なうねりは、無法な戦争の後も、米国の一国覇権主義に反対し、平和の国際秩序を求める流れとなって広がり、国際政治を動かす生きた力として働いている。この力をさらに大きく発展させることによって、二一世紀が、超大国による無法な戦争を抑えることの可能な時代になる希望はおおいにある。

 (4)二一世紀における平和の流れの新しい特徴は、「政府、団体、個人の国際的共同」が現実のものになっていることにある。

 イラク戦争に反対するたたかいは、各国の民衆のたたかいと、世界の多数の国々の政府が、「国連憲章にもとづく平和の国際秩序」をめざして、大きな共同の流れをつくりだす可能性が、地球的規模で広がっていることを示した。

 核兵器廃絶を求める原水爆禁止世界大会が、世界各国の団体、個人とともに、少なくない政府の代表が参加する運動として発展していることも、きわめて重要である。

 日本共産党は、戦争と平和をめぐって二一世紀の世界の進路が根本から問われたこの三年間の激動のなかで、全国津々浦々で草の根から平和の行動にとりくむとともに、世界各国政府に働きかける野党外交に大きな力をそそいできた。平和を熱望する若い世代の運動の広がりも特筆すべきである。平和を願う地球的規模の巨大なうねりと呼応・連帯してとりくまれたこれらの活動が、未来に生きる力となって働くことは疑いない。

 わが党は、一国覇権主義に反対し、国連憲章にもとづく平和の国際秩序を築きあげるために、国内外でひきつづき力をつくすものである。

第二章「異常な対米従属」からの脱却を求めるたたかい

 (5)新しい綱領は、日本の現状について、「きわめて異常な国家的な対米従属の状態」と規定し、この従属体制の打破を、二一世紀の日本が直面する最大の課題の一つと位置づけている。今日の世界の現状から見ても、日米安保体制は、その異常な従属性においてきわだったものである。

 わが党は、前党大会決議で、一九九九年につくられた日米安保ガイドライン・戦争法と、北大西洋条約機構(NATO)の「新戦略概念」について、「アメリカを中心とする軍事同盟体制の危険を、新しい段階に高めるものとなった」と指摘し、両者に共通する特徴として、(1)「侵略にたいする共同防衛」という建前をかなぐりすてて、干渉と介入の戦争に同盟国を動員する軍事同盟へと変質をとげた、(2)他国にたいする武力攻撃を国連の決定なしでもおこなうことを公然と宣言している−−ことをきびしく批判した。

 しかしその後のNATOと日米安保をめぐる動きは、対照的である。構成国の多くがNATO加盟国でもある欧州連合(EU)が、二〇〇三年十二月の首脳会議で採択した「よりよい世界の中の安全な欧州」では、「われわれは国際法を擁護し発展させることを固く決意する。国際関係の基本的枠組みは国連憲章である。国連安全保障理事会は国際の平和と安全の維持に主要な責任を負っている。国連を強化して、その責任を全面的に果たせるようにし、効果的に行動できるようにすることは、欧州の優先課題である」と明記するなど、NATOの「新戦略概念」とは明らかに異なった方向性を持つものである。ここにはイラク戦争をへた国際情勢の発展が反映している。

 これにたいして、日米安保体制は、「真にグローバルな『世界の中の日米関係』」であることが確認され(二〇〇三年五月・日米首脳会談)、文字どおりの「地球規模の日米同盟」として強化され、米国が世界でおこなうどんな無法な戦争にたいしても無条件の支持を与え、米国の戦争への参戦・協力体制づくりをエスカレートさせている。アジアのあるマスメディアは、「『アメリカが願えば自衛隊はどこにでも行く』という等式が成り立ちはじめた」という懸念と批判をのべた。日米安保体制の侵略的・従属的な軍事同盟としての姿は、世界でも突出した異常なものである。

 (6)イラク戦争を契機に、国民のなかでも、日米軍事同盟の現状にたいする新たな批判が強まっている。米国にたいして一片の外交的自主性も示せない“安保絶対の国”でいいのか−−多くの国民が模索し、進路を探求している。軍事同盟にしばられ、巨大な軍事基地がおかれ、米国の無法な戦争に動員される体制を、永久不変と考える勢力には、およそ国の独立と未来を語る資格はない。

 日米安保体制は、軍事・外交・経済などあらゆる分野での対米従属の根源をなし、米国の先制攻撃戦略を支えるとともに、日本の軍国主義復活を推進し、世界とアジアにおける軍事的緊張の危険な根源の一つともなっている。わが党は、こうした日米安保体制の有害性を告発し、安保をなくした独立・非同盟・中立の日本が世界とアジアにどんな平和と友好の可能性を開くのかをおおいに語り、安保条約廃棄を求める国民的多数派をつくるために力をつくす。これは、民主連合政府の樹立に向けた国民的多数派を形成していく要をなす課題である。

 (7)同時に、日米軍事同盟体制の侵略的な強化に反対し、つぎのような直面する課題でのたたかいを発展させるために力をつくす。

 −−イラクへの自衛隊派兵に反対する……イラクへの自衛隊派兵に反対するたたかいは、直面する国政の最も熱い焦点の一つである。武装した自衛隊を現に戦闘がおこなわれている戦地に派兵することは、戦後はじめてのことであり、この問題は二一世紀の日本の進路にかかわる重大な問題である。無法な侵略戦争と不法な占領支配に軍事力をもって加担する自衛隊派兵は、日本国憲法を踏み破る暴挙であるとともに、アメリカの一国覇権主義に反対して、国連憲章にもとづく世界の平和秩序を求める諸国民の願いにそむく行為であり、アラブ・イスラム諸国の人々との友好を破壊する取り返しのつかない道に日本を引き込むことになる。国際的な道理にも、憲法の平和原則にもあいいれない、自衛隊のイラク派兵に反対する国民的なたたかいを広げ、この無謀な計画を中止・撤回させるために、全力をあげる。

 −−海外派兵国家づくりに反対する……テロ特別措置法、有事法制、イラク派兵法のあいつぐ強行成立など、海外派兵国家づくりは新たな段階に踏みこんでいる。海外派兵のための恒久法のくわだてもすすめられている。これらの動きは憲法を蹂躙(じゅうりん)した「集団的自衛権」−−海外での日米共同の武力行使に、本格的に足を踏み入れようとするものである。二〇〇三年の「防衛白書」が「自衛隊の国際的任務が、主要な活動の一つになった」と公言しているように、自衛隊の役割と機能、装備が、従来の「専守防衛」という建前をかなぐりすてて、海外派兵型の軍隊への危険な変貌(へんぼう)を急速にとげていることも、きわめて重大である。憲法を踏みにじる海外派兵法の発動・具体化・拡大を許さないたたかいを発展させることは、ひきつづく急務である。

 −−米軍基地国家から脱却するたたかい……アフガン戦争やイラク戦争でも出撃拠点とされた在日米軍基地は、ブッシュ政権の新たな世界戦略のもとで、米軍戦力を地球的規模の戦争に投入するハブ(中軸拠点)基地としてさらに強化されようとしている。沖縄・名護への新基地建設、神奈川・横須賀への原子力空母配備、長崎・佐世保の強襲揚陸艦を中心とした「遠征攻撃群」の新編成をはじめ、海外への“殴りこみ”専門の部隊の増強計画に反対する。米軍による犯罪や被害が多発するもとで、日米地位協定を改定し、治外法権的特権を是正することも、国民的要求である。日本の米軍駐留経費負担は他の同盟国二十四カ国の合計の一・六倍という異常なものであり、中小企業予算の一・三倍にまで膨張している米軍への「思いやり予算」(〇三年度、二千七百二十五億円)のすみやかな廃止を求めてたたかう。

 −−「ミサイル防衛戦略」への参加を許さない……米国のブッシュ政権がすすめている「ミサイル防衛戦略」とは、相手国のミサイル攻撃を打ち破り、無力化する態勢をつくることによって、米国の核戦略の優位を絶対のものとし、報復の心配がなく先制攻撃を可能にしようとする危険きわまりない宇宙支配の計画である。日本政府は、その開発・配備に、日本も参加することを決定したが、これは巨額の財政支出をともなうだけでなく、憲法を蹂躙した「集団的自衛権」の行使そのものとなり、地球的規模の米国の核戦略に日本を組み込む事態をまねく。この計画にたいして、すでに中国やロシアも強い懸念と批判を表明しており、アジア太平洋地域の国々との緊張を激化させる危険も重大である。「ミサイル防衛戦略」に反対し、日本の参加をただちに中止することを、強く求めてたたかう。

 「異常な対米従属」からの脱却を求めるたたかいは、国連憲章にもとづく平和の国際秩序を築くうえでも、重要な国際的意義を持っている。日本を、米国の無法な戦争の根拠地から、世界平和の拠点に変えるために、わが党は平和を願う多くの人々と手をたずさえて奮闘するものである。

第三章東アジアの平和と安定――北朝鮮問題の解決のために

 (8)前党大会決議は、東アジア地域に起こった「二つの平和の激動」として、東南アジア諸国連合(ASEAN)の動きと、朝鮮半島に起こった平和の動きに注目した。

 この三年間で、ASEANは、中国、インド、ロシア、EUなど、ユーラシア大陸の多くの国々と、国連憲章にもとづく平和の国際秩序をめざす連携を強め、平和と進歩の流れの強力な国際的源泉として、ますます有力で重要な役割を発揮している。

 ASEANの発展をふまえながら、日本、中国、韓国をふくめた東アジア全体で、各国の独自性、多様性を尊重しつつ、地域の平和確立を最大の目標にし、経済、文化面でも協力を発展させる共同体をつくる動きがすすんでいる。(1)米国と友好関係を持つが支配はされない、(2)どの国であれ覇権は認めない、(3)アジアの問題はアジアで解決する−−などの原則にたった東アジアの共同体が構想されていることは、重要な意義を持つものである。

 二一世紀の日本の未来は、東アジアの一員として、こうした平和と友好の流れに合流し、平等・互恵の立場でともに豊かになる経済関係を発展させるなど、積極的役割を果たすことにこそある。

 (9)一方、朝鮮半島をめぐる情勢は、二〇〇二年十月いらい重大化した核兵器問題を焦点としつつ、複雑で危険をはらんだ動きが展開している。

 北朝鮮問題の解決は、東アジアの平和と安定にとって不可欠の課題となっている。

 この問題は、この地域における戦争の現実の発火点になる危険をはらんでいる。北朝鮮が、核兵器開発に向けた動きをすすめ、“核カード”をもてあそぶ瀬戸際外交をつづけるならば、それは米国による無法な先制攻撃の絶好の口実となりかねない。また、軍事的対立がエスカレートするなかで、何らかのはずみで軍事紛争が起こり、拡大する危険性を否定することはできない。

 万が一にも、朝鮮半島で戦争が起こることになれば、数十万人という犠牲者が出ることは、当事者の米国によっても指摘されてきたことであり、どんなことがあっても戦争を起こさせてはならない。

 戦争の火種をなくし、軍事的衝突の危険をとりのぞくことは、国際社会が一致して追求すべき最優先の目標である。北朝鮮問題の解決は、あくまで外交的・平和的手段によるべきであって、戦争につながるあらゆる動きを許さないことが重要である。

 二〇〇三年八月末におこなわれた、米国、北朝鮮、中国、日本、韓国、ロシアによる六カ国協議で、各国の主張に大きな隔たりを残しつつも、「各当事者は、対話をつうじた平和的方式によって朝鮮半島の核問題を解決し、半島の平和と安定を擁護し、半島の恒久平和を切り開くことに尽力する」などの共通認識が得られたと発表されていることは、重要な一歩である。わが党は、この外交交渉のプロセスが継続・前進し、問題解決に道が開かれることを、強く求める。

 (10)外交交渉の前途を予断をもってのべることはできないが、わが党は国際社会がつぎのような原則を堅持して、問題解決にあたることが重要だと考える。

 第一に、核兵器問題を解決するうえでは、北朝鮮にたいして、核武装路線こそが最も危険であり、核兵器開発の道を放棄して、国際社会との安定した外交関係を打ちたてることこそ、自らの安全保障にとっても何よりも重要であることを、道理をもって説く外交をおこなうことが大切である。

 わが党は、一部の核保有大国が核兵器を独占する核不拡散条約(NPT)体制を批判してきた。しかし、それは地球的規模でのすみやかな核兵器廃絶をめざす立場からであって、新たな核保有国が生まれることを容認するものではもちろんない。ましてや、いったんこの条約に加盟して、核兵器を保有しない意思を表明した国が、一方的に脱退を表明して、核開発の道にのりだすことは、いかなる理由によっても認められない。くわえて、北朝鮮は、韓国、米国、日本などとの間で、核兵器を保有しないとする国際的なとりきめを結んでおり、それを一方的に反故(ほご)にすることも、許されるものではない。

 北朝鮮は、核兵器開発をすすめる「論理」として、「強力な軍事的抑止力を保有」することによってのみ「民族の安全を守る」ことが保障されるとしている。しかし現実には、そうした「抑止力」論にたった核武装路線こそが、国際社会からの孤立を深め、自らを深刻な危険にさらしているのである。北朝鮮がこの道を放棄して、国際社会による公正な査察を受け入れるならば、いかなる国であっても北朝鮮を攻撃する口実をつくりだすことはできないであろう。

 第二に、北朝鮮が、国際社会との安定した外交関係を打ちたてるためには、これまでこの国がおかしてきた数々の国際的な無法行為の清算は、どうしても避けて通ることができないことである。

 北朝鮮は、国連に席を持ち、多くの国と外交関係を結んでいる。しかし、その関係は、安定した国際関係とはいえないものである。その最大の障害になっているのが、これまで北朝鮮がおかしてきた国際的な無法行為−−ビルマ・ラングーンでの爆弾テロ事件、日本漁船銃撃事件、大韓航空機爆破事件、麻薬などの不正取引、そして日本人拉致事件などが、清算されていないことである。

 日本人拉致事件の解決は、被害者、家族にとってはもとより、北朝鮮が国際的な無法行為を清算していくうえでも、重要な意味を持つ。日本人拉致事件については、北朝鮮は、ともかくも一定の事実を認め、不十分ではあっても公式に謝罪をしているからである。この一歩を、無法行為全体の清算という方向に前進させることが求められている。この立場にたてば、拉致問題の解決は、日朝間の二国間問題にとどまらず、無法行為の清算を求めるという国際社会全体がとりくむべき課題のなかに位置づけることができる。

 国際的な無法行為の清算によって、近隣諸国や世界各国と安定した外交関係を打ちたてる−−真の意味で国際社会の仲間入りをすることこそ、北朝鮮にとっても、平和と安全の最大の保障となることを、国際社会は道理をもって説く必要がある。

 第三に、それぞれの当事国が、軍事的対応の悪循環におちいるのではなく、それを断ち切る立場にたつことが重要である。

 一方で、米国・ブッシュ政権は、北朝鮮を「悪の枢軸」の一つと名指しして軍事的に威嚇し、先制攻撃戦略の発動の対象としているが、どの国にたいしてであれ、無法な先制攻撃は許されるものではない。他方で、北朝鮮は、核兵器開発をカードにした瀬戸際政策を繰り返してきたが、こうした態度も平和への脅威をつくりだしている。こうした軍事対軍事の対立の悪循環が、事態を危険なものとしている。

 軍事的対立の悪循環をもたらす行動を、米国、北朝鮮の双方ともに強く自制することが必要である。日本をふくむ関係国は、両者の軍事的対立を助長するのでなく、抑制する方向で対応することが、強く求められる。

 この点でも、二〇〇三年八月の六カ国協議において、「各当事者は、和平交渉のプロセスにおいて、情勢をエスカレートあるいは激化させうる言行をとらない」、「各当事者はいずれも、半島は非核化されるべきであると主張するとともに、安全保障などの面での北朝鮮の懸念を考慮し解決する必要性を認識した」という共通認識が得られたと発表されているのは、注目される。交渉のなかで、北朝鮮をふくむすべての国の主権と領土の不可侵の原則を、関係諸国が確認し、順守することが必要である。

 (11)日本共産党は、北朝鮮が、一九六〇年代後半に危険な「南進」政策をとろうとしたさいにも、一九七〇年代に当時の指導者・金日成の個人崇拝を押しつけてきたさいにも、一九八〇年代に入って顕著になった数々の国際的無法行為にたいしても、こうした行為はおよそ社会主義とは無縁のものであることを、自主独立の立場から先駆的に、また最もきびしく批判しつづけた党である。

 同時に、この数年来、北朝鮮問題が、東アジアの平和と安定にとって重大な問題となるもとで、日朝両国の政府間に外交ルートを無条件で開くこと、核兵器問題、拉致問題、植民地支配の清算問題などを、交渉によって包括的に解決することなど、問題の理性的解決のための積極的提言をおこなってきた党である。

 北朝鮮問題が道理ある解決を見れば、東アジア地域の平和および新たな繁栄と友好の大きな道が開かれる。日本国民にとっても、平和な国際環境への前進となり、軍国主義復活の潮流は、それをすすめる口実を失うだろう。わが党は、国内外で、北朝鮮問題の理性的解決のために、ひきつづき力をつくすものである。

第四章日本共産党の野党外交の到達点と展望

 (12)この数年来、わが党の野党外交は、めざましく発展した。その出発点となったのは、一九九七年の第二十一回党大会で、アジア外交重視の方針を決定したことであった。九八年の中国共産党との関係正常化と日中両国共産党の首脳会談は、これを具体化する第一歩の条件をつくるものとなった。野党外交の発展のうえで、画期的な転換点となった方針は、一九九九年六月の第二十一回党大会四中総の方針だった。この方針は、主に共産党間の交流という従来の枠にとどまらないで、相手が与党であれ野党であれ、どのような立場の政党であっても、またさまざまな国の政権とも、双方に交流開始への関心があれば、世界の平和と進歩のために、おおいに交流をはかっていくというものであった。

 この方針は、まず東南アジア諸国歴訪(マレーシア、シンガポール、ベトナム、香港)として具体化され、さらに中東諸国歴訪(ヨルダン、イラク、エジプト、サウジアラビア、カタール、アラブ首長国連邦)、南アジア諸国歴訪(インド、スリランカ、パキスタン)、北アフリカのチュニジア訪問などをつうじて、諸外国の政権や政権党などとの公的な関係が大きく広がった。タイで開催されたアジア政党国際会議、マレーシアで開催された非同盟諸国首脳会議や第一回東アジア会議、イスラム諸国会議機構(OIC)首脳会議などにも、わが党代表が正式メンバーあるいはゲストとして参加した。

 イラク戦争の危機にさいして、わが党は、中国、中東、南アジアなどを訪問し、各国政府と平和解決のための努力をはかるという一致点を確認するとともに、節々で表明した党の見解を各国の在日大使館などに伝える活動にとりくんだ。野党外交の進展によって、わが党が、生きた国際政治に直接、正面から働きかける大きな道が開かれた。また、直接の交流をつうじて、わが党の現代世界にたいする認識・知見が、豊かに発展した。

 さらに日本の政治と外交の問題点も、いっそうリアルに見えるようになった。わが党が訪問した国々はどこでも、二一世紀にどういう国をつくるかについて、困難や矛盾を抱えながらも、自主的な目標を持ち、それぞれのやり方で自主的な国づくりにとりくんでいる。そういう世界にあって、日本だけがとびぬけた対米追随外交に縛りつけられ、自主的な国づくりの展望も目標も持てないでいる。この対比は、野党外交のとりくみのなかで、強く実感されたことであった。

 (13)わが党の野党外交は、世界のどこでも通じる。それは、わが党が、二一世紀の世界にあって、大多数の国の共通の立場になりつつある“世界の公理”にたって働きかけているからである。この間、わが党が打ちたててきたつぎのような理論的・政治的立場が、野党外交の現場で、大きな生きた力を発揮した。

 −−国連憲章にもとづく平和の国際秩序を守る……わが党はイラク戦争に反対する国際的合意を広げるにあたって、「アメリカ帝国主義反対」でなく、相手がだれであれ、国連憲章にもとづく平和の国際秩序を破るものは許さないという立場で共同を探求することが重要であると訴えた。そうした立場で話しあえば、世界の多くの国の政府と一致点が確認できることは、とりくみをつうじて実証された。

 −−公正で民主的な国際経済秩序をめざす……わが党は、前党大会決議のなかで、経済の「グローバル化」(地球規模化)にどう対処するかについて、単純な「グローバル化反対」の立場を排し、“アメリカを中心とした多国籍企業と国際金融資本の利益優先の世界化でなく、諸民族の経済主権が保障された公正で民主的な世界化”という方針を確立した。この立場は、発展途上国の政府などとの対話で、相手が現実に抱えている問題ともよくかみあって、大きな力を発揮した。

 −−異なる価値観を持った諸文明間の対話と共存をはかる……わが党の野党外交は、イスラム世界の多くの国々との交流の扉を開いたが、そのさいに心がかよう大きなカギとなったのが、この立場だった。自分たちの特定の価値観を絶対のものとして、それを全世界に押しつける有害な流れが氾濫(はんらん)しているだけに、イスラム社会の独自の社会発展の歴史と内容、民主主義への模索と前進の過程を尊重し、対話と共存をはかるという立場をつらぬくことは、重要な意義を持っている。

 (14)わが党が野党外交にとりくんで実感するのは、わが党とどこの国との関係でも“反共の壁”がなくなっているということである。たとえば、わが党が交流を広げたイスラム諸国の多くでは、共産党が禁止されているか、存在していない。しかし、そうした国々にも、わが党代表が訪問し、友好的な交流の関係を築くことができた。

 なぜ、そうした国々もふくめ多くの国々と信頼と共感の関係が築けるのか。さまざまな要素があるが、日本共産党が、日本軍国主義の侵略戦争に反対をつらぬいた党であること、そして、どんな大国の横暴も認めない自主独立の立場をいっかんして堅持してきた歴史を持つ党であることを先方が知ったときに、それがわが党への信頼の大きな源泉となることは、少なくない国々との対話で体験してきたことである。日本共産党の路線と歴史の力が、世界で生きて働くことは、われわれの大きな誇りである。

 そして世界各国の人々との対話で、相手が驚嘆をまじえた反応を示すのは、「日本共産党は、全国で四十万人をこえる党員、二万五千の党支部、二百万人近い『しんぶん赤旗』読者、四千人をこえる地方議員を持ち、草の根で国民と結びついて日夜活動している」という自己紹介をした時であった。わが党の外交活動を支える力は、こうした全党の草の根の力にこそある。

 わが党の外交活動の前途は、未来に向けて大きく開かれている。この分野でも、わが党の活動が、さらに実り豊かな発展をかちとるために、ひきつづき力をつくす。

第五章国民生活を守る諸闘争――たたかいによって暮らしを守るルールを

 (15)自民党政治の経済政策の行き詰まりと破綻のもとで、いま国民の暮らしは未曽有の危機にさらされている。とくに小泉内閣の三年は、「構造改革」の名で、巨額の国民負担増の押しつけ、大企業のリストラ応援、中小企業つぶしが横行し、国民生活のあらゆる分野での荒廃と破壊が加速した三年半だった。政府の「国民生活に関する世論調査」でも、「生活の不安」を訴える人は67%と、史上空前となっている。

 こうした現状を打開するために、わが党がどう立ち向かうか。二〇〇一年十月の三中総決定は、国政の場での政策的対応とともに、党が「たたかいの組織者」の役割を果たすことがとくに大切だとして、つぎのように提起した。「政府や大企業の陣営が、労働者や国民を犠牲にするどんな無謀な攻撃も平気で強行できる、これは明日の日本の社会のために、どうしても打開する必要がある現状であり、文字どおり二一世紀の日本社会が直面する最大の問題の一つがここにある」。三中総のこの提起は、日本社会のあり方そのものを大きく変える、長期的な構えにたったたたかいを呼びかけたものだった。

 この方針をうけて、わが党は各分野の国民運動と共同してとりくみを強めてきた。

 −−無法なリストラにたいして、全国各地の職場で、「職場にルールを」をスローガンにかかげ、不当な解雇、転籍などとのたたかいが広がった。「サービス残業」をめぐるたたかいでは、政府に二度にわたって根絶のための具体的措置をとらせ、この約二年半の間に、二百五十億円をこえる不払い賃金を支払わせるなど、大きな前進の一歩を踏みだした。「青年に仕事を」の要求をかかげた署名運動が開始されるなど、若い世代のたたかいでも新たなうねりが起きつつある。

 −−大企業の一方的な工場閉鎖や、地域金融を担ってきた信用組合・信用金庫を無理やりつぶすなどの攻撃にたいして、党、労働組合、民主団体、自治体などが共同した、地域経済、地域金融を守るたたかいが広がった。地域ぐるみの運動によって、工場閉鎖計画を撤回させたり、雇用を確保させるなどの成果も生まれている。

 −−社会保障をめぐっては、健康保険自己負担を三割に引き上げる暴挙にたいして、医師会・歯科医師会・薬剤師会・看護協会などもふくめ、これまでになく幅広い国民的共同の運動が広がり、署名は三千万筆におよび、ひきつづき自己負担軽減という要求をかかげて発展している。

 これらの前進は、初歩的な一歩である。同時に、これらは、深刻な生活危機のもとで、日本国民のなかに、たたかいに立ち上がる大きな潜在的エネルギーが蓄積し、広がっていることを示している。そして、このエネルギーに依拠してたたかいに立ち上がるなら、国民生活破壊の悪政が横行するもとでも、暮らしを守る一定の成果を現実にかちとりうることを示している。

 (16)生活危機打開を願う国民の要求は、労働者、勤労市民、農漁民、中小企業家、知識人・文化人、女性、青年、学生、高齢者など、それぞれの階層によって、きわめて多面的な広がりを持っている。また、都市と農村・地方、それぞれの地域ごとにも、生活をめぐる要求は、独特の特徴を持っている。国民の切実な要求の全体を視野に入れた、多様で壮大なたたかいを発展させる必要がある。

 そのなかでも、自民党政治による生活破壊の攻撃とのたたかいの直面する焦点として、つぎの三つの課題での国民的運動を呼びかける。

 −−リストラに反対し、安定した雇用を拡大するたたかい……大企業のリストラ競争と、それを応援する政治のもとで、雇用をめぐる状況はかつてなく深刻である。失業が戦後最悪になっただけでなく、国民の所得が急激に減りはじめている。大企業は競いあって、正規雇用労働者を減らし、パート、アルバイト、派遣・契約社員などの不安定雇用におきかえる動きをすすめている。その一方で、過労死をまねく異常な長時間労働がさらにひどくなり、違法な「サービス残業」がはびこっている。若者の雇用問題は、とりわけ深刻な社会問題となっている。無法なリストラに反対し、「サービス残業」の根絶と長時間労働の是正、年休の完全取得をはかり、安定した雇用を拡大し、雇用と労働のルールを確立するためのたたかいの発展が、強く求められている。雇用の七割を支えている中小企業の経営基盤に踏み込んだ支援を拡充することを要求する。

 −−社会保障の連続改悪に反対し、安心できる社会保障制度を築くたたかい……毎年のようにくりかえされる社会保障予算の強引な削減は、連続的な負担増、給付減となって国民に襲いかかり、社会保障という本来なら暮らしの安心の支えとなるべき制度が、国民の生活不安の大きな根源となっている。とくに二〇〇四年度にも計画されている年金制度の大改悪に反対するたたかい、医療費のとめどもない負担増をやめさせ負担軽減を求めるたたかい、高すぎる保険料・利用料など介護保険の矛盾を改善するたたかいは、当面する焦点である。わが党は、税金の使い方をあらためる歳出の改革と、将来は、大企業・高額所得者に応分の負担を求める経済民主主義に立った歳入の改革をすすめることで安定した社会保障財源を確保する政策的展望を示しつつ、社会保障の連続改悪に反対するたたかいを発展させるために、力をつくす。

 −−消費税の大増税計画を打ち破る国民的闘争……消費税率を二ケタに引き上げる大合唱が始まっている。「二〇一四年度には16%に」(日本経団連)、「二〇二〇年度には19%に」(経済同友会)など、財界団体から増税を求める声がつぎつぎにあがり、政府税制調査会も中期答申で「二ケタ税率化」を明記した。二〇〇三年の総選挙では、自民党と民主党が、消費税増税を「政権公約」で公然と打ち出した。同年末には、自民党と公明党が二〇〇七年度をめどに消費税をふくむ「抜本的税制改革」をおこなうことで合意した。消費税大増税に向けた暴走が始まろうとしている。消費税は、税率10%なら総額二十五兆円、税率16%なら四十兆円もの恐るべき巨額の収奪となる。国民が黙っていたら、この方向が「既定事実」にされかねない状況である。

 消費税は何よりも、所得の少ない人に重くのしかかる逆累進性を本質とする最悪の不公平税制である。税率引き上げは、逆累進性をいっそう深刻にし、ただでさえいちじるしく拡大しつつある貧富の格差に追い打ちをかけ、庶民生活と日本社会に荒廃をもたらすものである。

 消費税は、税を価格に転嫁しきれず、身銭を切って納税している、多くの中小零細企業にとっては営業破壊税である。税率引き上げは、不況に苦しむ業者を倒産・経営困難に追いこむ深刻な事態をまねくものである。

 さらに消費税が、景気破壊税であることは、九七年の消費税増税をはじめとする九兆円の負担増が、弱々しい足取りながらも回復を始めていた日本経済をどん底におとしいれた経験からも明らかである。長い不況に国民生活も日本経済も疲弊しきっているもとで、増税計画を持ち出すなど言語道断である。

 「社会保障の財源のため」という増税の口実は成り立たない。消費税導入から十五年間の税収の累計は百三十六兆円にのぼるが、同じ時期に法人三税の税収は累計で百三十一兆円も減収している。消費税導入・増税とセットで、法人税減税がくりかえされてきた結果である。国民からしぼりとった消費税は、大企業への減税の財源としてのみ込まれてしまったのである。いまおこなわれている財界の提言でも、消費税の大増税が法人税のいっそうの減税や社会保険料の企業負担分の軽減とセットで打ち出されている。「社会保障の財源のため」でなく、「大企業の税・社会保険負担のいっそうの軽減のため」−−ここに真実がある。

 日本共産党は、天下の悪税−−消費税の廃止をいっかんして求めている党である。同時に、いま暮らしも経済も破壊する消費税大増税が強行されようとしているもとで、それに反対する一点での広大な国民的共同とたたかいが急務である。わが党は日本列島津々浦々からこの運動を起こすことを、心から呼びかける。

 (17)日本の食料と農業は、歴史的な危機に直面している。食料自給率は、低下をつづけ、家族経営の多くは存続すら危ぶまれている。農業の破壊は、国土・環境の保全や地域経済の維持にとっても深刻な影響を与えている。また、輸入食品の残留農薬問題やBSEなど「食の安全」が脅かされ、多くの消費者、国民が不安を強めている。産業政策のなかで、農業を基幹的な生産部門として位置づけ、その再建をはかり、食料自給率を計画的に向上させることは、緊急の国民的課題となっている。

 日本では農業予算のうち、価格・所得保障にあてられているのは、わずか27%と三分の一にもみたず、欧米諸国で農業予算の五割から七割を価格・所得保障予算にあてているのと比べても、異常な少なさである。この根本には財界の農業つぶしの戦略がある。財界は、くりかえし農産物の価格保障の廃止を求める提言をおこない、家族経営をつぶして農業を大規模経営と株式会社にあけわたせと、圧力をかけつづけてきた。小泉政権は、全面的な食料・農産物の輸入依存を前提に、価格と需給安定にたいする国の責任を放棄し、「米政策改革大綱」では、一定の規模以上(都府県四ヘクタール以上、北海道十ヘクタール以上)の大規模経営農家と法人しか担い手として認めないというすでに破綻した政策をいっそう乱暴に押しつけ、圧倒的多数の家族経営をしめだそうとしている。このままでは、日本農業の崩壊が一気にすすむことになる。政府・財界の農業破壊政策とたたかい、価格・所得保障の抜本的拡充と家族経営がなりたつ農政への抜本的転換を強く求めてたたかう。

 二〇〇三年九月にカンクン(メキシコ)で開かれたWTO(世界貿易機関)閣僚会議では、多国籍企業の利益優先で農産物貿易のいっそうの拡大を主張するアメリカなど輸出大国に対して、NGOや多くの発展途上国から反対の声が高まり、矛盾が深刻化している。世界的な食料不足が懸念されているもとで、農業の全分野を一律に貿易自由化の対象にするやり方をあらため、日本の米など各国の食料自給で中心的位置を占める農産物を輸入自由化の対象からはずし、各国の「食料主権」の確立をめざすことは、国際連帯の重要な課題になっている。

 食料・農林漁業政策を根本から転換し、とめどもない輸入拡大を抑えると同時に、農産物の価格・所得保障を抜本的に充実させ、家族経営を支える農政の確立と食の安全を守るたたかいを前進させることが求められる。農村、都市を問わず、日本国民の存亡にかかわる問題として、国民的運動の発展のために力をつくす。

 (18)日本における「ルールなき資本主義」といわれる現状は、長期にわたる自民党政治と日本独占資本主義の反動的支配が生み出したものだが、同時に、労働者、国民にたいする不当な攻撃がかけられたときに、それにたいする社会の側からの反撃のたたかいが弱いこととも、結びついたものであることを直視する必要がある。

 欧州諸国では、一九八〇年代から九〇年代にかけて、保守的政権のもとで、「規制緩和万能論」が強まり、労働者のたたかいによってかちとってきた労働のルールを壊そうという逆流が強まった。それにたいして、フランス、ドイツ、イギリスなどで、数百万人という規模で労働者が参加したゼネストをはじめ、強力な反撃のたたかいが起こった。このたたかいは、個々の企業での賃上げや労働条件の改善をかちとるにとどまらず、解雇規制をはじめとする労働のルールを守り、前進させた。さらに、「企業の社会的責任」がEU全体の共通の認識となり、雇用や環境などの分野でそのための法令が整備されるとともに、情報公開の強化などをつうじて企業に自主的努力を促す方策がすすめられている。欧州では、無法な攻撃にたいする社会的大反撃の闘争のなかから、暮らしと労働を守るルールをつくりあげてきたのである。そしてこれらのルールが、欧州経済の安定性と強さの一定の基盤ともなっていることにも注目すべきである。

 日本国民も、たたかいによってルールをかちとった歴史的経験を持っている。一九六〇年代から七〇年代にかけての国民のたたかいは、いまに生きる暮らしを守る重要なルールをかちとっている。七〇年代のオイルショックに便乗して一方的な整理解雇の攻撃が吹き荒れたさい、全国の労働者の強力な反撃がわきおこり、七〇年代後半に全国各地の裁判所の判決で「整理解雇の四要件」と呼ばれる一方的解雇を規制する判例体系が形成され、労働者の権利を守る重要なルールとして確立した。六〇年代後半から大きく発展した公害反対の住民運動は、「四大公害裁判訴訟」をへていっそう前進し、七〇年には「公害国会」を開かせ、公害対策を大企業を拘束しない範囲にとどめていた従来の公害対策基本法を改正させ、環境を守るルールの重要な前進がはかられた。世界に類をみない職場での異常な思想差別にたいして、長期の困難な闘争をたたかいぬき、東京電力、中部電力、関西電力など、すべての裁判で勝利をかちとり、こうした野蛮な思想差別を許さないルールを確立したことも、たたかいの成果である。女性の賃金差別を許さないたたかいも重要な前進をかちとった。

 しかし、一九八〇年の「社公合意」路線と戦後第二の反動攻勢のもとで、日本の労働組合運動の右傾化の傾向が顕著になった。労働者の権利や生活向上の要求を抑え込もうという労資協調主義が横行した。こうして、勤労者の生活と権利を守る社会的たたかいの力を大きく弱める事態がつくりだされていることを、直視する必要がある。

 当面の国民の切実な要求を実現するうえでも、民主連合政府とそれをになう統一戦線を実現するうえでも、この弱点を克服し、不当な攻撃には強力な社会的反撃をもってこたえる社会へと前進していくための、本腰を入れたとりくみが重要である。“たたかいによって暮らしを守るルールを”−−この立場にたった大闘争が求められる。

 (19)このとりくみのなかで、日本共産党が「たたかいの組織者」としての先駆的役割を発揮することがきわめて重要である。たたかいの旗印をかかげ、その大義を明らかにし、一歩でも二歩でも現実に成果をかちとり、大衆団体の運動と組織の強化のために努力をはらい、立場の違いをこえた広い人々との共同をつくりあげるなど、わが党の果たすべき責任はきわめて大きい。すべての職場支部、地域支部、学生支部、青年支部、党グループが、国民のたたかいのたのもしいよりどころとしての役割を果たすことが求められる。

 とくに、たたかいの大義を明らかにし激励する、政策・理論活動を展開することは、わが党の重要な責務である。たとえば、無法なリストラに反対するたたかいの意義は、たんに労働者の生活と権利を守ることにとどまらない。リストラ競争は、国民所得をへらし、個々の企業の思惑をこえた経済の縮小をつくりだし、日本経済の長期停滞・衰退の一因となっている。コスト削減のための不安定雇用の拡大は、企業の生産性を低下させる事態を引き起こしている。雇用破壊が、社会保障の担い手を土台から弱め、医療や年金制度の深刻な空洞化をつくりだしている。こうした状況のもとで、無法なリストラに反対するたたかいは、日本経済、日本社会の持続的な発展にとっても国民的大義を持つ課題となっている。

 国民にたたかいをあきらめさせ、そのエネルギーを眠り込ませる攻撃が強められているもとで、一つひとつのたたかいの課題について、それがどういう国民的大義を持っているのかを明らかにしていくことは、わが党が果たすべき重要な役割である。この役割を果たすうえで、今日のマスメディアの状況とのかかわりでも、「しんぶん赤旗」の存在と役割は、きわめて大きい。

 (20)わが党は、国民運動の各分野で、多数者をめざす民主的な大衆運動の発展のために力をつくす。わけても労働組合運動が、労資協調主義の弱点を克服して発展することが重要である。

 いま大企業の「リストラも賃下げも」という攻撃のもとで、戦後の伝統的な労資協調主義の理論であった、企業の生産性の向上に協力してこそ労働者の生活もよくなるという、いわゆる「パイの理論」が破綻し、労働組合の原点が根本から問われる新しい事態が生まれている。このもとで大企業側は、「労働者の生活と権利を守り、労働諸条件の改善をはかる」という労働組合の原点すら放棄させ、労働組合を企業の利潤追求と生産活動を補完する組織へと変質させようという動きを強めている。これは労働組合の文字どおりの自殺行為であり、広範な労働者との矛盾を激しくしている。端緒的であるが、ほんらいの労働組合のあり方をとりもどそうという動きも各地にあらわれつつある。いま日本にたたかう労働運動をとりもどしていく客観的条件は、おおいにある。

 このなかで全労連が、階級的ナショナルセンターとして、労働者の切実な要求を実現するとともに、国民的要求を担って前進することが、強く期待される。たたかいをつうじて、未組織労働者や、不安定雇用の労働者のなかでの組織の拡大をすすめ、ナショナルセンターの違いをこえ一致する課題での共同をひきつづき探求することが重要である。

 わが党の職場支部は、その企業で労働組合がどんな立場をとっていようと、労働組合が未確立の職場であろうと、労働者の利益を守り、たたかいを組織する拠点としての役割を担っている。この二十数年来の攻撃にたえて守り抜いてきた陣地は、きわめて重要な財産である。要求実現の活動をつうじて職場の労働者と広く深く結びつき、陣地を維持・拡大し、つぎの世代への継承を計画的・系統的にかちとるため、知恵と力をつくす。

 国民要求を実現するための各分野でのたたかいを発展させる努力と結びつけて、統一戦線運動の前進をかちとる。今日の統一戦線の基本は、わが党と広大な無党派の人々との共同を広げることにある。わが党は、全国革新懇運動の地域、職場からいっそうの発展をかちとるために、力をそそぐものである。

第六章憲法改悪反対の一点での、広い国民的共同を呼びかける

 (21)憲法九条を焦点とした改憲論の策動は、新たな危険な段階に入っている。政府による従来の解釈改憲が限界に達するなかで、明文改憲の危険が現実のものになりつつある。つぎのような特徴を持った危険な動きが進行していることに、強い警鐘を鳴らさなければならない。

 −−憲法を蹂躙して、一連の海外派兵法が強行され、自衛隊派兵が拡大されてきた。政府はこれまで、海外での自衛隊の活動について、「武力行使と一体にならない支援は許される」という詭弁(きべん)をろうしてきたが、こうした詭弁と戦火がなおつづくイラクへの派兵計画などを両立させることは、いよいよ不可能となってきた。

 −−小泉政権のもとで、明文改憲が現実の政治日程にのぼりつつある。首相は、自民党結党五十周年にあたる二〇〇五年十一月をめどに党の憲法「改正」案をとりまとめるように指示し、その前に憲法「改正」の国民投票法案の成立が必要だと、あからさまに明言した。首相が具体的期日を設けて改憲案とりまとめを指示したのは、戦後かつてなかったことである。

 −−国会状況をみても、二〇〇〇年一月に衆参両院で憲法調査会が設置され、こんご一年内にも最終報告書を提出するとされている。自民、民主、自由、公明、改革クラブなどから衆参で三百人以上が参加した憲法調査推進議員連盟は、憲法改定の発議にかかわる国会法「改正」案と、憲法改正国民投票法案をまとめている。自民党、公明党にくわえ、民主党が二〇〇三年の総選挙を前に「創憲」だとして憲法をつくりかえる立場を公然と打ち出した。こうしていま、わが党と社民党以外の主要政党が、改憲の立場と、それぞれの改憲の方針を打ち出している。与野党の壁をこえ、改憲論が大きな流れをつくりだしつつある。

 (22)改憲論は、けっして日本国民の要求から生まれたものではない。二〇〇〇年十月にアーミテージ現米国国務副長官が中心になって作成した対日報告書が、「集団的自衛権を禁じていることが両国の同盟協力を制約している」として、集団的自衛権の行使を求めたことが、自民党・財界の軍国主義復活をめざす志向と結びついて、あいつぐ海外派兵立法の強行と改憲論横行の起動力となった。

 米国が無法な覇権主義の戦争を引き起こしたさい、この戦争に地球的規模で日本が参加するうえで、その最大の障害となっている憲法九条をとりのぞき、歯止めなき海外派兵に道を開く−−ここに改憲策動を推進している勢力の最大のねらいがある。この動きは、国連憲章にもとづく平和の国際秩序を求める世界の流れにまっこうから逆らうものである。

 憲法九条を擁護することは、わが国の恒久平和の進路を確保するうえで重要であるだけではない。それは、米国による一国覇権主義を許さない世界をつくることと、不可分に結びついた重大な国際的意義を持つたたかいである。この間のわが党の野党外交においても、アジア・中東の諸国民が、日本にたいして望んでいることが、「九条を持つ国」として国際平和のために先駆的役割を果たすことにあることは、強く実感されたことであった。

 日本共産党は、憲法改悪に反対し、その平和原則にそむくくわだてを許さないという一点での、広い国民的共同の大闘争を呼びかける。わが党はこの闘争のなかで、首尾一貫した憲法擁護論を持つ党として、その真価を発揮して奮闘する。

第七章社会の道義的な危機を克服する国民的対話と運動を

 (23)日本社会の直面している危機には、政治的危機、経済的危機だけでなく、道義的危機というべき深刻な問題がある。この危機は、子どもたちにもっとも深刻な形で影響をおよぼしている。重大で衝撃的な少年犯罪があいつぎ、いじめ、児童虐待、少女買春などが起きていることにたいして、多くの国民が不安を持ち、心を痛めている。

 わが党はこれまでも、人間をおとしめ、粗末にする風潮とたたかい、健全な市民道徳を形成するための対話と運動をすすめることを、くりかえし呼びかけてきた。党自身の責任としても、前党大会の規約改定において、「市民道徳と社会的道義をまもり、社会にたいする責任をはたす」ことを、党員の最優先の義務と位置づけてきた。

 今日あらためて、社会の道義的な危機を克服する課題−−わけても子どもたちに健全な成長を保障することを、二一世紀に民主的な日本社会を築いていくとりくみの重要な内容の一つに位置づけ、国民的な対話と運動でともに解決方向を探求し、現状打開のための努力を強めることを呼びかけるものである。

 (24)今日の道義的危機の根本には、自民党政治のもとでの国民の生活、労働、教育などにおけるゆがみや矛盾、困難の蓄積があり、それらの民主的打開のために力をつくすことが重要である。

 たとえば大企業のリストラ競争のもとでの雇用破壊や長時間過密労働は、家族のだんらんやコミュニケーションを破壊している。「勝ち組・負け組」といった弱肉強食の競争至上主義の風潮がつくられ、他人を思いやるゆとりが奪われ、国民の精神生活にも殺伐とした雰囲気が持ち込まれている。若者の深刻な雇用危機は、青年の社会参加の権利を奪い、就職・結婚・子育てなど、将来の希望を閉ざす重大な問題となっている。

 国連子どもの権利委員会は、日本政府への勧告のなかで、「極度に競争的な教育制度によるストレスのため、子どもが発達のゆがみにさらされている」とするきびしい批判をよせた。自民党政府が長年つづけてきた世界でも異常な競争主義の教育、管理主義の教育は、子どもたちの心と成長を、深刻に傷つけている。政府・自民党は、今日の教育の矛盾と困難の原因を教育基本法に求め、その改悪の策動を強めているが、これはまったく根拠も道理もないものである。反対に、政府・自民党が長年にわたって、教育基本法に明記された民主的教育の理念と原則−−「人格の完成」を教育の根本目的とし、国家権力による「不当な支配」を許さないなどの理念と原則を踏みにじってきたことこそが、今日の教育をめぐる矛盾と困難をつくりだしているのである。わが党は、教育基本法改悪の動きに、強く反対してたたかう。

 政治や経済にかかわるあいつぐ腐敗・不正事件は、子どもにとってはかりしれない有害な影響をおよぼしている。この分野での道義的腐敗の一掃は、健全な社会道徳を築いていくうえでも、きわめて重要である。

 さらに、他国への戦争をけしかけ、テロを容認し、あおりたてる政治家の発言が問題となったが、こうした発言の生まれる根本にはアジア諸民族を侮蔑(ぶべつ)する独善的な排外主義の潮流が一部に台頭しつつあるという危険な状況がある。

 市民道徳に有害な影響をおよぼしている、自民党政治のもとでのさまざまなゆがみや矛盾をただすたたかいが必要である。わが党は、日本社会を「民主的なルールある社会」にするたたかいを、日本社会に健全なモラルを確立していく課題と一体のものとしても位置づけ、力をつくすものである。

 (25)これらの努力をはかりつつ、それには解消できない、社会が独自にとりくむべき問題として、わが党は、つぎの四つの角度からのとりくみを呼びかける。

 −−民主的社会にふさわしい市民道徳の規準の確立……民主的社会の形成者にふさわしい市民道徳の規準を、国民的な討論と合意で確立していくことは、今日とくに重要である。

 戦前、わが国の「道徳」は、「教育勅語」を中心として、天皇絶対の専制政治への忠誠に国民をかりたてることを第一に、国家権力から押しつけられた強制的規範としてつくられた。それは真の意味での市民道徳とは無縁のものであり、この「道徳」のもとで、他民族への侵略戦争という人間の道義を蹂躙した蛮行がおこなわれた。

 この歴史的誤りの反省のうえにつくられた日本国憲法と教育基本法は、戦後の民主的な市民道徳を形成していくうえでの土台となりうるものだった。すなわちそれは、主権在民の原則、人権と人格の尊重、平和的な国家および社会の形成者、真理と正義の探求、勤労と責任の尊重、男女の平等・同権など、人類の進歩に立脚した普遍的価値観をふくんでいる。これらを土台にして、民主的社会の形成者にふさわしい市民道徳の規準を確立するための、さまざまな自主的なとりくみもおこなわれてきた。

 わが党も、一九七〇年代、八〇年代に、教育の場で、学力、体育、情操とともに、市民道徳を身につける教育の重要性を呼びかけ、九七年の第二十一回党大会決議では、市民道徳にふくめるべき内容として、十項目の諸点を提起してきた。

 こうした努力にもかかわらず、“何を市民道徳の規準とするか”という問題について、必ずしも国民的合意が存在しているとはいえないという現状がある。これは、政府によって上からの押しつけで決めるべき問題でなく、もとより一つの政党が決める問題ではない。社会的に認知された市民道徳の規準を、国民的な討論と合意によって形成することが重要になっていると考える。

 −−子どもを守るための社会の自己規律を築く……「子どもに対して特別の保護を与える」(子どもの権利条約)という、社会が持つべき当然の自己規律の面で、日本が国際的に見ても重大な弱点をかかえていることは、深刻な問題である。

 少女買春など性の商品化が子ども社会をむしばんでいるが、この分野での社会の自己規律は、国連子どもの権利委員会から、「児童のポルノグラフィー、売春および売買を防止し、これとたたかうための包括的な行動計画が欠けている」と勧告されるなど、国際的に見てもきわめて不名誉な地位にある。

 メディアやゲームの映像などにおける暴力や性のむきだしの表現が、子どもにたいして野放しにされていることにも、多くの国民が心を痛めているが、この分野の自己規律も、わが国は国際的にきわめておくれている。さらに、子どもをもうけの対象とみて、その欲望をかりたてつつ、子どもに大量の商品を消費させている社会のあり方も、世界から見ればきわめて異常な状態である。

 サッカーくじは、子どもたちが買えないことが建前とされたが、実態は子どもたちを巻き込むギャンブルとなっている。政府・文部科学省が、子どもを引き入れる賭博の胴元になっている現状は、とうてい容認できない。

 幼児虐待の増加などにもかかわらず、子どものための専門機関の整備が遅れていることも放置できない問題である。

 この分野での日本社会の異常な立ち遅れを克服し、子どもの健全な成長を保障する社会の自己規律を確立することは、急務である。

 −−子どもの声が尊重され、社会参加する権利を保障する……子どもの意見表明権や社会参加の権利を、学校や地域など社会の各分野で保障することは、子どもの世界を明るく積極的なものにするうえで大切なことである。

 少年事件や少年問題の原因はさまざまだが、その背景の一つに、子どもの自己肯定感情(自分を大切な存在と思う感情)が深く傷つけられているという問題があることは、多くの関係者・専門家が共通して指摘していることである。自己肯定感情が乏しければ、他人を人間として大切にする感情も乏しいものとならざるをえない。国際比較調査でも、「自分自身への満足」「私は価値ある人間である」と感じている子どもの比率が、日本ではきわめて小さいことは憂慮すべきことである。

 子どもたちが、自分が人間として大切にされていると実感でき、みずからの存在を肯定的なものと安心して受け止められるような条件を、家庭でも、地域でも、学校でも、つくることが切実に求められる。

 そのためにも、子どもの声に真剣に耳をかたむけ、子どもの思いや意見を尊重し、子どもを一人の人間として大切にする人間関係を、社会の各分野でつくることは、きわめて重要である。子どもが自由に意見をのべる権利を保障し、その意見を尊重し、子どもの社会参加を保障するとりくみが求められる。社会の一員として尊重されてこそ、自分を大切にし、他人を大切にし、社会のルールを尊重する主権者として成長することができる。

 子どもの権利条約は、「子どもに影響を与えるすべての事柄について自由に自己の見解を表明する権利を子どもに保障し、その意見は子どもの年齢および成熟度に応じて正当に重視される」と定めている。世界では、生徒が学校運営に参加するなど、子どもの社会参加が大きな流れになっている。この間、日本でも、学校や地域など、さまざまな場で、子どもの意見表明や参加を重視する新しい流れが起こっている。こうした積極的な流れを、大きく前進させることが大切である。

 −−子どもの成長を支えあう草の根からのとりくみを……家庭、地域、学校が共同して、子どもたちの成長を見守り、悩みにこたえ、支える、草の根からの運動をすすめる。市民道徳は、言葉だけでなく、現実の人間関係、社会関係をつうじてこそ、身についていくものである。

 いま全国各地で、読書運動、舞台・映画鑑賞、スポーツ、リズム体操、自然・社会体験、自主的子ども組織づくりなど、豊かな人間関係を育てていくための多面的なとりくみが広がっている。いじめ、非行、不登校、ひきこもりなど、子育てに悩む親たちの自主的な組織も無数に生まれている。党がこれらの草の根からのとりくみを応援し、ともに解決の方途を見いだしていくことが、重要になっている。

 社会的道義の問題は、モラルの問題という性格からいって、上からの管理、規制、統制、押しつけを強めるという立場では、解決できないどころか、有害な作用をおよぼすだけである。少年犯罪の加害者の親に制裁と報復をくわえるのが当然とする閣僚の発言は、その最悪のあらわれの一つである。

 この問題は、国民の自発的な力に依拠してこそ解決の道が開かれる。わが党は、社会の道義的危機を克服し、未来をになう子どもたちに健やかな成長を保障する社会をつくるための、国民的な対話と運動を呼びかけるものである。

第八章参議院選挙をたたかう政治方針と活動方針について

 (26)七月の参議院選挙は、イラク派兵と憲法問題など平和をめぐっても、年金や消費税問題など国民生活をめぐっても、二一世紀の日本の進路を大きく左右するたたかいとなる。日本共産党にとっては、新しい党綱領を決めて初めての国政選挙であり、綱領の内容を国民的規模で語る最初の大きな舞台となる。

 二〇〇三年の総選挙の総括と教訓の基本点については、十中総で明らかにした。わが党は、総選挙の教訓と結果をふまえ、比例代表選挙では五議席を「絶対確保議席」として必ず獲得するとともに、選挙区選挙ではすべての選挙区に候補者を擁立してたたかい、七つの現職区での勝利のために全力をあげる。

 (27)わが党は、つぎの政治方針を堅持して、この政治戦をたたかいぬく。

 第一は、自民党政治の打破を正面にすえ、日本改革の提案をおおいに語ることである。

 総選挙後の情勢の特徴は、小泉内閣が、イラク派兵、憲法改悪、年金改悪、消費税増税などの重大な悪政をつぎつぎに具体化し、あらゆる分野で自民党政治と国民との矛盾がいっせいに噴き出していることである。

 いま小泉内閣によってすすめられている悪政は、どの問題をとっても、「アメリカいいなり」「財界が主役」という自民党政治の古い枠組みと結びついたものである。イラク派兵と憲法改悪など平和の危機の根本には、日米安保体制を絶対視する異常な対米従属の枠組みがある。年金改悪と消費税大増税という国民生活にかけられた重大な攻撃の根本には、大企業・財界の横暴で身勝手な戦略と、その意のままに動く政治のゆがみがある。

 この自民党政治を公明党がささえ、政治的にも組織的にも深い影響力を行使するようになっていることは重大である。みずからを批判するものを「仏敵」として「撲滅」の対象とするなど、反民主主義の体質を根深く持つ政教一体の公明党・創価学会が、国家権力の中枢にますます強く入り込もうとしていることは、日本の民主主義の前途に重大な危険をもたらすものであることを直視し、その危険と正面からたたかう。

 参議院選挙では、小泉・自公政権がすすめる平和と暮らしを破壊する悪政の一つひとつを告発することと結びつけて、「アメリカいいなり」「財界が主役」という自民党政治の枠組みそのものを打ち破ることを正面にすえ、わが党の日本改革の提案を語りぬくことを、政治方針の第一にすえて奮闘する。

 第二は、同じ自民党政治の枠内での「政権交代」「二大政党制づくり」では政治は変えられないことを具体的事実で明らかにしていくことである。

 総選挙を契機として、日本の政党地図−−政党状況に大きな変化がおこった。消費税増税、憲法改悪、選挙制度改悪など、日本の進路にかかわる重大問題で、自由党と合併した民主党が、自民党政治と同じ流れに合流し、財界からもアメリカからも信頼されるもう一つの保守政党になろうという動きが、急速にすすんだ。

 この動きは、財界主導でつくられたものだったが、総選挙後の民主党の動きをみると、財界の要求にさらに身をよせる姿勢を強めていることが特徴である。民主党は、参議院選挙にむけても、「政権交代の土台を築く」「二大政党制の流れを定着させる」ことを、ひきつづく最大の政権戦略にしている。しかし、財界に身をよせ、自民党政治と同じ枠内での、「政権交代」や「二大政党制」では、「政治を変えたい」という国民の願いにこたえることはできない。

 民主党の政策と立場は、自民党と全分野で同じになったわけではない。イラク特別措置法にもとづく自衛隊派兵に反対するなど、自民党の悪政に反対する一致点での国会共闘は今後もありうることである。

 同時に、国政の根幹にかかわる問題で、民主党の立場に大きな変化がおこったことをふまえ、国民の利益に反する政策と行動の問題点を、具体的事実にもとづいて広く明らかにすることを重視してたたかうことが重要である。

 政党間の論戦をすすめるさい、一昨年から昨年にかけて、財界が、従来の財界と政治との関係−−政治の責任は政権党におわせながら財界が支援をするという関係を根本的に変え、財界が直接のりだして政界を再編成し、政界を自らの直接の支配下におく新たな動きを本格的にすすめていることを正確にとらえ、それを念頭においてとりくむことが重要である。財界がいますすめているのは、つぎの新しい諸特徴を持った政治にたいする総合的で直接的な介入・支配の戦略である。

 −−財界として政策目標を発表し、その目標にそくして政党の政策を評価し、その政策の実現のために政党に企業献金のヒモをつける−−企業献金をてこにした政策買収のシステムをつくる。

 −−財界の意のままに動く保守「二大政党制」をつくる。その狙いは、一方の保守政党が危機におちいったときに、安心できる「受け皿」となる保守政党をつくるだけでなく、二つの保守政党に財界への忠誠を競わせて、財界のどんな要求にも即応してこたえて働く政治をつくることにおかれている。

 −−日本共産党など、財界の野望の実現の障害になる政党を、政界から排除する。「政権選択選挙」「マニフェスト選挙」はそのための道具だてであり、選挙制度を小選挙区制一本にする動きがたくらまれていることは重大である。

 もともと財界のこの動きは、自民党の支持基盤が崩れ、自民党一党では財界の支配を維持できないという危機感から出発したものであり、支配体制の危機の産物にほかならない。そしてこの動きは国民との間に深い矛盾をかかえている。消費税増税と憲法改悪は、わが党が国民とともに大反撃のたたかいをもってこたえるならば、支配体制を根本から揺さぶる政治的激動につながる重大な問題である。保守「二大政党制づくり」によって排除されるのは、少数意見だけではない。国民多数の声である。わが党は、国民多数の声にたって、財界による日本の政治の直接支配の野望−−それに追従する諸党の実態を告発・批判し、これを許さない論陣を、おおいに展開していく。

 第三は、日本共産党の全体像−−路線、歴史、実績などを押し出すことである。

 政策論戦とともに、新しい綱領を縦横に活用して、党の全体像−−「日本共産党はどんな政党か」「どんな日本をめざしているのか」「どんな歴史を持っているのか」「どういう活動をおこない、どういう実績をあげているのか」などを押し出し、広い有権者に党をまるごと信頼していただけるような宣伝と対話を、選挙戦をたたかう政治方針の重要な柱にすえる必要がある。

 反共攻撃を打ち破ることも、選挙戦での勝利に不可欠であるが、そのさいにも、攻撃への反論にとどまらず、その反撃をつうじて、わが党の立場とその値打ち、反共攻撃をおこなった者の意図と役割を、有権者により広くわかってもらえるように論戦をすすめることが、何よりも大切である。今日の反共攻撃の波は、反動・反共陣営の側からすれば、戦略的位置づけを持ったものである。すなわち、危機におちいった自民党政治を延命させるとともに、かりに自民党が一時的に政権を失っても、日本共産党さえ抑えつけておけば、「政界再編」的な乗り切りと、支配体制の継続はいくらでも可能となる−−そうした戦略的な位置づけでの攻撃だけに、その打破には本腰を入れたとりくみが必要となる。

 改定された綱領は、わが党がめざす未来社会−−社会主義・共産主義の社会について、広範な国民に理解を広げる、たしかな理論的土台を築くものとなっている。新しい綱領を生かして、どのようにわが党がめざす未来社会の宣伝をすすめていくかは、新しい探求と努力が求められる課題である。

 北朝鮮問題は、国民が強い関心をよせている問題である。この問題とかかわって、平和解決のためのわが党の外交論とともに、わが党の自主独立の歴史などを広く明らかにしていくことも必要である。

 わが党は国民のたたかいと共同して、「サービス残業」問題や、介護保険の問題をはじめ、現実政治を動かす数々の実績をかちとってきた。自民党政治の根本的改革の旗印を持つ党をのばしてこそ、現実に暮らしと平和を守るたしかな力となることを、訴えることが大切である。

 以上の政治方針の全体を全党がしっかりにぎって選挙戦をたたかい、参議院選挙で問われる争点は「自民か民主か」でなく、本当に自民党政治を打破する勢力−−日本共産党がのびるかどうかにあることを広く明らかにしていく。

 (28)参議院選挙をたたかう活動方針としては、以下の点が重要である。

 第一は、比例代表選挙を選挙戦はもとより、あらゆる党活動発展の軸にすえることである。すなわち、比例代表選挙で前進をかちとることを、全国どこでも選挙戦の文字どおりの中心にすえること、さらには要求活動や党勢拡大でも比例代表選挙での前進をかちとることに焦点をあて、そのためにどれだけのとりくみの発展をはかるかの目標と計画を持って意識的に追求するなど、あらゆる党活動の軸に比例代表選挙をすえることが重要である。

 第二は、比例代表選挙で五議席の「絶対確保議席」を獲得する積極的意義を全党のものにし、全党の一致結束した力で必ず達成することである。

 比例代表での五議席の「絶対確保議席」の獲得という目標は、総選挙での到達をリアルに直視しつつ、全党の奮闘いかんでは達成可能な、現実的で積極的な目標として設定したものである。この目標は、総選挙での到達を大幅に前進させる−−全国的には得票で四百五十八万から約六百十万、得票率で7・8%から10%以上へと、得票を133%以上に増やす大奮闘があってはじめて達成できるものである。この目標をやりとげることは、次期総選挙での失地回復の土台を築くことにもなる。

 参議院選挙の比例代表選挙では、全国すべての都道府県・地区委員会、支部が、五議席の「絶対確保議席」という目標をやりとげるために、総選挙比で133%以上の得票を獲得することを絶対の責任として、それぞれが決めている得票目標、支持拡大目標の達成のために全力をあげる。

 この激戦に勝ち抜くうえで、比例代表選挙についての新しい方針の持つ意義を、あらためて全党の共通の認識にすることは重要である。この方針では、投票の訴えは、「日本共産党名または候補者名で投票してください」とすることにした。この方針は、(1)総選挙をみても、有権者が政党そのものを選択する様相が強まっているもとで、政党選択を前面にすえてこそ勝利への道がつかめること、(2)党名でも個人名でも、どちらでも支持を広げやすい方法で自由闊達(かったつ)に広げることができる方針となっていること、(3)「絶対確保議席」の目標としてさだめた候補者の当選を保障する方針ともなっていることなど、改悪された非拘束名簿式比例代表選挙という条件のもとで、合理的で積極的な方針であることを、全党と後援会がよくつかんで、とりくむようにする。

 そのさい五議席を、全党の一致結束した力で達成することを、強く全党の自覚にすることが必要である。それぞれの地域の党組織は、その地域の候補者の当選にだけ責任を負っているのではない。全国どの地域でも、党派間のしのぎを削る競り合いのなかで、党名と候補者名での得票を徹底的に広げ、総選挙比で133%以上の得票をえて、それぞれの得票目標をやりとげ、その地域の候補者とともに、五人全員必勝のために共同して責任を負うという見地が、何よりも重要となる。文字どおり「日本は一つ」「全国は一つ」の立場で、力をあわせて奮闘する。

 第三に、選挙区のたたかいでは、ここでも政党選択−−比例代表選挙を中心にすえるという見地をつらぬきつつ、七つの現職区の勝利のために全力をつくす。

 わが党は、全国すべての選挙区に候補者を擁立してたたかう。それぞれの選挙区候補者が、有権者との結びつきを強め、どれだけ党への信頼と支持を広げるかは、重要な意義を持つ。選挙区のたたかいでも、比例代表での五議席絶対確保に、いかに貢献するかという見地にたった活動を中心にすえてとりくむことが、たたかいの基本となる。政治論戦も、選挙区で立候補している政党だけを対象にした狭い視野のたたかいにせず、すべての政党を視野に入れての論戦という見地が大切である。

 七つの現職区では、比例代表での五議席絶対確保とともに、選挙区の議席を死守するという二重の任務を持って、もてるあらゆる力を結集し発揮するたたかいを展開し、勝利をめざす。そのさいにも、政党選択−−比例代表選挙を中心にすえ、日本共産党の前進の波をつくりだすことと結びつけて、勝利をめざすことが鉄則である。

 七つの現職区では、比例代表での全国目標の達成に必要な水準を大きく上回る得票目標が必要となる。すでにそれぞれの選挙区で積極的な得票目標を決めているが、これをやりぬくには、要求活動でも、宣伝活動でも、組織活動でも、党勢拡大でも、これまでやったことのない量と質のとりくみを展開し、どの分野でも、どの地域でも、他党を凌駕(りょうが)する気概で奮闘することが求められる。

 六年前とくらべて有利な条件−−現職議員として活動し、それぞれの選挙区の有権者の願いを国政にとどける「かけ橋」としてのかけがえない役割をはたし、多くの実績をかちとっていることをフルに生かす。候補者が交代する選挙区も、それまでの実績と役割を明らかにし、それを引き継ぐという見地のたたかいが重要である。

 第四は、草の根での宣伝・組織活動を「支部が主役」で推進することである。

 選挙活動は、「四つの原点」にもとづく活動が基本だが、そのどの分野でもみずから決めた得票目標を達成することに照準をあて、それにみあったとりくみをすすめる必要がある。

 その第一項目の「国民の切実な要求にもとづき、日常不断に国民のなかで活動し、その利益を守るとともに、党の影響力を拡大する」ことは、広く国民の心をとらえる土台となるものである。平和と暮らしをめぐる国政の大問題から、日常的な職場や地域、学園の要求にいたるまで、国民の要求実現のためのたたかいを起こし、要求で結びつきを広げ、その生きたつながりを選挙勝利に実らせることが大切である。

 かつてやったことのない規模と速度で、草の根での宣伝・組織活動−−対話と支持拡大、ポスター、ビラ、ハンドマイク、後援会活動、党勢拡大などを展開することは選挙戦の目標達成に不可欠である。全国すべての都道府県・地区委員会、支部が、それぞれの党組織が到達した過去最高の対話・支持拡大の峰をこえる運動を、期限を設定して早い時期にやりきる活動にとりくむ。そのさい、“名簿”と“地図”を整備・活用して、「対面での対話」−−人間と人間との生きたつながりにもとづく対話を組織活動全体の骨格にすえながら、電話をふくむあらゆる手段を使って全有権者への働きかけをやりきるようにする。

 対話・支持拡大を早い時期から前進させるうえで、後援会ニュースを活用したくりかえしの対話活動は重要である。いっせい地方選挙でも、総選挙でも、これに本格的にとりくんだところでは、党活動のあり方を一新する大きな力を発揮した。後援会とも相談・協議して、二百七十万人の後援会員に、系統的に働きかけ、後援会員をさらに拡大し、ともに活動するとりくみを、おおいに発展させる。

 多くの都道府県で、大きな規模での演説会とともに、支部主催の演説会・小集会の積極的なとりくみの計画がたてられているが、これはきわめて重要である。参議院選挙にむけて、全国の地域、職場、学園の文字どおりのすべての党支部で、支部主催の演説会・小集会にとりくみ、「支部が主役」の選挙戦を飛躍させる跳躍台として成功させる。

 第五は、総選挙の失地回復を自覚して、参議院選挙をたたかう力にすることである。

 総選挙のとりくみについては、十中総の問題提起に対応して、今後、本格的なとりくみを具体化する。

 参議院選挙のなかで重要なことは、比例代表選挙の候補者地域が、衆院比例ブロックの組み合わせでできているもとで、各比例ブロックが、参議院選挙のなかで、比例代表での五議席絶対確保、七現職区勝利などとのかかわりで、総選挙での失地回復を意識的に追求し、得票増をはかることにある。衆院比例候補者、小選挙区候補者が、参議院選挙の比例・選挙区候補者と一体になって、先頭にたって奮闘することも重要である。

第九章地方政治の現状ととりくみの強化方向

 (29)新しい綱領は、「全国各地で革新・民主の自治体を確立することは、その地方・地域の住民の要求実現の柱になると同時に、国政における民主的革新的な流れを前進させるうえでも、重要な力となる」とのべ、地方政治において党が影響力を広げ、民主的改革をはかることの重要な意義を、位置づけている。

 地方政治では、日本共産党以外の「オール与党」がなお支配的であり、自治体が住民の暮らしと福祉という本来の仕事を放棄して、「自治体が自治体でなくなる」状況は、いっそう深刻になっている。

 いま「国から地方へ」を合言葉に誘導しようとしている方向は、これをさらに推進するものである。自治体の「自立」の名のもとに、国の責任を放棄して、福祉や教育の最低水準を保障してきた地方への財政支出が大幅に削減されようとしている。一方で、「受け皿」となる行政規模の確立を口実に、「市町村合併」を押しつけるなど、自治体統制を強化している。これらは、「地方分権」どころか、地方自治の破壊そのものである。

 政府がすすめる「三位一体の改革」なるものは、国から地方への財政支出削減、とくに福祉・教育など住民サービスの水準切り捨てを具体化しようとするものである。これは地方・農村部では、「市町村合併」の押しつけとあいまって、自治体をまるごと切り捨てる動きとなってあらわれている。都市部には、財源を集中しようとしているが、これも住民生活のためには使われず、「都市再生」と呼ばれる新しい浪費型巨大開発に集中的に財源を投入するという動きが強まっている。都市部でも地方・農村部でも、「オール与党」政治と、住民との矛盾は、いよいよ深刻である。

 現在、強引にすすめられている「市町村合併」の押しつけは、自主的な地域の発展と暮らしの向上をさまたげ、地方自治をおかすものである。それだけに、各地で「合併反対」の選択が広がるなど、住民の新たな変化と共同が生まれている。合併後の姿が具体的になるにつれ矛盾がふきだしている。住民の利益にたって「合併押しつけ反対」のたたかいをいっそう前進させる。

 日本共産党は、自治体の変質をすすめるこうした流れと対決し、住民要求をになって、「自治体らしい自治体」をとりもどしていくたたかいの先頭にたって、ひきつづき奮闘する。日本共産党が与党の地方自治体は、党員首長の自治体をふくめて、全国で約百自治体に広がっている。保守層をふくめた無党派の人々が、みずからの地域と自治体の将来を真剣に考えるなら、日本共産党との共同を選択するしかないという状況が全国各地で広がり、新しい希望ある流れの前進となって実を結びつつある。この流れを、ひきつづき広げ、攻撃から守り、前進させることは、わが党の重要な仕事である。

 (30)地方自治体をめぐる矛盾の深まりのなかで、旧来の「オール与党」体制に亀裂が広がり、支配の枠組みの崩れも生まれている。首長選挙でも、自民・公明を中心とした「オール与党」の基盤の上に乗っても、なお現職や後継の候補者が敗れるといった状況が全国各地で生まれていることは、注目すべきである。

 同時に、その内容は一様ではない。そこには従来の「逆立ち」政治をただして、「住民が主人公」の自治体をとりもどしていこうという前向きの変化の要素を持つ流れもある。「無党派」を名乗りながら、住民犠牲のいっそうの反動政治を自治体に押しつけようという流れもある。両者の要素が複雑に入りまじり、今後の動向を見定める必要があるものもある。自治体ごとに、事実にそくした具体的な分析をおこない、正確な対応をしていくことが求められる。

 こうした状況のもとで重要なことは、どんな場合でも、住民要求を実現する立場にたって、日本共産党としての地方政治改革の旗印を、鮮明に打ちたてることである。また党議員団の力量を質量ともに高める努力をはらうことである。前向きの変化の要素がある流れが起こった場合にも、わが党のこうした努力があってこそ、自治体全体の前向きの変化につながりうることは、全国の経験が証明している。

 (31)全国で四千人をこす日本共産党地方議員(団)は、わが党の大きな財産であり、草の根から住民の暮らしを守るかけがえのない役割を果たしている。

 この力が、つねに住民の利益を守って献身し、政治的水準を高め、国政でどんな風波があってもその陣地を維持し、前進させることは、国政と地方政治の民主的改革にとって決定的意義を持つものである。

 今年の沖縄県議選、来年の東京都議選をはじめ、一つひとつの中間地方選挙で、着実に勝利をかさねるとりくみを、特別に重視する。全自治体の三分の一近くある党議員空白自治体(約九百六十自治体)を克服するために、計画的・系統的なとりくみをすすめる。

第十章どんな激動のもとでも選挙で勝てる強大な党をどうつくるか

 (32)どんな激動のもとでの選挙戦でも揺るがず前進できる、強大な党をつくりたい−−これは、前大会いらい参院選、いっせい地方選、総選挙という三つの全国的政治戦をたたかって、全党が痛切に感じていることである。

 この痛切な思いと教訓にたって、当面する最大の政治戦である参議院選挙での目標達成にむけ、選挙戦の中心課題として、量・質ともに強大な党を築くとりくみに、全党が総力をあげてとりくむようにする。

 前党大会以降、全党は、二回にわたる党勢拡大の「大運動」にとりくむなど、強大な日本共産党を建設するための努力をかさねてきた。党建設の事業は、党の活動のなかでももっとも粘り強く、目的意識的な努力が必要とされるものであり、これを日夜支え、前進のために情熱とエネルギーをそそいでいる全党の同志の奮闘にたいして、心からの敬意をもってたたえたい。

 前党大会以降、党員拡大では、全党の努力によって四万人をこえる新しい入党者を迎えた。しかし、「党員拡大五カ年計画」にてらせば、それは初歩的一歩にすぎない。「しんぶん赤旗」の読者拡大は、一部の支部と党機関では前進を始めているが、全党的には、多くの同志の奮闘と努力があるものの、後退傾向を脱していないことは重大である。若い世代の結集の問題では、平和のたたかい、雇用危機打開の運動などで、民主的結集の手がかりをつかみつつあるが、それを党建設に実らせることは、今後のとりくみにかかっている。

 党建設を前進させるための基本方針は、前党大会決定と、一連の中央委員会総会決定で、詳細に明らかにされている。その中心点はつぎの諸点である。

 −−“いまなぜ党建設か”について、(1)どのような政治情勢が展開しても政治戦をかちぬく力を持った党をつくることが重要であるとともに、(2)二一世紀をたたかう党をつくるうえで、党の歴史のなかでも、いまが党建設に思い切って力を入れるべき歴史的時期であることをしっかりつかむ。

 −−党員拡大を「党建設の根幹」と位置づけ、二〇〇五年までに、過去最高の峰をこえる五〇万の党を建設することを目標とする「党員拡大五カ年計画」をたて、計画的・系統的にこれを達成する。党員拡大の立ち遅れを、全党の総力を結集して打開することは、ひきつづく党活動の緊急・中心課題である。

 −−“「しんぶん赤旗」中心の党活動”、すなわち「機関紙は、党中央と全党を結ぶきずなであり、党と国民との結びつきを広げる最良の媒体であり、国民の要求にもとづく運動、国会や地方自治体でのたたかい、選挙活動や党建設、財政活動など、党のあらゆる多面的な活動を促進し、統一し、発展させていく中心である」という原点に立ちかえり、この分野の活動を継続的・安定的に発展させる。

 −−党の質的水準の向上では、(1)その地方・地域での日本共産党を代表しての政治活動、大衆活動を重視する、(2)「支部が主役」をつらぬく、(3)選挙戦の推進・指導に熟達する、(4)党活動を財政的に支える計画的活動、(5)幹部・活動家の系統的な育成、(6)党の政治的・理論的水準の向上という、六つの重点的な努力方向を追求する。

 −−若者の多面的な要求にこたえる活動を強め、大胆に党に迎え入れるとりくみを、わが党と日本の民主的改革の事業の死活的な未来がかかっている問題として位置づけ、党の総力をかたむけて前進をはかる。

 (33)以上の基本方針を土台にしながら、参議院選挙にむけて党建設をどうすすめるかについて、量と質の両面からつぎの活動方針を堅持してとりくむ。

 −−党勢拡大の目標……党勢拡大で、つぎの目標を全党の総力をあげてやりぬきながら、参議院選挙をたたかう。

 「しんぶん赤旗」の読者拡大では、すべての都道府県・地区委員会、支部が、昨年の総選挙時比で130%の読者の陣地を築いて参議院選挙をたたかうことを目標にし、これに正面から挑戦する。参議院選挙の比例代表選挙で、総選挙比で133%以上の得票を獲得するためには、党と国民との結びつきの前進・後退の最大のバロメーターである読者の陣地を130%に拡大することは、必要不可欠の課題である。

 党員拡大を「党建設の根幹」に位置づけ、「二〇〇五年までに五〇万の党を築く」という目標を堅持し、それぞれの党組織が、参議院選挙までにやりとげるべき目標を明確にして、この課題でも本格的な前進をめざす。

 −−総選挙時比130%の読者拡大にとりくむ……総選挙時比130%の読者拡大は、全党に不退転の決意と構えを求める一大事業であるが、参院選の目標達成を本気でやりきろうと考えるならば、それにとって必要不可欠の課題となるものである。

 党勢の後退という問題は、この間の三回にわたる国政選挙での後退から、私たちが導き出してきた最大の痛苦の教訓であった。わが党は、二〇〇〇年の総選挙、二〇〇一年の参院選、二〇〇三年の総選挙を、読者数の大きな後退のなかでたたかった。この三回の国政選挙は、反共謀略攻撃、「小泉旋風」、「政権選択選挙」など、どの選挙もわが党の前進をはばむ客観的に複雑で困難な条件のもとでの選挙であり、それだけに党の基礎力量がストレートに問われるたたかいになった。選挙で後退した要因と教訓については、それぞれの選挙ごとに明らかにした個々の反省点も重要だが、三回の国政選挙に共通する私たちの最大の反省点は、読者の数が後退するなかで選挙をたたかったことにあったことを、いまあらためて銘記する必要がある。

 「真実を伝え、正義の世論をおこす旗」である「しんぶん赤旗」の読者数が後退していて、わが党が選挙戦で掲げた目標達成をかちとることはできない。比例代表の五議席絶対確保でも、七現職区勝利でも、目標達成の立場に真剣にたつならば、すでにのべた正確な政治方針と活動方針を堅持して選挙戦の諸課題に全力をつくすとともに、党の基礎力量−−党勢拡大で大きな上げ潮をつくりだしながら選挙をたたかうことが、どうしても必要である。

 前回選挙比で130%以上の読者の陣地を築いて、つぎの選挙戦での勝利をめざすというのは、一九七〇年代後半から八〇年代の時期には、全党が当たり前のように追求してきた選挙戦の鉄則であった。

 この方針は、党が躍進をかちとった一九六九年の総選挙、七二年の総選挙で、いずれも全国的に前回比130%前後の読者数で選挙をたたかったこと、とくにこの二つの総選挙で新たに議席をえた選挙区の大半は、前回比130%をこえる党勢でその難関突破に成功したなどの経験と教訓をふまえて、打ち立てられたものだった。この方針は、戦後第二の反動攻勢のもとで党がふみとどまるうえで大きな力となった。

 ところが、この十年来、衆議院の選挙制度が小選挙区比例代表並立制にかわり、「国政選挙そのものの影が薄くなる」といった状況が生まれたこととも結びついて、「大きく強い党をつくって選挙をたたかおう」という執念を燃やしたとりくみが弱くなってきている。一九九〇年代後半、わが党は政治戦で連続的な躍進をかちとったが、この時期にも党勢は全体として停滞・後退傾向を打開することができず、政治的影響力の広がりに、党の組織の実力がおいつかないという事態を克服することができなかった。最近の三回にわたる国政選挙での後退は、わが党のこうした根本的弱点があらわれた結果だった。

 この現状を思い切って建てなおすことが、強く求められている。参議院選挙にむけて、総選挙時比130%の読者拡大の目標をかかげ、それに正面から挑戦することをその第一歩にすることが、強く求められている。

 「機関紙中心の党活動」という方針を、参議院選挙にむけた活動で具体化する必要がある。選挙戦そのものを、「しんぶん赤旗」をよく読み、読者を増やし、読者とともにたたかう、機関紙中心のたたかいにしていくなかで、総選挙時比130%という目標に正面から挑戦し、選挙戦でかかげた得票目標、議席獲得の目標達成をかちとっていくことが重要である。

 −−「しんぶん赤旗」のかけがえのない役割……「しんぶん赤旗」は、“真実を伝え、正義の世論をおこす旗”である。マスメディアの多くが、理想を持たず、権力になびき、真実をゆがめるなどの大きな問題点を持っているもとで、「しんぶん赤旗」は、日本国民が世界と日本の大きな流れ、そこにつらぬかれている真実をつかみ、日本社会に正義の世論を広げていくうえで、なくてはならない新聞である。

 「しんぶん赤旗」は、“あたたかい人間的連帯の旗”である。自民党政治のもとで、弱肉強食の競争至上主義と、人間をおとしめ粗末にする風潮が広がり、社会の道義的危機が深刻になるもとで、人間と人間とのあたたかい社会的連帯のネットワークをつくりだしているのが、「しんぶん赤旗」である。

 「しんぶん赤旗」は、“たたかいの旗”である。世界の平和秩序をつくるたたかいを発展させるためにも、日本で暮らしを守るルールをつくるたたかいを前進させるためにも、民主主義と人権を守る運動をすすめるうえでも、そのよりどころとなるのが「しんぶん赤旗」である。

 そして、「しんぶん赤旗」は、わが党の議会活動、選挙闘争、財政活動もふくめて、“あらゆる党活動を支える旗”である。日本共産党は、企業・団体の献金を受けとらず、政党助成金の受けとりも拒否し、国民にのみ依拠した自立した財政基盤を持つ党である。この特質こそ、わが党がどんなタブーも持たず、国民の立場にたって奮闘することを保障している。党の財政的基盤を支えるうえでも、「しんぶん赤旗」を前進させることは、正念場ともいうべき事態にある。

 全党の力を結集して、国民と党にとってのこのかけがえのない“旗”の前進、発展をかちとろう。

 −−「五〇万の党」をめざす党員拡大、若い世代の結集をすすめる……読者拡大とともに、参議院選挙にむけて、「五〇万の党」をめざす党員拡大に、新たな意気ごみでとりくむ。前大会では、「二〇〇五年までに五〇万の党を建設する」という目標を決定しているが、これをやりきるには今年と来年で約十万人の党員を増やすことが必要となる。そのことを念頭において、参議院選挙までにどれだけの党員を増やすかの目標をたて、その目標をやりきり、新しく党に迎え入れた党員とともにこの歴史的政治戦をたたかうことに、おおいに力をつくす。

 読者拡大に大きな力をそそぐという方針は、党員拡大を後まわしにしてよいということでは、けっしてない。読者拡大は、党と国民との結びつきを強める仕事である。党員拡大は、党そのものの力を大きくする仕事である。この両者はそれぞれ独自の位置づけと推進が必要な仕事である。また、読者と党員の拡大は、この両方を推進するという見地にたってこそ、相乗的な推進が可能になる。

 「党建設の根幹」は党員拡大であるという前大会の決定を、あらためてしっかりすえたとりくみをすすめる。そのさい、継続的に党員拡大を前進させるためには、新しい同志の学習を援助し、日常的な党活動に参加してもらうところまで、党が責任を持つことが不可欠である。「党員を増やし、学習を援助し、支部活動に結集する」−−この全体を「党建設の根幹」としての党員拡大のとりくみに位置づけ、前進をはかる。

 このとりくみのなかで、若い世代のなかでの党員拡大を重視し、新鮮な活力を党に迎え入れながら選挙をたたかうとともに、中・長期的展望にたって新しい世代への継承を着実にすすめていく仕事を軌道にのせることが重要である。

 若い世代の運動が、平和、雇用などの問題で、多面的な広がりをみせていることは、大きな希望である。この流れを、どうやって若い世代のなかでの強大な党建設につなげていくかは重要な探求の課題である。若い世代のなかでの党建設で、すすんだとりくみをおこなっている党機関の共通している教訓は、この課題を党と日本改革の事業の未来がかかった死活的課題として位置づけ、「党の総力をあげて」という提起を言葉だけにせず、実践につらぬき前進をかちとっていることである。

 若い世代のなかでの活動を、文字どおり党の総力をかたむけて強め、参議院選挙を新しく迎えた若い力とともにたたかい、われわれの事業を将来にわたって発展的に継承するために、力をつくそう。

 (34)参議院選挙での目標達成のためには、党の量的拡大とともに質的強化−−全党員が参加する活力あふれた党を築くとりくみを、いわば「車の両輪」と位置づけて推進することが、強く求められる。

 総選挙で多くの党員は、財界戦略に正面からたちむかう戦闘的気概を発揮し、さまざまな形で党の勝利のために奮闘した。しかし、このたたかいでも、残念ながら活動に参加できなかった党員を残したことも事実である。この現状をどう打開し、文字どおりすべての党員が、その条件や得手を生かしつつ党活動に参加する、活力にあふれた党をどうつくるかは、大きな課題である。そのためにつぎの重点的努力方向を提起する。

 −−国民の要求実現のために献身する……わが党の存在意義は、何よりも、その時期、その時期の国民の切実な利益と安全のために献身することにある。党機関も党支部も、たえず日常的に国民の切実な要求をとらえ、その苦難の解決のためにともにたたかうことを、立党の精神、党活動の原点として重視してとりくむ。

 たたかいの課題は、全国的課題とともに、草の根での多面的な要求にもとづくたたかいが重要である。生活相談、労働相談などもふくめ、党が身近な要求のための日常的で地道なとりくみをすすめてこそ、大きなたたかいでも力を発揮することができる。党は、党員が現にとりくんでいる、どんな小さな要求のためのとりくみにも光をあて、それを励まし、そのとりくみが前進するように援助することが必要である。

 国民は、党の主張だけでなく、党の日常の活動とみずからの体験をつうじて、信頼と共感をよせてくれるようになる。そして党員も、国民から「なくてはならない党」と信頼されていることが実感できたときに、みずからの存在意義を見いだし、元気になる。国民の要求にたいする献身こそ、党の政治的活力の源泉ともなる。

 −−理論的・政治的確信を全党のものにする……改定された綱領を、文字どおり全党が深く身につけることを、この大会期の一大事業として位置づけてとりくむ。

 四十三年前に綱領路線を決めたのち、さまざまな風波にたえて、わが党が大きな前進をかちとってきた根本には、綱領路線のもとに全党が政治的・理論的に団結し、それを実践してきたことがあった。

 二一世紀は、文字どおり激動の世紀である。日本は、自民党政治のもとで、政治、経済、社会など、あらゆる分野で深刻な危機がすすみ、激動をはらんだ歴史的転換点にさしかかっている。世界を見ると、一国覇権主義の無法な戦争のなかから、平和の国際秩序を求める力強い胎動がさまざまな形で形成されてきている。世界が直面している危機は、人類社会が資本主義という制度を乗りこえて未来社会へとすすむ条件が、新しい世紀に地球的規模で成熟しつつあることを、示すものである。

 激動の世紀には、みずからの理想にたいする理論的・政治的確信がいよいよ大切になる。日本と世界の法則的発展方向をしっかり見きわめる力を身につけてこそ、二一世紀に生起するあらゆる問題、どんな激動や危機にも、ゆるがぬ深い確信を持ち、それにもとづく活力を発揮して立ち向かうことができる。

 新しい綱領を決めたこの大会を契機に、この間、大会決定の読了が三割から四割という水準にとどまってきた現状を大きく打開する。新しい綱領と大会決議を文字どおり全党員のものとし、これを力に参議院選挙をたたかうとともに、二一世紀をたたかう党の理論的・政治的土台を築く仕事に、大きな情熱を傾けてとりくむ。

 −−「支部が主役」の党づくり、選挙戦にとりくむ……前回大会で改定した党規約第四十条は、全国のすすんだ支部の経験を総括して、「支部の任務」を六項目にわたって規定している。なかでも第二項の「その職場、地域、学園で多数者の支持をえることを長期的な任務とし、その立場から、要求にこたえる政策および党勢拡大の目標と計画をたて、自覚的な活動にとりくむ」は、「支部の任務」の中心をなす重要な規定である。

 参議院選挙にむけて、この規約の精神にたって、その職場、地域、学園で、総選挙比133%以上を絶対の責任として、得票目標・支持拡大目標を決めるとともに、選挙活動、要求活動、党建設をすすめる「政策と計画」をみんなでつくりあげ、その実践をとおしてみんなが参加する活力ある党づくりをすすめる。

 そのさい「週一回の支部会議」を軸にした支部活動を築くことに力をそそぐことが重要である。支部会議の内容を、党に結集した同志が、互いの条件、得手を生かし、困難を力あわせて打開し、成長していく場に、改善していく努力が大切である。みんなが参加したくなり、参加すれば元気がでるような内容への改善をはかりながら、「週一回の支部会議」を全党に定着させるためにひきつづき力をつくす。党員は、政治的・理論的確信とともに、人間的連帯があってこそ、さまざまな困難をのりこえて奮闘する力が生まれてくる。支部会議をその要となる場にしていく必要がある。

 「週一回の支部会議」を軸にした「支部が主役」の活動を全党のものとするために、党機関は個々の支部がかかえている困難や実情をつかんだ援助をおこなうとともに、党支部のなかに支部長だけでなく複数の支部指導部をつくることに、特段の努力をはらう必要がある。

 −−党機関活動の改善と発展をすすめる……都道府県委員会と地区委員会は、体制の問題や、財政の問題など、さまざまな困難を抱えながらも、献身的に奮闘し、今日の党を築き、支えるうえで、かけがえのない役割を果たしている。

 いま中間機関、とりわけ地区委員会の体制を強化し、理論的・政治的水準を引き上げ、その指導力量を一段と高めることは、職場支部への系統的な指導もふくめ、「支部が主役」の活動を本格的に発展させるうえで、決定的意義を持つ。社会進歩の志を持つ若者が、党機関とそこに働く専従活動家の姿を見て、きびしい活動のなかにも魅力を感じ、喜んでこの仕事に参加してくるような、豊かな機関活動への前進をはかるために力をつくす。

 前党大会で改定された党規約をふまえて、党と社会の関係の変化に対応した、機関活動の新たな発展に力をそそぐ。党規約では、地方的問題についての「自治」権を保障しているが、党機関が、地方・地域で党を代表して、自治体問題などに積極的にとりくむことは、今日とくに重要である。また、「双方向、循環型」の指導−−支部に入り、よく意見を聞き、前進を願う内発的な力を見いだし、そこに依拠して前進のための親身な援助をつくし、その経験に機関自身も学ぶといった指導に、熟達する必要がある。

 全党が、人的にも、財政的にも、精神的にも、党機関を支え、励ます気風をつくることも重要である。とくに党の現状にそくして、幹部を党機関に結集し、体制の強化をはかることを、全党の仕事としてとりくむ。若い将来性ある後継者を育てるとともに、試されずみで意欲のある年金生活に入った同志などを専従・非専従の幹部として党機関に結集するなど、あらゆる可能性をくみつくす。

 各級党機関が、選挙闘争でも、「たたかいの組織者」でも、党建設でも、国民に直接働きかけ、草の根での結びつきを深める活動にみずからとりくみ、そこでつかんだ国民の要求、気分、関心、たたかいの経験を、党活動の指導全体に生かすという機関活動へと脱皮、発展していくことが求められる。そういう活動姿勢をつらぬいてこそ、党支部にたいする指導と援助も、心が通うものとなり、党の新たな躍進への道を開くことができるだろう。

 強大な党建設なくして、参議院選挙での目標達成はない。これは全党の大奮闘と探求を必要とする一大事業だが、それにかわる安易な道は他にない。どんな激動の情勢のもとでも、選挙で勝てる強く大きな党を草の根からつくりあげる仕事に、新たな意気込みでとりくもう。


注※「しんぶん赤旗」紙面では、決議案からの修正部分に傍線がついています。


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