2023年8月17日(木)
きょうの潮流
思わず姿勢を正してテレビの画面に見入りました。NHKの「アナウンサーたちの戦争」(14日)。実録ドラマです。太平洋戦争中、NHKの前身、日本放送協会でアナウンサーたちが何を考え、どう動いたか▼主人公は、森田剛ふんする和田信賢アナウンサー。取材して原稿を書き、自らの言葉でラジオのマイクに向かっていました。その和田が時代の大きな波にのみ込まれていきます。1941年12月8日、日本軍の真珠湾攻撃の大本営発表を担当。「もっと勢いを」と軍艦マーチのレコードをかけることに▼43年、雨の出陣学徒壮行会では、前もって聞いていた学生たちの「死にたくない」「生きたい」という心情が、和田の頭をよぎり、実況できなくなります。戦意高揚をあおったラジオによる「電波戦」。国内だけではなく、南方占領地にも及び、現地で謀略放送を流していました▼放送は国の監督下に置かれ、情報統制が敷かれていました。しかし、アナウンサーたちが国の言いなりになっただけでなく、自分たちの意思で加担していった姿が描かれてもいます▼制作陣は、二度と過ちを繰り返さないようにと願って臨んだに違いありません。国民を戦争へと駆り立てた責任に、これまで口をつぐんできたNHKが、初めてその反省を込めた形です▼いま、主要メディアは岸田政権が進める大軍拡に目をつぶっていないか。沈黙も、「電波戦」と同じです。ドラマは、「新しい戦前」といわれる現在にジャーナリズムの役割を問いかけます。








