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2022年7月24日(日)

徹底追及 統一協会

旧統一協会の正体と歴史を暴く

ジャーナリスト 柿田睦夫さん

集団結婚+金集め+反共謀略

 旧統一協会(世界平和統一家庭連合)による反社会的活動の実体と、その歴史について、長く同協会を追及してきたジャーナリストの柿田睦夫さん(「しんぶん赤旗」元社会部記者)に寄稿してもらいました。


教祖の“清め”がルーツ

 旧統一協会(注)は自ら「旧約・新約聖書を教典に『原理講論』を教理解説書とする」(協会刊『こころをつなぐ統一教会』)としていますが実態はそうではありません。聖書の言葉を断片的に使っているけれど、教義の本質があるのは「祝福」と「万物復帰」です。

 ここでいう「祝福」とは集団結婚。信者にとって最高の救いとなる重要儀式です。誰が祝福メンバーに選ばれるのか、相手(相対者)が誰かは本人の意思ではなく組織が決めます。相手の国籍や人種がどうあろうと拒否できません。

 開祖の文鮮明が青年期にかかわったのは「混淫(こんいん)派」という血分け=セックスを教えの基調にする土着宗教。1955年には韓国の梨花女子大事件で学生の不法監禁などの容疑で逮捕されましたが、新聞はこれを「私は神の子だから、私と肉体関係を持てば、あなたは救世主を生むことができる」と説教したと伝えました。これが「祝福」教義のルーツだといっても間違いありません。

 『原理講論』によればアダムとエバの時代、エバの不倫により人類は原罪を負いサタンの血統になり、それがすべての不幸の原因になった。選ばれた女性が文鮮明によって清められることで血統が転換され無原罪の子を生み人類は救済される…。これが統一協会の祝福=集団結婚です。

 初期には信仰と実践を評価された者だけが祝福の対象でした。その後マスプロ(大量生産)化され、参加信者に課す「祝福献金」など金集めに比重が移ったように見えますが、「祝福」の本質に変わりはありません。

 信者たちは文鮮明・韓鶴子夫妻を「真(まこと)のご父母様」と仰ぎ、ひたすら「祝福」を求めて組織の「人事」で与えられた活動に励みます。それは伝道や霊感商法の部門だったり、協会の政治団体である勝共連合などの傘下組織だったりさまざま。昼は勝共連合として選挙の運動員、夜は霊感商法の霊能者役というようなこともあります。

人も財も教祖に「復帰」

 もう一つの主要な教えが「万物復帰」。この世の人も財もすべて神のものであり、サタン(一般社会)のもとにある宝を本来の所有である神=文鮮明に「復帰」させることは善であり救いとなる。正体を隠した詐欺的伝道も霊感商法もこの教えによって合理化されます。

 「霊界で苦しむ先祖を救うため」「運勢の転換のため」と多額の献金をくり返し、「神が求めているから」と不動産を担保に入れて金をつくる。「これを授からないと救われない」と印鑑やつぼを売りつけ、福祉や難民救済を装ってカンパを集め訪問販売をする…。そんな活動の総称が霊感商法です。

「日本は奉仕する立場」

写真

(写真)旧統一協会系企業「新世」が客に120万円で購入させていた印鑑

 実はこのような金集めをしているのは日本の統一協会だけ。他の国の統一協会はしていません。日本はエバ国家であり奉仕する立場というのが『原理講論』の教えです。日本の協会は毎年数百億円を韓国に送ってきたといわれます。それが文一族の生活遊興費や世界各地での資産買収などの原資。日本での政治家工作費にもなります。

 霊感商法が刑事訴追された「新世」事件(2009年)で東京地裁判決(確定)は、ダミー組織である「新世」の印鑑販売は「信仰と混然一体となったマニュアル」をもとに、これを「信仰にかなったものと信じて」「信者を増やすことをも目的」としたものだと断定しています。

岸元首相ら「勝共」日本導入

 旧統一協会のもう一つの顔が「勝共」。『原理講論』には「第三次大戦に勝利して共産主義を壊滅させ、…理想世界を実現しなければならない」とあります。単なる「反共」ではなく共産主義の思想そのものを抹殺する。それが「勝共」思想です。

 協会が韓国でつくった「国際勝共連合」の朴正煕軍事政権とKCIA(韓国中央情報部)の下での活動ぶりに注目したのが日本の反動勢力。日本の勝共連合は、文鮮明を交えた「本栖湖会談」(67年)を経て、右翼の大物笹川良一や岸信介元首相らが発起人になって68年に発足しました。「勝共」で文鮮明とつながった岸元首相はその後、文が主催した世界言論人会議で議長をつとめるなど、その活動を支援しました。

自民内部に急速に浸透

 78年京都府知事選や79年東京都知事選での激烈な反共謀略の宣伝・街頭活動が評価され、勝共連合は急速に自民党内部に浸透しました。

 浸透活動の一つが「マルS作戦」という選挙支援。運動員として送り込まれた信者たちはビラまきや電話作戦などで熱心に働き、他候補のポスターはがしなどダーティーな活動もいとわず重宝がられました。特定の大物議員には陣中見舞いと称する現ナマ支援も。支援の代償は、当選したあと協会の研修会に参加すること。これをくり返して事実上信者扱いされる議員も生まれています。

 もう一つが秘書の送り込み。ほとんどが人件費は勝共連合持ちだから多くの議員がこれを受け入れてきました。秘書となった信者が自民党公認で総選挙に出たこともあります。自民党の支援をバックに無所属で地方議会選挙に出て当選した信者も少なくありません。

支えた“大物政治家”ら

 自民党議員の多くがこれに応えて、さまざまな形で協会の活動をバックアップしています。歌手や有名スポーツ選手らの参加で話題になった92年の集団結婚には中曽根康弘元首相がソウルの式典に祝辞を贈りました。実は2年前の総選挙で中曽根氏はリクルート疑惑の関連で自民党籍離脱というピンチに陥っており、協会は数十人の信者を無償で運動員として派遣していました。

 同じ92年、入管法で入国資格のない文鮮明が法務大臣特別許可という超法規措置で入国を果たしました。このとき法務大臣にあっせんしたのは金丸信自民党副総裁。入国目的は「北東アジアの平和を考える国会議員の会との意見交換」とされ、同会の連絡電話は勝共連合が母体のスパイ防止法制定促進国民会議の事務所に置かれていました。

 協会の集会で講演したり祝辞を贈ったりするのも信者活動家を励ますためのもの。安倍晋三元首相が世界戦略総合研究所で講演し(10年)、天宙平和連合=UPFにビデオメッセージを贈る(21年)のもその一例です。

 霊感商法が社会問題化し、規制を求める声があがったとき、少なくない国会議員が衆参委員会で「信教の自由の尊重を」などと質問しました。こうした行為が行政に“しばり”をかける効果を生んでいることも、見逃せない事実です。

 (一部敬称略)


旧統一協会の呼称

 (注) 正式名称は「世界基督教統一神霊協会」だから「統一協会」と略称するのが自然であり、初期にはメディアも統一協会自身もこの略称を使っていた。その後、「統一教会」とキリスト教会系の宗教を装うことに転じ、メディアもこれに追随するようになった。「集団結婚」を「合同結婚」と普通の結婚を合同で行うかのように装ったのも同じ。ここでも多くのメディアがこれに追随した。


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