2025年9月3日(水)
2025とくほう・特報 シリーズ 介護保険25年
政府が報酬減額→訪問事業「空白」急増
負担増・質低下も広がる
“在宅介護の要”の訪問介護事業所が一つもない自治体が、半年で8増え全国で115町村(6月末時点)にのぼるとの本紙調査(8月10日付)に、「がくぜんとした。年寄りは死ねというのか」など反響が寄せられています。訪問介護事業所が残り一つとなった自治体は269市町村あり、合計384市町村が「空白」かその危機にあります。全自治体(1741)の5分の1を超えています。(内藤真己子、本田祐典)
(また増えた訪問事業所“空白地域” 「ゼロ」115町村 「残1」269市町村=25年6月末時点→PDFを見る)
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ゼロ自治体はこの1年で18増と急拡大しました。訪問介護事業所の約4割が赤字のところへ、昨年4月に政府が訪問介護基本報酬を2~3%引き下げ、事業所消滅を加速させました。
新たにゼロとなった栃木県茂木町。介護保険を担当する保健福祉課は「ホームヘルパー不足が原因だが、昨年度の報酬改定も影響している」と説明。訪問介護は近隣自治体にある事業所が提供しています。町内の事業所の復活は「あてがない」と同課は言います。
北海道東部の積丹町(しゃこたんちょう)は、町内で唯一、訪問介護を提供していた同町社会福祉協議会が、3月末に事業所を廃止しました。「大変な痛手だった」と同町住民福祉課。「町は小さい集落が点在しヘルパーの移動に時間がかかり、いまの介護報酬では収益が上がらない。利用者も少なくなり運営が成り立たないと社協が判断した」と言います。
社協が廃止を決定したのは報酬引き下げ後の昨年12月。「へき地の実情を国は考えたのか個人的には疑問がある」と町担当者はいぶかります。
同町社協幹部も「訪問介護には東京では考えられない移動があるが報酬はない。国は移動に見合う仕組みをつくってほしい」と口をそろえます。赤字が雪だるま式に拡大し事業継続が困難になりました。高齢化したヘルパーの後継ぎも見つかりませんでした。
![]() (写真)利用者の口腔(こうくう)ケアをするホームヘルパー(右)=京都市内 |
積丹町は訪問介護の代替策として町独自の「軽度生活援助事業」のなかで週1回程度の訪問サービスを続けています。運営は社協に年間458万円で委託。訪問介護を利用していた18人中10人が移行しました。利用料は1時間700円で、介護保険利用料(1割負担)の2倍以上に自己負担が増えました。生活援助のみで、へルパーの身体介護で入浴していた人は通所介護での入浴に代わりました。
介護保険給付の対象でもサービスの質が保たれない事態が起きています。群馬県上野村、長野県南木曾町(なぎそまち)、岡山県奈義町、熊本県五木村では、国が定める介護保険事業所の人員や設備・運営の基準を満たした事業所がなくなり、基準緩和された「基準該当サービス」や、市町村の判断で基準を定めなくてもよい「離島等相当サービス」が提供されています。利用者の安全や尊厳を守る体制が確保できなくなっています。










