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2021年9月26日(日)

きょうの潮流

 なぜ来たのかと問われた写真家はこう答えました。「ここで起きていることに私は外国人としてかかわっていない。私自身のため、妻のため、子どもたちのため、水俣の住民のため、世界全体のために、ここにいる」▼写真集「MINAMATA」を世に出し、水俣病を世界に知らしめたユージン・スミス。妻のアイリーン・美緒子・スミスさんとともに3年間水俣に移り住み、患者と家族の日常、彼らのたたかいを撮り続けました。その姿を描いた写真集と同名の映画が日本で公開されています▼ユージンを演じたのは環境問題に関心の高いジョニー・デップさん。改めて水俣病に光をあてることでいまも世界各地で起きている環境汚染に注目してほしいといいます▼チッソが工場からメチル水銀を流し始めたのは1930年代。当初、原因不明の奇病とされた水俣病が公式確認されたのは56年。ようやく政府がそれを原因と認め公害病と認定したのはそれから12年後のきょうでした▼それまで大量の水銀が不知火(しらぬい)海に排出され続け、対応の遅れは膨大な患者を生み、被害をひろげました。そして、すべての被害者の救済をもとめ、国と加害企業の責任を問う裁判や運動はいまも▼ユージンが1千枚も撮り、公式確認のきっかけとなった田中実子(じつこ)さん。言葉を失い、68歳の現在も介助なしでは生活できません。人生を、自由を奪われた声なき叫び。それは原発事故にもみるように過去のことではないでしょう。そこに人びとのたたかいがあるように。


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