2021年11月21日(日)
きょうの潮流
サンドイッチ話法と呼ばれる伝え方があります。まず相手をほめる、次に苦言や改善点をはさむ、そしてまた前向きな言葉で締めくくる。そんな論法です▼相手の存在やありようを許容し、適性や才能、技術を支援する。忠言するのは姿勢や態度、とりくみ方のみ。こうした指導者の言動が、スポーツの指導現場にありがちな一方的な主観や決めつけをただすために肝要だといいます▼スペインのプロサッカーチームで育成コーチを務める佐伯夕利子さんが『教えないスキル』に書いています。そこでは指導改革に着手。教えるから選手が主語の学ぶへ。がんばらせる指導より、選手自身が考えて行動し、創造できるような環境をつくってきました▼これまでの慣習や常識を一から見直した佐伯さんたちの挑戦は示唆に富んでいます。それを思い出したのは、米大リーグで活躍する大谷翔平選手の花巻東高時代の“育て方”に通じるものを感じたからです▼「これまでは子どもの才能も、指導する側が『あの人がこうやった』『こう言った』などの理由で判断してきた」。論理や合理性を伴わずに支配するこうした「常識」が、才能をつぶしてきたと佐々木洋監督は語ります▼最優秀選手に選ばれた大谷選手は投打両立を受け入れてくれたことに感謝を表しました。プロ入り後は常に批判されてきましたが、自分の信念を貫いたことが今季の開花につながりました。型にはめず個々を尊重する。それが新たな才能をはぐくんだ環境なのかもしれません。